1 全員が手を挙げるクラス
どんな先生でも、子どもが生き生きと学び、笑顔で過ごせるクラスを作りたいと願っていると思います。
そして具体的な場面を考えると、
「全員が手を挙げて発言する」
ではないでしょうか?
全員が自分の意見を伝えることができる。そして、みんなが友達の意見を受け入れることができる。
こんな子どもが育っているからこそ生まれる状態です。
私が「全員が手を挙げて発言する」ために実践していることをまとめました。
2 全員が手を挙げる工夫
- 事前の言葉がけ
- 話すスキル
- 聞くスキル
- 授業の工夫
- クラス経営
1 事前の言葉がけ
何も言わないで全員が発言するクラスはありません。
最初に、手を挙げて発言する大切さをしっかり伝えることが重要です。
発言が苦手な子でも、今年こそもっと発言できるようになりたい!と考えている子は多くいます。
そのような、苦手な子の意欲を取り上げてほめることで、勢いをつけます。
また、間違えをからかう子がいるから、発言できないと言う子もいます。
そのように、からかう原因となりそうな子は最初の段階で釘をさします。
例)
間違えた子をからかう原因となりそうなA君がいる場合
先生「なんで発言することを恥ずかしいと思うんだろう?」
A君「バカにする子がいるからだよ」
先生「なるほど、A君は間違えた子をバカにすると言うことか(*^▽^*)」
A君「ちがうちがう!しないよ!」
先生「優しいですね!A君のようにどんな意見でもバカにせず真剣に聞くことができる人はいますか?」
全員手を挙げるので、「すばらしいクラスですね!」
このように釘をさせば、からかうことなく相手の意見を聞く空気を最初に作れます。
2 話すスキル
発言にもスキルが必要です。
◆大きな声
発言しても聞き取れなければ、「聞こえな〜い!」と言われて萎縮してしまいます。朝の歌、音読指導、音楽、体育などあらゆる場面で大きな声、相手に伝わる声の出し方を指導します。
息を吸うときに「お腹を膨らませる」ことを意識させます。息を吸っても肩が上がっていると複式呼吸ができないので、通る声が出せないからです。
◆分かりやすく伝える
「私は〜だと思います。どうしてかというと〜だからです。」
最初に結論を述べてから、理由を言う。短く簡潔に相手に伝わる言い方を覚えるだけで、発言に対する抵抗感が減ります。
◆語彙
自分の意見を表現する言葉を知らなければ、そもそも発言できません。「なんて言ったらいいのか分かりません」状態にしないために、「読書タイム」「辞書引き」「言葉の宝箱」など様々な場面で言葉を教えて、意見を正確に表せる力を与えます。
3 聞くスキル
聞く側への指導も同様です。
◆静かにするスキル
「何秒静かにできるかやってみましょう」と言ってタイマーで計ります。
すると耐えきれず必ず声を出してしまう子がいます。
そして「みなさんの静かにするレベルは〜秒です!」と伝えます。
(私のクラスは最初は1秒でした)
実際に、話を聞くときに静かにすることが大事だと理解していても、計ると「こんなにできないの!」と理解させることができます。
「先生もう一回!」「次は静かにできる!」と言ってきます。
もう一度やると、長く静かにできるので、褒めます。
今度は先生が話しているときに何秒静かにできるか計ります。そして時間が伸びていくたび褒めていきます。
そうして、
「相手の言いたいことを考えながら静かに聞く」
「相槌をしながら静かに聞く」
など課題を徐々に上げていきます。これを繰り返していくと自然に「良い聞き手」に育っていきます。
大人にとっては当然のことですが、子どもは教えなければ正しくできません。スキルがあって初めて、発言の多い活発な授業が生まれます。
また、子どもを褒めながら教えることができるので、「なんで静かにできないの!」「相手のことも考えなさい!」など無意味に子どもを叱ってしまうことも、なくなるのでクラスの雰囲気も良くなり、発言もしやすい空気が生まれます。
4 授業の工夫
授業の発問や展開の工夫で、子どもが発言しやすくすることができます。
◆質問を簡単にする
算数でも、「1+1は?」と聞けば、ほとんど全員が答えることができます。
また、「はい、いいえ」を答えるだけのクローズドクエスチョンも発表のハードルは下がります。
「聞く必要がない」と思う簡単なことでも、質問にしてしまえば、苦手な子も勇気を出して手を挙げられます。
些細なことですが成功体験になり、手を挙げることへのハードルが下がります。
◆ペアトーク(2人で相談)をしてから質問
→質問する前に、「隣と相談してください」と言えば、自分の答えを確認できます。
「これであってるよね!」と確認すれば、自信を持って発言できます。
「間違っているかも・・・」と言う心理的負担を減らす効果があります。また、自然に話す習慣ができます。
◆先生が当てる
自分で手を挙げられない子には、先生が当てて答えさせます。
当てられたら答えるしかありませんので、答えます。
自分からではありませんが、一つの成功体験となって「いけるかも!」と思わせることができます。
◆正解が複数ある授業をする(オープンエンドの授業)
正解が一つの問いを扱うと、どうしても「あってないかも・・・」という抵抗が生まれます。
しかし、答えが複数ある問いを出せば、子どもはどんどん答えますし、「まだ出てない答えだ!」と思えば、苦手は子でも手を挙げます。
例)
⬜︎+⬜︎=10
⬜︎に入る数字はなんでしょう?
子ども「1+9!」「2+8!」「10+0」・・・「これ小数でもいける?」「じゃあ2.5+7.5」・・・「分数でもいける?」・・・
答えがひとつじゃないと分かれば、手を挙げる勇気につながります。
答えが無数に生まれる問題をオープンエンドと言います。
◆ 発言の価値づけ
先生はどの子の発言もしっかり受け取り、価値づけしてあげましょう。
多くの場合、先生は子どもに「こんなことに気づいて欲しいな〜」と考えているので、突飛な意見に対してスルーしてしまいがちです。
頑張って発言しても、先生がスルーするのでは子どもの発言意欲は失われます。
どんな意見でも「なるほど!」「どうしてそう思うの?」など積極的に反応してあげましょう。
5 クラス経営
1〜4を行うことで「発言しても大丈夫」「間違えても誰もバカにしない」と言うクラスの雰囲気ができます。
雰囲気ができれば、発言も増えます。
発言できた子は成功体験を積み、自己肯定感を高めていきます。
もちろん必要なら途中で指導は入れます。この雰囲気ができれば、子どもはどんどん積極的になりますし、トラブルも減少します。
子どもが手を挙げるには、なんでも言える関係が必要です。また、子どもが積極的に発言するクラスでは、討論のような高度な話し合い活動も可能になります。
先生は見ているだけで、子どもたち自身が意見を交わし合い、授業が進んでいく。
決して口の強い人が目立つのではなく、お互いの意見を尊重しながら、学習を深めていく。
討論は目指すべき授業の理想形です。全員手を挙げるというのは、討論へのステップとも言えます。
3 終わりに
神奈川で教員をしている、植田友晴というものです。
教員の皆さんに少しでもお役に立てばと思い投稿させていただきました。
長々と書きましたが、完璧に全員が手を挙げるという経験は、私もほとんどありません。あと一人!頑張れ!と思っても、子どもは動きません。
手を挙げるだけが子どもの成長の全てではありません。それでも、全員が笑顔で手を挙げるクラスというのは私の理想でもあります。
理想の姿を目指して試行錯誤していきたいと思います。
個人的にブログなどしております。よろしければご覧下さい。
ともはる先生の教師生活は崖っぷち
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