百ます計算で人格の完成を目指す①~温泉型~(岡篤先生)

はじめに

この記事は、岡篤先生が運営されているメールマガジンから引用、加筆させて頂いたものです。岡先生のメールマガジンはこちらです。
http://www.mag2.com/w/0001346435.html

この実践は2つの記事に分かれております。
続きはこちらです。→ https://edupedia.jp/entries/show/996

継続は「人格完成」の手立ての1つ

同じ百ます計算でも、「人格の完成」を目指す取り組みにもなれば、その反対にもなります。

もし、これを月に1回程度、思い出したようにやれば、苦手な子にとってはいつまでも苦手なままです。しかし、例え1週間でも百ます計算を続ければ、ほとんどの子がそれなりの手応えを得られることでしょう。もう一踏ん張りして30回程度続けることができれば、大多数の子が「すごく速くなった」「計算が得意になった」と感じられるくらいの成果が出るはずです。

このように百ます計算を繰り返し行い、児童が達成感や満足感を得られれば、百ます計算が「人格の完成」を目指す取り組みになっているといえます。つまり、継続することが1つの手立てでもあるわけです。

百ます計算を批判している人の多くは、実践する前に理念的な部分で反対しているか、もしくは継続的には取り組んでいない場合が多いようなのです。成果が出る前にやめて、「やっぱり、だめだ」と判断してしまうのはもったいないと思いませんか?

■継続しても伸びない場合

とはいえ、何度やっても全く伸びないという子がいるかもしれません。私が担任した子にもいました。

例を挙げると、まったくやる気がない態度でだらだらとやっていたり、表面上はふつうに見えても集中できていないような子や、一生懸命やってもうまくいかない子です。こういった子の場合、継続しても成果が出ず、そのまま続けていても、効果は薄いといえるでしょう。

■温泉型と特訓型

継続しても伸びない場合、私は大きく2つの方針で手立てを講ずるようにしています。1つは、ほかの子より練習量を減らし、意欲を引きだそうという考え方です。そうした方法でゆったり余裕を持たせることを、温泉につかってゆったりすることとなぞらえて「温泉型」と呼んでいます。もう1つは、その反対に、他の子よりも練習量を増やすことで、ほかの子に追いつこうというものです。「苦手なら人の倍でも3倍でも練習しろ!」という一昔前の青春ドラマのようなものです。こちらは「特訓型」です。ここでは温泉型について取り上げます。

温泉型の手立て

■ゆったりすることで意欲が高まる

温泉型は、ペースを落とすゆとりを持って練習に取り組むことで意欲を引きだそうという方針です。

2年生を担任していた年のことです。数人の子になかなか伸びが見られませんでした。特に1人の子は、全くやる気をみせず、いやいややっているのが明らかでした。そこである日百ます計算を始める前に、その子を含めてタイムがあまり伸びていない3人を呼びました。男の子が2人と女の子が1人です。
「この3人は、百ます計算が苦手なみたいだね。」
3人とも素直にうなずきました。
「今のままじゃ、なかなかタイムが速くなりそうにないな。それで、こんな問題を作ってみたんだけど…。」

“100”ます計算は、100個の計算をすることになります。25マス、49マス、81マスと3種類のプリントを見せました。
「すくない!」「わー、いいな。」
3人は、のぞきこんで口々に言いました。

■子どもに選ばせる

「苦手な人は、これでもいいことにします。どうする?」
3人は、迷わず25マスを指さしました。実は、もう少し抵抗を見せるかもしれないと思っていました。「みんなと違うことをするのは恥ずかしい」というような気持ちがあるかもしれないとも思いましたが、それは余計な心配でした。
「じゃあ、今日から、みんなが100マスやっているときに、この3人は25マスをすることにします。」
「やったー!」

はしゃぐ3人をおさえて、<span style=’font-weight:bold;’>絶対に、一生懸命にやること。それと、速くなったら49マス、81マス、100マスとだんだん増やしていくこと</span>を約束しました。その会話の後、彼らは喜んで席についていきました。

