授業中における指名の方法

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固執のし過ぎ

特に若手の先生の授業を拝見して、感じることがあります。それは何でも通り一遍の基本形に固執しすぎるということです。若手の先生が真面目で、基本に忠実という素直な気持ちの表れであるとも言えるのですが・・・。

顕著な指導例の一つとして、
授業中における指名の方法があげられます。

ご自身の授業を振り返ってみてください。授業中の指名の方法は何種類(何パターン)ぐらい思い浮かびますか?そう言われれば、あまり思い浮かばないという方は是非、ここで一度、指名の方法について振り返ってみましょう。

(1)まず、基本形は「挙手させて、指名するパターン」です。

日本の教室ではほとんど意識しなくても、この指名の方法が一般的ではないでしょうか。
この方法は王道であり、指名方法の中心です。ただ、課題として、よく発言する子は数名に限定されがちです。わかっていても挙手しない子は発言しません。つまり、発言機会が子ども自身に委ねられます。したくなければしないという限界を意識しておくことです。

これに対して、若手の先生たちは、
「他の人はいませんか」
とか、
「○○くんばっかり活躍してますよ」
とか
「いつもはこんなはずじゃないのに」
と誤魔化し、挙句の果ては
「今日は参観者がいるから恥ずかしいのかな?」
と参観者に原因をすり替える状況が見られます。
 
その結果、数名の子の発言以外はほぼ、教師がしゃべって説明するという講義形式の授業になっているように思われます。

授業中における指名の方法は、やはり、学習のねらいや活動によっていくつかのパターンを使い分ける必要があります。基本形の限界と課題を踏まえ、様々な指名方法を授業の中で、組み合わせて活用することです。

(2)縦列や横列による列による「順番指名」

前時の復習や答え合わせ、簡単な質問、逆に、誰も答えられないような難しい質問において、この順番指名を活用します。該当の列の子は必ず順番に当たりますからその覚悟や準備ができます。また、自分だけじゃなくてみんなが当たるというある意味、連帯感というか仲間意識が生まれます。また、「わかりません」や「1回パス」も認めることで安心感を与えます。発言機会は教師主導で、子ども一人ひとりに緊張感が生まれます。

(3)ノートの記述やその子の表情、理解度をもとにした「意図的指名」

机間指導によってあらかじめクラス全体の状況や、子どもの意見や理解度を把握します。問いに対して、低次の答えからだんだんと高次のものへと指名します。その際、よく1人の子だけを指名しますが、できれば複数の子を同時に指名し答えのつながりを意識させます。例え、同じ答えでも同じように発言させます。発言されない意見(特に,発表しにくい子)を取り上げたり,同じ(違う)考えをつないだりするという意図があります。
また、机間指導の余裕がない場合、子どもの表情から理解度を読み取り指名します。その子どもの性格や発言力、メンタル面、他の子への影響力を考慮しながら、行います。ここには深い子ども理解と教師との関係性が問われています。ここで大切なことは指名した子どもの意見を単発で終わらせず、他の子の意見や授業のねらいと結びつける教師の意味づけや価値づけが重要となります。該当の子どもが当てられて良かったと思えるように展開することです。

(4)発言のあった意見に対して必ず(イエスorノー)の立場を明らかにする「立場指名」

「Cさんの意見をどう思うか。○ですか×ですか」
とか
「F君の考えに賛成か?反対か?」
とか
「D君の立場か?E君の立場か?」
とか、一人の発言をみんなで分かち合う「立場指名」を行うことで、全員が考えざるを得ない状況をつくります。つまり、数名の子の立場や考えにこだわる場を設定するのです。全員、いずれかに挙手することで、同じ立場や考えになった者同士が自由に席を離れて相談できるようにします。こうすることで、個々の発言機会の場が生まれ、聞きあいや伝え合いが小グループ内で行われます。まとめでは、グループの意見は代表の子が発表しますが、その際、同じグループの子は全員起立することと、自由に付け足しや修正をしていいことにしています。こうやって、仲間の中で、自然と発言をする機会を設定します。発言機会は教師の設定から子どもの自主的な発言機会へと移行していきます。

(5)「自由発言」

いわゆる指名なしで自由に発言させる方法です。民間教育団体などが「指名なし音読、指名なし発表」として実践しているものです。例えば、1枚の絵をもとに、たくさん答えや気づきがある場合などは有効です。自ら起立して答えることは子どもにとって一つのハードルを越えるというきっかけになります。ただ、自由に発言されるということは、子どもの意見を整理するために、逆に教師の説明が多くなる可能性もあることを踏まえておく必要があります。また、私はあまり活用しませんが、子ども同士による相互指名も、一見、活発な主体的な授業に見えがちですが、内実は、教師が後でそれぞれの意味づけや修正を行う必要があり結局、教師が言いたいことのみを取り上げてまとめるということになりがちなので注意が必要です。

(6)発問した後、自分の意見が持てた子は次々と起立させる「起立指名」

発問に対する自分の意見が持てた子は、挙手ではなく起立をさせます。手をあげるのではなく、起立するとより目立ちます。起立した子は起立した子同士で意見の確認をしてもよいこととします。こうすることで不思議なことに挙手よりも起立する方が連鎖反応をおこします。席を立つことで身体が解放されるからかもしれません。座っている子に対して周りの邪魔にならない範囲でヒントを出しても構わないと伝えています。そうすることで、どんどんと起立する子が増えます。座っている子は他人事でなく追い込まれていくわけです。子どもは自分がかかわった友だちが活躍することを殊の外喜ぶものです。人の役に立つという実感や快感を得るからでしょう。こうして、友だちが発表することを応援する姿勢が生まれてきます。

子どもたち一人一人を学習に向きあわせ、全員を授業へと巻き込んでいくための授業中の指名方法を紹介しました。方法としての側面が強いのですが、もちろん、学習のねらいや、明確な活動や発問が伴ってのことです。
今、求められている表現力や言語活動の充実という点からも、子どもに十分に語らせたり,考えさせたりする場や機会を保障していきたいものです。教師と子ども,子ども同士で共に学ぶという構えをつくることが重要なことは言うまでもありません。

参考文献:「授業研究21」2009年5月号(明治図書)高岡昌司:社会科における教師の言葉がけ

人前で内容のある話ができる子供を育てる 1 授業運営・学級経営の両全を

人前で内容のある話ができる子供を育てる 2 主旨説明と目標設定

人前で内容のある話ができる子供を育てる 3 授業における発言ルール

等もご参照ください。

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (1件)

  • とても勉強になった。(4)なんかはサンデルさんがよく使うやつですね。大学での授業が想定されたものではないですが、活用させてもらいたいなと思いました。(twitterより)

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