学校を子どもの居場所に 〜双葉みらいラボの教育実践から〜

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目次

 はじめに

 この記事は、2022年12月1日に行った、双葉みらいラボの横山和毅さんへのインタビューを記事化したものです。

 双葉みらいラボとは、福島県ふたば未来学園中学校・高等学校に設置されたサードプレイスです。正式名称を、「コラボ・スクール 双葉みらいラボ」といい、地域にも開かれた空間となっています。ここでは、ラボに常駐するスタッフだけでなく、地域における多様な方々が一緒になって子どもたちの学びや居場所作りに参画しています。

 この記事では、「居場所」としての双葉みらいラボに注目し、子どもたちが安心できる場の必要性とその作り方を紹介します。

この記事をおすすめしたい方

  • 「居場所ってなんで必要なの?」と疑問に思っている方
  • 「子どもたちの安心できる場を作りたい!」と思っている方

 なお「探究学習での生徒との関わり方 〜双葉みらいラボでの教育実践から〜」では、双葉みらいラボでの「子どもたちの学び」に注目して、探究学習の目的と実践の仕方を紹介しています。ぜひ併せてお読みください。

 居場所はなぜ必要なのか

 いるだけでいい場

 「居場所」という言葉で想像されるものは様々ですが、一般的には福祉的な意味で捉えられることが多いと思います。家庭に居場所のない子どもや不登校の子どもを対象にした「居場所」がそれにあたります。しかし、双葉みらいラボの「居場所」は、それとは少し異なったものです。

 いまの子どもたちには、「何かをすることが求められる場」がたくさんあります。その一方で、「何もしなくても、いるだけでいい場」がほとんどありません。大人が子どもたちに活躍してほしいと願うことで、かえって子どもたちが「何かをする場」に押しつぶされてしまわないように、「いるだけでいい場」があることが重要です。そして、この「いるだけでいい場」は家庭や学校での事情によらず必要なものです。双葉みらいラボにおける「居場所」とは、こうした「いるだけでいい場」なのです。

 居場所が意欲を生む

 また、令和4年版子供・若者白書の「子供・若者インデックスボード」によれば、子どもにとっての居場所の数が多ければ多いほど、その子どもの自己肯定感やチャレンジ精神が高い傾向にあります。「いるだけでいい場」では、子どもたちは自分で時間の使い方を決めることができます。そうした余白があってこそ、学びへの意欲が子どもたちの内から湧いてくるのです。

*令和4年版子供・若者白書について詳しくはこちら

 子どもたちとの関わり方

 過ごし方を強制しないこと

 双葉みらいラボでは、子どもたちと日ごろから雑談をしています。「最近この韓国アイドルがすき」「テストがうまくいかなかった」「来週までに志願理由書を書かないと」など、子どもたちと交わすやり取りは実に多様です。そうした会話を通して、日々子どもたちのことを知り、関係性の構築につとめています。

 子どもたちと関わっていくなかで、ときには、いま悩んでいることが話題になります。その場合には、「話したくないことは話さなくていいよ」と前置きしたうえで話を聞くように心がけています。こうした子どもたちとのやり取りすべての前提には、安心安全な場をつくることで多感な子どもたちのありのままの状況を受け止めたいという思いがあります。

 気にかけ続けること

 子どもたちとじっくり話す機会だけではなく、挨拶をしたり軽く立ち話をしたりする機会も子どもたちとのコミュニケーションのうえで重要です。双葉みらいラボには、多い日では80人もの子どもたちが訪れますが、私たちは挨拶や立ち話を通して子どもたちの日常の機微を掴んでいます。そして、常日頃から子どもたちと関わりながら「気にかけている」というサインを出し続けるようにしています。

 学校を安心できる居場所へ

 じっくり話を聞くために

 学校を子どもたちが安心できる居場所の一つにしていくために必要なことは、子どもたちの話をじっくり聞くことです。しかし、学校においては生徒の話を聞く時間の確保が難しいです。だからこそ、意識的にそういった時間を作り出す方法を模索する必要があるのではないでしょうか。例えば、ある学校では月に1回、先生方は会議を入れず、子どもたちは部活動をしない日を作っているそうです。子どもたちとのコミュニケーションが事務的なものだけにならないよう、可能な限り話を聞く時間を作っていくことが重要だと思います。

 プロフィール

横山 和毅(よこやま まさき)

認定NPO法人カタリバ
福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校 学校支援統括コーディネーター
コラボ・スクール 双葉みらいラボ 拠点長

2011年、専修大学文学部を卒業。学生よりカタリ場プログラムにキャストとして関わり、2011年4月に新卒でカタリバへ入社。カタリ場事業部で出張授業「カタリ場」の事業リーダーとして100校以上の首都圏や地方の高校へ届ける。2016年よりコラボ・スクール「大槌臨学舎」にて、町内の中高生の支援に従事。
2019年からふたば未来学園中学校・高校支援を担当。2021年より現職。

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