■周りへの説明

■速効性あり

まず、3人のうちの2人は、あっという間に、25マスから、49マス、81マスと上がっていきました。この2人は、計算の力がなかったというより、集中力がなかったということのようです。

25マスという、それまでの4分の1の問題数や、他の子と違うことをするという優越感のようなものから、モチベーションがぐんと上がったわけです。その状態で計算練習に取り組めば、何となくだらだらとやっていたときより、1回1回の練習の成果が表れやすいのは当然です。

■本当に計算が苦手な子もいる

前述の2人は、実は計算力自体は他の子よりやや低い程度だったということがわかりました。集中力が足りないため、練習の成果が出にくかっただけです。集中できればほとんど問題は解決できたも同然です。

しかし、1人の男の子は本当に計算が苦手でした。25マスになって一生懸命やっているようでも、ものすごく時間がかかります。この子にとっては100マスは多すぎます。この子は、足し算が終わって、引き算に変わるときまでには、100マスに入ることができませんでした。それでもこの子なりに、集中して前向きに取り組み、少しずつタイムを伸ばすことはできていました。

「人格の完成」を目指すということは、このときは考えていませんでした。しかし、今から思うと、無理にみんなと同じ問題数をさせて、だらだらとやっているよりは、少なくてもその子なりの全力を尽くすようにした方が正解だったのだろうと思っています。

■不思議なことに

さて、不思議なことが1つありました。とんとん拍子に、100マスにもどった2人のことです。25マスは、1回で100マスをやっている子たちよりも速く終わりました。49マスは数回かかったでしょうか。それでも、何かコツのようなものをつかんだのでしょう。81マスも数回で終わることができました。

81マスも100マスの子たちと同じようなタイムで終わるようになったとき、「100マスにもどる?」と尋ねると、あっさりと「うん!」とうなずきました。自信に満ちた表情です。とはいえ、2週間ほどの間、100マスをやっている子より練習量が少なかったわけです。いくら伸びたとはいえ、100マスにもどれば、タイムが1番遅くなるのは仕方のないことです。

ところが、いざ100マスにもどってみると、クラスの真ん中くらいのタイムが出るではありませんか。他の子は、きちんと100マスを2週間やってそれなりに伸びていました。それなのに、元々タイムが飛び抜けて遅く、25マスや49マスをやっていた2人が、もどってきたら真ん中とはどういうことでしょう。

この2人の計算力が低いといっても、それは意欲を含めてのことだったわけです。25マス、49マスで集中して取り組んだ経験は、単に量をたくさんこなしたというよりもこの2人にとっては、意味のあることだったのかもしれません。

とにかく、他の子よりも問題数を減らすことによって、意欲と集中力を高めるという手立てが成功した例でした。
続きはこちらです。→ https://edupedia.jp/entries/show/996

編集後記

私自身、小学生の頃に百ます計算に習慣として毎日取り組んでいました。その経験から得たものは計算力や集中力だけではなく、タイムが速くなる度に得られる達成感や継続することの大切さの実感だったと思います。この実践は、より柔軟な使い方をして、子どもたちがそうした体験を多く得られるような学級経営の1つのモデルケースになりうると思いました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 杉田 彩)

講師プロフィール

岡 篤(おかあつし)

神戸市立好徳小学校教諭。
漢字と俳句の実践に力を入れている。
学力研( http://gakuryoku.info/)という研究会に所属。
●主な著書
『読み書き計算を豊かな学力へ』明治図書出版 2000年 http://amzn.to/X7QQh0
『書きの力を確実につける』明治図書出版 2002年 http://amzn.to/Y8C3Sw
『これならできる!漢字指導法』高文研 2002年 http://amzn.to/Zahyvq
『字源・さかのぼりくり返しの指導法』ひまわり社 http://amzn.to/UMmWCs
『教室俳句で言語活動を活性化する』明治図書出版 2010年 http://amzn.to/WJQFMe
●HP
教師の基礎技術~若い先生へ
http://blogs.dion.ne.jp/aoka5/

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