休校中でもできる!オンライン授業の実践(秋山貴俊先生)【コロナと向き合う】

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目次

1 はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大は教育現場にも大きな影響を与えており、対応に追われている先生も多いのではないでしょうか。EDUPEDIAでは、必要な情報が教育関係者に届くように、【コロナと向き合う】特集を始めました。

この記事は2020年4月に成城学園初等学校教諭の秋山貴俊先生にオンラインインタビューさせていただき、それをまとめたものです。秋山先生は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で休校中となった小学生に、ZoomYouTubeなどのオンラインツールを用いて、オンライン授業を行っています。

この記事では、秋山先生の具体的な取り組みだけではなく、オンライン授業のメリット・デメリット、オンライン授業の展望についても伺いました。自宅学習において脚光を浴びているオンライン授業に関心のある方や、取り組むかどうか迷っている先生方の参考になれば幸いです。

2 オンライン授業での取り組みについて

取り組みとその前提

今からお話しするのは、私が3月2日から3月20日の休校中に行ったオンライン授業の実践です。私のクラスは少し特殊で、実証実験に参加していたために1人1台のChromebookを持っていました。そのため、休校になる前から児童はschoolTaktという協同学習ソフトや、YouTubeを授業の中で使っていました。Zoomに関しては休校前日に、20分間ほど使い方を説明しました。必要がある児童はChromebookを家に持ち帰り、自宅にWi-Fi環境を整えてもらって使いました。3月4日には、すべての児童がアクセスすることができました。

具体的な取り組みとしては、Zoomを用いた朝の会や社会の授業の配信、YouTubeを用いた授業の解説動画の配信、schoolTaktを用いた朝ノートの活動になります。

オンライン授業に踏み切ったきっかけ

児童の持っている機器が整った環境だったので、休校になる前の通常の授業でも、児童から「必ずしも先生がみんなの前に立って教える必要はないよね」という声がありました。また、私自身もschoolTaktを用いて遠隔で課題を出し、その課題を採点して返却した経験があったので、児童も私も「学校にいなくても学校の授業に近いことはできる」ということを知っていました。それが、私や児童だけでなく児童の保護者も、休校になった際に戸惑いなくオンライン授業に早い段階で踏み切れた理由です。

オンラインツールの使い分け

YouTubeは説明関係に用いています。YouTubeは繰り返し視聴できるため、説明に向いていると考えています。Zoomは児童同士でコミュニケーションをとったり、私と児童でコミュニケーションをとったりするために用いています。Zoomは短い時間でより多くの児童が会話できるコミュニケーションツールだと考えています。また、schoolTaktはノートの回収に使っています。児童は朝に出された課題を、詳しい説明を加えて配信したYouTubeと教科書を参考に提出します。私はその課題の採点やフォローアップを行い、次の授業で課題を参考に分かっていない部分を補足で解説しています。

オンライン授業のメリット

児童にとっての一番のメリットは、自分のペースにあわせて学ぶことができることだと思います。例えば、朝に課題を出して夕方を提出期限に定めておけば、ゆっくり取り組みたい子も早く終わらせたい子も自分のペースで課題を行うことができます。

他には、オンラインの方が児童は私に質問しやすいのかなとも感じています。通常の授業の中で手を挙げることはやはりハードルが高い児童もいます。一方、プライベートなチャットの形でメッセージを送る方が、そのような児童は質問しやすいのかもしれません。

3 オンライン授業のデメリットとその対策

①集中力が切れてしまう

オンラインでは、45分や50分という通常の授業と同じ時間単位で授業ができないな、ということを感じています。Zoomを用いた授業でしたら1教科につき20分程度が限度だと思います。画面を注視したり画面上で物事を追ったりすると、目が疲れてどうしても集中力が落ちてしまうからです。ですから、課題はなるべく自分でやって、その課題を話し合いながら共有する時間をオンラインで担保するのがよいと思います。そしてそれは、児童が学習するペースを担保してあげることにつながると思います。

また、学校で教える時以上に学ぶ目的を動機付けする必要があると思います。そうしないと、パソコンの前だから楽しく授業を受けるのは最初だけで、児童はやる必要性を感じないとだんだん飽きてしまいます。通常の学校と同様で、意識付けができているかできていないかによって続くか否かが変わってくると思います。例えば、普段以上にクイズ形式で問題を出したり、児童同士で共有しあってもらう時間を増やしたりました。

