米カリフォルニア州公認心理カウンセラーが語る「コロナ禍の子どもたちにはどのような心理的悪影響がおよんでいるか」

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目次

1 はじめに

本記事では、カリフォルニア州で心理カウンセラーをされている荒川龍也先生よりいただいた原稿をもとに、新型コロナウイルスが子どもに与える心理的悪影響について説明しています。子どもの自殺者数が急激に増加しているとされるコロナ禍の時代において、子どもに対して学校の先生や親などの身近な大人が何ができるかを考えるための手助けとして、ぜひお役立てください。具体的な実践方法については「コロナ禍の子どもたち・親への学校の先生の関わり方」をご覧ください。

2 子どもへの心理的影響

はじめまして、カリフォルニア州公認心理カウンセラーの荒川龍也です。
収束の兆しが見えない新型コロナウイルスが猛威を振るい始めて早くも9ヶ月近くが経とうとしています。多くの人が様々な困難に立ち向かう中、見逃されがちですが、子どもの心への影響は顕著なものです。
新型コロナウイルスが世界的に流行し始めてから、多くの国で専門家によって子どもの心の健康に対する影響の調査が行われています。以下に3つの調査をご紹介いたします。

2.1.中国の7歳から18歳の子ども3613人を対象に行われたアンケート

中国の7歳から18歳の子ども3613人に行われたアンケートによると(Duan,Shao et al,2020)、22.3%がうつ病を示唆していました。この結果は中国の子どものうつ病発症率である13.2%を大きく上回っています。また、不安障害(*1)を示唆する数字も新型コロナウイルス流行前よりも高くなっていました。

[*1] 「不安障害」とは、不安や心配な気持ちにしてしまう考え事に関して、その事について考える事を止められず、生活に支障をきたしてしまう精神疾患のこと

2.2.中国の高校2年生と3年生8079人に行われた調査

中国の高校2年生と3年生8079人に行われた調査によれば(Zhou,Zhang et al,2020)、うつ病は43.7%、不安障害は37.4%、そして3.13%はその両方を示唆するという結果が出ました。

2.3.イタリアとスペインの3歳から18歳の子どもを対象とした調査

イタリアとスペインで行われた、3歳から18歳の子ども1143人に対しての調査によると(Orgilés, Morales, et al, 2020)、85.7%の親が子どもの気持ちや行動が変わってしまったことを報告しています。集中力の低下76.6%、倦怠感52%、イライラ39%、落ち着きのなさ38.8%、緊張38%、孤独感31.3%、不安30.4%、そして心配3.1%となっていました(下図)。

(新型コロナウイルスによる子どもの気持ちや行動の変化)

以上より、新型コロナウイルスが子どもの心の健康に大きな影響を与えていることがわかります。特に、うつ病や不安障害が懸念されます。

参考文献

1.Duan L, Shao X, Wang Y, et al. An investigation of mental health status of children and adolescents in china during the outbreak of COVID-19. J Affect Disord. 2020;275:112-118.

2.Zhou SJ, Zhang LG, Wang LL, et al. Prevalence and socio-demographic correlates of psychological health problems in Chinese adolescents during the outbreak of COVID-19. Eur Child Adolesc Psychiatry. 2020 Jun;29(6):749-758.

3.Orgilés M, Morales A, Delvecchio E, et al. Immediate psychological effects of the COVID-19 quarantine in youth from Italy and Spain. PsyArXiv. Accessed September 22, 2020.

3 おわりに

次回は、学校の先生がコロナ禍で様々な心理的諸問題を抱えている子どもに対して何ができるか、また子どもたちの親に対して何を教えられるかについてご説明いたします。

続きは「コロナ禍の子どもたち・親への学校の先生の関わり方」をご覧ください。

4 プロフィール

荒川龍也/カリフォルニア州公認心理カウンセラー(LMFT #82425)

富山生まれ、名古屋育ち。10代でいじめや教師からの体罰に苦しむ。中学時にはいじめが原因で一部クラスを不登校。小学校高学年頃から精神的な病を患い、16歳で高校中退。2年間のカウンセリングのおかげで、定時制高校に入学。愛知県の大学院教授からアメリカの心理学は日本より100年先を進んでいると聞き、心理カウンセラーを目指して渡米。カリフォルニア州立フラトン校大学院カウンセリング専攻卒業。大学院卒業後、3000時間のインターン時間を終え、国家試験を二つ合格し、現在のカリフォルニア州公認心理カウンセラーの資格を取得。子どもとその家族、重度の精神障害者とその家族、薬物中毒のクライアント等、多岐にわたり経験を積む。

現在はカリフォルニアのロサンゼルス近郊で開業し、カウンセリングを提供。専門は、子どもとその家族、不安とうつ病。
↓荒川先生のHPについてはこちらをご覧ください。

https://japanlatorrancecounseling.com/
(本プロフィールは2020年12月22日時点のものです。)

5 編集後記

本記事は、新型コロナウイルスにより子どもがどのように心理的悪影響を受けているのかを知ることができるのではないかと思います。子どもへの心理的悪影響を知ることで、日常的にお忙しい先生方が子どもに指導する際の一助となれば幸いです。
(編集:EDUPEDIA編集部 加藤)

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