「地理総合」に向けてー地理×開発教育(2)ー

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目次

1 はじめに

本記事は、大阪商業大学の西岡尚也さんに行ったインタビューを編集・記事化したものです。
西岡さんは大学を卒業し、教員として活動する中で、国際理解教育の研究会に入り勉強をしました。
しかし、研究会での主な勉強内容は英語圏理解が主体であることに対して疑問を持たれました。
その後、京都YMCA(キリスト教青年会)のスタディーツアーに参加し、途上国でのNGOの活動現場を実際に訪問され、「第三世界(途上国)をもっと地理教育で取り上げなければならない」と強く感じたため、開発教育を意識し始めたそうです。

そんな西岡さんに、「開発教育」とはなにかということについて地理教育の観点から教えていただきました。

高等学校で地理を履修していない方にもわかりやすい内容になっております。「地理総合」を教えることになる先生方、「開発教育」に興味のある先生方の手助けになれば幸いです。

2 開発教育と地理教育

◎開発教育とはなにか

1960年代になり、欧米のボランティアやNGOが第三世界(途上国)を訪れ、帰国した際に、自分たちが住んでいる先進国の豊かさが異常なことに気づきました。そのような背景もあり、開発(development)の定義は3つあります。
(西岡1996,70〜85)

①パーキンスの定義

「開発は、まず最初に人々を解散することであり、最終的には社会を変革すること」


(西岡尚也(1996)『開発教育のすすめー南北共生時代の国際理解教育』かもがわ出版より)

②ビッカーズの定義
「開発には2つの方向つまり低開発(貧しい人)を上げる開発と過剰な開発(豊か過ぎる人)を下げる開発がある」

③ニエレレ元大統領(タンザニア)の定義
「個人がさらなる豊かさを追求する以前に、まだ豊かになっていない人の水準を高めていけるような社会を建設しよう」

◎開発教育のプロセス

③の理解するという意味は、「対等」や「上から」ではなく、「下に立って理解する」ということです。
④のシェアというのは、行動を伴う理解であり、先進国の豊かさや富を「分けてあげる」ということです。

◎教科を超えた開発教育

開発教育は、地理などの1つの教科にとどまらず、教科の枠を超えて行われるべきです。教科の枠を超えた開発教育の実践にあたって、教育環境を変えていく必要があります。

(ドイツで上手くいっている例)
各月ごとにテーマを設定し、学習に取り組んでいます。例えば、ある月は、「熱帯林」がテーマになっており、様々な教科で「熱帯林」について取り組んでいます。

◎開発教育の効果

開発教育の効果は2つあります。

①環境・人権・平和との繋がりが見える

明治以降、日本は欧米諸国に追いつこうとばかりに大量生産、大量消費をしてきました。
しかし、発展(開発)を求めるばかりに環境問題が悪化します。このように、開発教育は環境・人権・平和をなしに考えることができません

②開発教育には世の中を変える力がある

今の子ども達には、「世の中を変えていく方法」を教えていく必要があります。それに役立つのが開発教育です。子どもたちは、NGOの活動や健全な市民運動の手法を学ぶことができます。このような教育が欠けてしまうと、地下鉄サリン事件のように間違って世の中を変えるような人たちが現れるかもしれません。

つまり、社会正義の実現に向けてのNGO活動や健全な市民運動の手法を教えていく必要があります。

◎地理を通して開発教育を学ぶ

地理を通して開発教育(南北問題)を学んだ高校生の感想です。

3 プロフィール

◎西岡尚也(にしおか なおや)
1958年,京都府生まれ。
奈良大学文学部地理学科卒業。
佛教大学院教育学研究科生涯教育専攻修士課程修了。
関西大学大学院文学研究科地理学専攻博士後期課程単位取得退学。
京都府立高校教諭、琉球大学教育学部准教授・教授を経て現在、大阪商業大学公共学部教授。
専門班は、地理教育・開発教育。
(プロフィールは、2020年5月18日時点のものです。)

<文献>

・西岡尚也(1969)『開発教育のすすめー南北共生時代の国際理解教育ー』かもがわ出版

・西岡尚也(2007)『子どもたちへの開発教育ー世界のリアルをどう教えるかー』ナカニシヤ出版

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「地理総合」に向けてー地理×開発教育(1)

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「地理総合」に向けてーお茶の水女子大学附属高等学校の実践ー

「地理総合」に向けてー地理教材サイトの紹介①ー

「地理総合」に向けてー地理教材サイトの紹介②

また、国際理解教育・開発教育に関する記事も掲載しています。

教科×ESDー実践事例・学習指導案紹介サイトー

こちらも併せてご覧ください。

5 編集後記

開発教育を地理の授業で行うことを通して、生徒から「地理を通して地球規模で知ることの大切さを学べた」などのような声が聞かれたことに大変興味深く感じました。開発教育と地理の繋がりから地理の大切さを知ることができるのだと改めて思いました。
(EDUPEDIA編集部 辻)

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