1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
家族にとって自分はどんな存在なのだろう?
ドラえもんを題材にして、自分はかけがえのない存在であり、家族からたくさんの愛情を注がれて育てられているという思いも深める授業をしました。まず「のび太の結婚前夜」で、しずかちゃんがパパと話をする場面を漫画で配りました。
子どもたちは熱心に漫画を読んでいます。1ページ分読んだところで、しずかちゃんが「パパやママに何もしてあげられなかった」というのは、本当でしょうか。本当だと思う人は○、そうではない人は×をつけましょう。と発問しました。
〈本当(何もしてあげられなかった)〉0人。
〈そうではない〉36人であった。
〈そうではない〉の理由として…
- 気持ちをもらった。
- 自分が生まれたこと。
- 心をあげた。
といった理由があげられた。
そこで、しずかちゃんのパパは、このあと何と返事をしたのでしょう。吹き出しの中に書きましょう。としました。
- お嫁に行くのが一番の恩返しだよ。
- いいんだよ。お前が元気に育っただけでも嬉しいよ。
- 気持ちは分かるけれど、お前の人生はおまえが考えろ。結婚した方が幸せだ。
- 行っちゃうのは寂しいけれど、お前が結婚するのが一番の幸せさ。
などを予想しました。実はパパはこう語りました。
(パパ)とんでもない。きみはぼくらにすばらしいおくり物を残していってくれるんだよ。
(しずか)おくり物?あたしが?
(パパ)そう。数えきれないほどのね。最初のおくり物は、きみが生まれてきてくれたことだ。この広い宇宙の片すみに、ぼくの血をうけついだ生命がいま、生まれたんだ。そう思うとむやみに感動しちゃって。涙がとまらなかったよ。それからの毎日、楽しかった日、きみからの最高のおくり物だったんだよ。みちたりた日々の思い出こそ。
このシーンをテレビで見せました。子どもたちには、パパの声が胸に響きます。
続けて、「ぼくの生まれた日」を見せました。お父さん、お母さんに叱られてのび太が「ぼくなんか生まれてこのがよかったんだ。今日はぼくが生まれて、みんなががっかりした日なんだ。」と叫んだところでテレビを止めました。
お母さん、お父さんにとって、のび太は生まれてこなかった方がよかったのでしょうか。
〈生まれてこない方がよかった〉0人
〈生まれてきてよかった〉36人
子どもたちは、全員が〈生まれてきてよかった〉と考えました。
その理由は…
- のび太が生まれたことで、家族みんなが喜ぶことができたから。
- けんかするほど、仲がよいというから、けんかはしているけれど生まれてきてよかった。
- 赤ちゃんが生まれた日は誰でも喜ぶと思う。のび太のために怒って、ご飯も作ってあげたりして、もしのび太がいらなかったら、ご飯も作ってあげないと思う。
- 家族が増えて嬉しい。生まれてこの世界の自然や動物や人々を知ってよかったし。可愛いから怒る。
のび太のことが可愛いから、子どもが生まれてがっかりする親はいないという意見が出されました。その通りです。そこで次のシーンを見せました。
のび太が「ねぇ、ぼくが生まれてよかった?」とお父さんに問うと、お父さんは「よかったよぉ」と叫ぶ。
次に、のび太が生まれたの喜んだのは、お父さんとお母さんだけでしょうか?と発問しました。
- 違う。家族のみんな。
- わかった。おばちゃんだ。
の声が上がりました。そこで「おばちゃんの思い出」をテレビで見せました。これはおばちゃんの愛情がよくわかるシーンです。こうして、しずかちゃんは言うまでもなく、のび太も、家族みんなに愛されていることがわかりました。
では、今度は自分のことを考えてみましょう。家族にとって、あなたはどんな存在なのでしょうか。
- 私が生まれてきてよかった、と家族みんな言った。私は家族にとって大切な存在なんだと思う。
- 家族の気持ちは分からないけれど、自分は家族に支えられていると思う。
- おバカだし、あんまりお手伝いもできていない存在。うざいなぁって思われていそう。でも、生まれてきてよかったと思っていると思う。
- うるさくてバカだけれど、大切な存在だと思う。
- 家族にとって私はどんな存在か分からないけれど、私は大切にされているし、応援されているし、明るい存在だと思う。でも私だけではなくて、弟もそういう存在だと思う。
- 私はドジでマイペースだから、お母さんにしかられるけれど、お母さんとか家族のことは絶対に嫌いになれないし。家族にとっても大切にしてもらって存在だと思う。
という意見が出ました。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
私もこの2つのドラえもんの話を見たことがあります。このような身近なドラえもんの話を取り入れ、自分の存在について考えることができる良い実践だと思いました。また、のび太やしずか、親の気持ちも考えながら自分の存在について考えることもできます。ぜひ、取り入れてみてください。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 川原悠成)
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