児童の達成度を可視化「うみもんカード」(鈴木夏來先生)

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はじめに

本記事は、「第一回学級づくり改革セミナー 全国大会」にて行われた現役の小学校教師の鈴木夏來先生の講演録です。学級経営を行う上で活用できる「うみもんカード」を紹介していただきました。

このカードは、鈴木先生が神奈川県三浦市立初声小学校で使っていたカード型学級経営システムです。「児童たちにあれをさせたい、これはさせたくない。」といった要件は数多くあるはずですが、その全てを児童に徹底させるのは難しいものです。どうにかして言うことを聞くようにさせたい、進んで物事に取り組ませたいと悩む担任の先生は少なくないのではないでしょうか。このカードはこうした悩みを持つ担任の先生の大きな助けとなるはずです。

なお、このシステムは2012年3月22日付の朝日小学生新聞( http://www.umitosakana.com/umi30/np20120322ags.htm )で紹介されました。

システム

「うみもんカード」とは一言でいえば、児童が何らかの取り組みを達成できた時に渡す“ご褒美”です。学級経営を行う上で、児童に何らかの技能態度を獲得させたい時に、それらが達成できれば先生がそのカードをあげるといった単純なものです。

具体的な活用法

あいさつ、正しい言葉遣い、自主的な発表、整理整頓、漢字の練習など児童たちが何かできたときにカードをあげることにしておきます。例えば、すすんで校内のゴミ拾いをして学校をきれいにすれば「ホンソメワケベラ(=別名:そうじ魚)」のカードを渡すのです。この様に項目ごとにカードを設定します。また、鉄棒・マット・なわとびなど基礎・基本となる運動について課題をクリアできた時にもカードを渡すようにします。こうすることで、児童たちは進んであらゆる活動に取り組むようになります。

逆に、悪口を言わせたくないだとか廊下を走らせたくないといった禁止事項についても、守れた時にカードをあげれば、児童たちが禁止事項を犯すことはなくなります。また、他にも魚についての自由研究をすることでそのカードを得ることができるようにもしているため、児童の自ら調べる力を育むこともできます。
 

題材について

この小学校が海のそばに位置していて児童たちは海や魚が大好きであることもから、「うみもんカード」は海の生き物・モンスターを題材としています。希少価値の高いカードを設ける、児童一人ひとりの性格から好きそうなカードをあげるなどの児童たちが楽しめるような工夫もなされています。
  

うみもんカードの一例(著作権の問題上無断転載はご遠慮ください。)

児童の反応

その結果、児童たちは「うみもんカード」に熱中しているようです。もともとポケモンカードを入れていたカードホルダーからポケモンカードを抜いて「うみもんカード」を入れる児童がいたり、他の学年の児童が休み時間に集まってきたりするほどだといいます。

“ご褒美”について

ところで、児童をモノで釣るようなやり方に疑問を感じる方もいるかもしれません。また、“ご褒美”というと語弊があり、ご褒美が終わったらもう課題に取り組まなくなるという声もあるかと思います。しかし、その心配はないようです。

たしかに子どもは、最初はうみもんカードのためだけに一生懸命やりますが、カードをもらうまでの期限、例えば1週間などと決めておけば、その間に子どもに動機づけができて、しつけをすることができます。これを1年間続けることでさらに教師が望む生活態度・や学習態度を習慣づけることができるのです。

編集後記

正直、この記事を書くまで自分は“ご褒美”を使った教育に疑問を抱いていました。上にあるような、ご褒美が終わったらもうそれをしなくなるのではないかといった見解だったのです。しかし、児童の目線になって工夫を重ねることで学習、運動、生活態度などどんな要件についても習慣づけることができるということがわかりました。カードは全て夏來先生の手作りということで確かに手間がかかるかもしれませんが、その分得られるものは多いのではないでしょうか。また、この小学校は海辺にあるということで海の生き物を題材としていましたが、逆に内陸部の学校ではカブトムシなどの昆虫や動植物などといったその土地の個別の状況に置き換えれば、それぞれの土地柄に合わせることができ、活用できるでしょう。

多くの教師、多くの学校が参考にできるこのシステムは学級経営において大きく貢献するはずです。ぜひ、多くの先生方にこのシステムを参考にしてもらって、円滑な学級経営を行っていただきたいと思います。

出典

添付ファイル

講師プロフィール

鈴木 夏來 (すずき なつる)先生
神奈川県三浦市立初声小学校教諭。

  • 徹底反復研究会所属。
  • NPO法人日本教育再興連盟(ROJE)教員事務局スタッフとしても活動。
  • NHK「おはよう日本」や朝日新聞など、メディア出演多数。
  • 『小学教育技術』『総合教育技術』『ドラゼミ』などにおいて原稿執筆。
  • 長沼武志氏と共に、「楽曲カルタ」「俳句カルタ」「暗記カード」など多数の手作り教材を発明。
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