叱らない先生が変わった!~学校文化、先生の信念・学びを考える~

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はじめに

小学校教員7年目のA先生に、学校ごとの文化の違いや、自分の先生としてのスタイルが大きく変わったきっかけについてお話を伺いました。
記事の最後に、自分の教育観や実践スタイルなどに関する問いかけを載せています。よろしければ考えてみて下さい。

1、決して叱らない初任校

——先生としての大きな変化はいつ起こりましたか?

初任校から2校目に移った時です。まずは、変化前の初任の時の話をします。

先生になったばかりの時は、「子どもを楽しませる」ことを大事にしていました。たくさん本や実践をみて、授業でも学校生活でも全力で楽しむ子どもの姿に、とてもやりがいを感じていました。

一方、「クラスがなんだか落ち着かない。私語が多くふわふわしている」という違和感はずっとありました。「規律がない」状況でしょうか。

——その状況をよくしようと心がけたことはありますか?

私は本で読んだ「良いことも悪いことも、子どもの様子には先生に原因がある」という言葉を信条にしていました。

なので、子どもが落ち着かないのは自分に原因があると考え、 叱ることはほとんどありませんでした。自分の中に原因を探し、 「もっと褒めないと。もっと面白い授業をしたい。」「自分の話し方や指示の出し方が下手なのかな?」と考え続けました。学校の先生にも相談しましたが、「褒めるのが足りないのでは?」とよく言われました。

しかし、異動するまでの2年間、この課題は解決できませんでした。

2、変化の2校目

——その課題が2校目での異動で解決されたのでしょうか。

そうですね、一緒に学年を組んだ先生がとても厳しい先生でした。4月の初めから、隣の教室から怒鳴り声がよく聞こえていました。そして、1週間過ぎたころ、隣のクラスはとても規律が守られていました。ただし、厳しいだけの教室ではなく、子どもたちは先生をとても慕っていました。

その姿をみてとてもしっくりきました。「これが自分の目指していたクラスだ」と。それから、その先生の実践を自分も真似してみようと思ったのです。

——今までと異なるタイプの実践をすることに抵抗はありましたか?

自分にできるか少し不安はありましたが、 今までは全く関心がなかった厳しくする指導の本を読んだり、授業中に「隣の先生はどんなことで怒ってるのだろう?」と、授業中など耳を澄ませていました(笑)。聞いていて分かったのは、宿題忘れや私語など、今までの自分なら笑って許していたことを、真剣に叱っていたのです。

実践のイメージができて実際に指導してみると、初任の頃に全くつくれなかった、ぴりっとした学習環境ができたのです。そして、それは子どもも自分にも居心地が良かったと思います。

——なぜ、初任校ではその指導スタイルに気づかなかったのでしょうか。

1つ目は、自分の視野の狭さです。「子どもを叱るのは自分に力が無いからだ」と思い込んでいました。

2つ目は、初任校の雰囲気です学校全体が「子どもを叱らない。褒めて伸ばす」という雰囲気だったので、校内に厳しく叱っている先生はいらっしゃらず、身近にない実践だったので気づかなかったのだと思います。

3、何のために叱るのか

——今でもそのスタイルは変わらないでしょうか?

はい、変わりません。今はまた異動して他の学校にいるのですが、自分のようなタイプの先生はいません。(初任校の雰囲気に近い)

しかし、自分の方針は変えずに指導しています。子どもたちも、今まで担任したクラスと同じように成長していると思います。

——保護者や他の先生から何かコメントはありましたか?

保護者の方からは、「先生は今まで学校にはいないタイプですね。でも子どもが成長している姿がみえるので、これからもよろしくお願いします。」とポジティブに仰って頂いています。

周りの先生からも、「先生のクラスはなんだか違うね」と言われます。まだ5月なので、これから自分の実践が学校や他の先生方にどう影響するかは分かりません。

——先生にとって、厳しさとは、どういうものでしょうか。

厳しくするのは、子どもの力を伸ばすためです。例えば挨拶をしなくて叱る際には、「大人になって挨拶ができないだけでダメな人と思われます。逆に、笑顔で挨拶だけで得することもあります。なので、今から練習することで、大人になってもできるようになるのです。」と子どもに伝えています。

もちろん今まで通り「全力で楽しむ」ことや、褒めることも大切にしています。「叱って褒めて鍛える」という意識です。

——自分の軸がぶれないですね。子どもの成長を一番に考える想いがとても強く伝わってきました。ありがとうございました。

4、編集部から読者への問いかけ

  • Q:なぜA先生は初任の頃、自分に合った指導を身に付けられなったと思いますか。
  • Q:A先生が今のスタイルを変えることがあるとすれば、それは何がきっかけになると思いますか。
  • Q:あなたがA先生の支援者だったら、どんなサポートをしますか?(関わる立場、頻度)
  • Q: 自分の中に、児童生徒への関わりにおける信念はありますか。それは、どのような経緯で生じましたか。その信念を突き通すことで困る人はいますか。
  • Q:自分の信念に合わないような情報に触れたとき、どのように感じますか。
  • Q: 教師の無意識の振る舞いや言動が生徒に影響を与える「みえないカリキュラム」という考え方がありますが、先生同士の関係にも「みえないカリキュラム」があるとすると、どのようなものが考えられますか。
  • また、自分の教育観(理想の教室など)にも、実は無意識のレベルで影響を受けている(受けていた)ものはありそうですか。
  • Q: 教師としての成長や学習に影響を与えるものには何がありますか。(自分、他者、組織、環境、社会、制度など)
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