②授業運営の難しさ

オンライン授業となると、現在の法制だと、著作権に配慮した授業作成が欠かせません。動画の場合、取り直したり編集したりすることも必要です。また、通常授業と同じように児童から回収したノートを添削して返却する作業も時間がかかります。

③児童をオンラインに慣れさせる必要

私は目的に対する手段は選ばないということを心がけています。例えば、タイピングに慣れていない最初のうちは、紙に書いたものを写真に撮って送る形式や音声入力をした形式でも提出可にしました。児童は時間が経てば、「タイピングをした方が早い」とか、「タイピングをした方がかっこいい」と感じるようになります。彼らは飲み込みが早いので、練習しているうちにキーボード付きのパソコンも慣れさせることができると思います。

④児童全員に目が行き届かない

Zoomを用いて一斉授業を行う場合、それぞれの児童に目を向けるのは難しいです。また、ブレークアウトセッション機能を使って5人から6人のグループを作って授業を行ったとしても自分が入っているルーム以外の様子は見ることができません。それよりも、例えば10人単位で児童を分けて、30分ずつ時間をずらして授業をした方が見えない部分を少なくすることにつながります。ただ、先生は授業時間外に見ることができないので、ご家庭での負担を増やしているという心苦しい部分があります。

4 実践に向けて

オンライン授業が広まる中で必要なこと

前提として、政府が、「機器やネット環境は教育に必要なものだ」と認識して、お金をかけてこれらを整備していただく必要があります。

先生方に関しては、コロナウイルスの影響が収束した後の教育現場をイメージする必要があると思います。その準備として、現在の制限された環境の中で何をやっていくのがいいのかを考えることが求められていると思います。

既にオンラインで授業を行っている先生は、「オンライン上で何ができて、何ができないのか」ということがだんだん分かってきています。例えば、私の場合だと、運動会や合奏や劇などの行事は小学生がオンライン空間で行うのは難しいと感じています。行事は何か一つのものに向かっていく中で、コミュニケーションをとりながら体を動かす必要があるためです。一方で、授業に関してはオンラインでもできる部分が大きいです。議論の中で、複数の意見を同時に聞くことは対面ではないと厳しいですが、順序が決まっている討論であれば可能です。

そのためコロナウイルスの影響が収束した後では、オンラインでできる授業はオンラインで行って、学校では行事のように児童同士がコミュニケーションを取りながら何かを達成する方に時間を割くべきだ、となることも考えられます。

オンラインツールが苦手な先生に対して

現在私は、オンラインツールを用いたことのない人に対して、研修やサポートをしていますが、「使ってみなかっただけで、使ってみたら意外と簡単だ」とおっしゃる方も少なくありません。ですから、使いやすいツールは人それぞれですが、例えばZoomのようにチャンネルを入れるだけで使うことができる簡単なツールも多いので、まずは興味を持って始めてみるのがよいと思います。

オンライン授業をするのが困難な先生に対して

家の中にいて精神的に不安定な児童もいる中で、「本来ならば教員としてこんなことができるのに」という思いを持ち、苦しんでいる先生方も多いと思います。「機器が全員に行き渡らないから難しい」とか、「学校や教育委員会が許可しないから難しい」など、オンライン環境が学校によって異なります。ただ、いつかオンライン環境が手に入った時に活用できるように、オンライン授業の実践を考えたり、児童たちにどのように使わせるのかを考えたりすることは今のうちからできるのではないかと考えています。また私としても、試行錯誤をしていく中で得た知見をお伝えするのが使命だと考えています。

5 プロフィール

秋山貴俊先生

成城学園初等学校教諭(社会科主任・ICT委員会委員長)。成城学園情報一貫教育推進検討委員。日本スクールコーチ協会認定スクールコーチ。192Cafe ambassador。(2020年4月16日時点のものです)

6 編集後記

今回の取材を通して、新型コロナウイルスの感染拡大による教育の変化について考えさせられるきっかけとなりました。一人でも多くの先生方にこの記事が届いて、少しでも授業の形態について見直す一助となってくれたらと思っています。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 安藝航)

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