1、はじめに
この実践は2008年1月23日を第一回として、小学校2年生3学級で、2008年2月にかけて行われたもので、東京学芸大学の”先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース”のHPから引用させて頂いたものです。HPはこちら
この記事の実践者である松島先生は、情報リテラシー教育の単元開発を行い、3つの学習内容「図鑑を学ぼう」「国語辞典を学ぼう」「百科事典を学ぼう」を生活科や国語の学習内容と関連付けさせて、9月から翌年2月までの半年間をかけ指導しました。
本実践は、そのうちの1つ「百科事典を学ぼう」です。この授業設計はポプラ社の飯田建さんや、赤木かん子さんの実践をヒントに行いました。ワークシートは2年生向けに吟味しましたが、中学年・高学年でも充分に活用できます。
2007年2月14日には図書委員会でもその百科事典を用いて、読書週間の図書館クイズを行っています。
また、2月26日には学校公開で百科事典授業を保護者・地域に公開ししました。
2、対象とねらい
対象
中学年。2年生以上の学年に、それぞれ生活科・国語科・総合の授業時間のなかで行えるよう工夫をしています。
ねらい
課題解決能力を高める上で、検索方法の1つである「百科事典」の使い方について学ぶための実践です。
3、提示資料
①「教室・学校図書館で育てる小学生の情報リテラシー」
鎌田和宏 著 少年写真新聞社(2007年)
昆虫図鑑の活用法を指導したことで、子どもたちが本来持っている探究心を呼び起こし、自ら学ぶ力をつけさせる情報リテラシー教育の成果を具体的な実践例で分かりやすく教えてくれます。情報活用能力の育成が教科の学びを深めていくことにどれだけ効果があるのか探究してみようと試みるきっかけとなる一冊です。
②「総合百科事典 ポプラディア」
ポプラ社(2002年) http://p.tl/dZw9-
キーワードを基にイメージをマップのように広げていき、自分の課題を発見・探究するという課題追究の方法を学ばせることができます。情報収集の基礎・基本を学ばせるのに最適なツールです。新訂版が2011年に出たので、更に活用しやすくなっていると思います。
③「調べ学習の基礎の基礎」
赤木かん子 著 ポプラ社(2006年) http://p.tl/HLrZ-
求める情報を探し出す力を図書館で培うことの大切さを改めて教えてくれます。ページ後半で紹介する実践の第1時のワークシートは、赤木さんの実践をヒントにさせていただいています。
4、授業内容
ここで、実際の指導案を紹介します。
ねらい、指導や教材の工夫、学習過程、ゲーム感覚のワークシートをご覧頂けます。
▼ダウンロードはこちらから
http://p.tl/Pe95
5、授業の効果
この取り組みの結果、最も変わったのは子どもたちの意識です。知りたいことがあると、図書館に行って調べたり、司書に相談する子どもが増えました。「本が置いてある場所=図書館」という意識から「情報の入り口=図書館」といった気持ちの変化に確かな手応えを感じました。
取り組みの根底には、読書活動の場のみならず、学習情報センターとしての学校図書館利用推進をしていきたいという願いがあります。そのために、子どもたちの学力を伸ばすには「学び方を学ばせる」ことが必要であると仮説をたて、市の研究会などでも授業を公開し第三者の評価を受けるなどして、その検証を進めました。
授業そのものには図書館司書は参加していませんが、情報リテラシーの学びを、ジャンル別図鑑→国語辞典→百科事典と3段階に分ける視点について授業者と司書が相談したり、この授業と同時並行して、配架や分類についての指導を司書が行うなど、2者が協働できたことで、効果が向上しました。また、大量に同じ図鑑が必要なときに司書のネットワークを生かして資料を収集していただいたことも、これらの取り組みを成立させるのに必要不可欠な支援でした。
(鷹南学園三鷹市立中原小学校司書 松島真奈美)
6、おすすめ図書の紹介
以下の本のp.20では、「「ビンゴ」で百科事典 」に 司書 金澤磨樹子氏がこの実践について、まとめています。是非ご覧ください。
♦先生と司書が選んだ 調べるための本
編著:鎌田和宏(帝京大学文学部教育学科・教職研究科准教授)、中山美由紀(東京学芸大学附属小金井小学校司書、鶴見大学非常勤講師)他 15名による執筆
http://www.schoolpress.co.jp/book/others/shirabe/shirabe.html
新指導要領も見すえ、学校現場の先生と司書が選んだ小学校の社会科対応の「調べるための本」です。実際に数千冊の本を手にとり、吟味して、約630タイトルを選定しました。それぞれの書籍に、授業で役立つポイントが教師の視点から解説されています。第二部では小学校で指導要領の目的を達成するための図書館充実法を論じています。
7、編集後記
ネットが普及し、図書館で調べ物をするという習慣が薄れてきているように感じます。しかし、デジタルの時代だからこそ、アナログの活動、すなわち検索に本を利用する方法を、小学校の段階でしっかりと伝えておくことが大切になってきているのではないでしょうか。子どもたちにとって、アナログの活動が「情報リテラシーの入り口」になるはずです。なにより、本で調べることの面白さを伝えるという点で、この提示資料や授業案は効果的だと言えるでしょう。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 高橋遼)
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