【導入】小学4年 算数 体系的に学ぶ「小数のかけ算とわり算」

0
目次

本単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、かけられる数や割られる数が小数の場合の乗除計算の仕方について理解し、正しく計算することができる能力を養う。また、既習の計算方法や倍の学習とのつながりを意識し、今後の学習に活用しようとする態度を育む。

単元の評価基準

  • 知識・技能:小数×整数、小数÷整数、整数÷整数で商が小数になる場合の計算ができる。
  • 思考・判断・表現:小数×整数、小数÷整数、整数÷整数で商が小数になる場合の計算の仕方を、数学的表現を適切に活用して説明できる。また、小数倍の意味について正しく説明できる。
  • 主体的に取り組む態度:小数×整数、小数÷整数、整数÷整数で商が小数になる場合の計算の仕方だけでなく、数学的な意味について理解しようとする。

本実践の目的

本実践の目的は「小数の積を、整数の積に小数点を後付けして解けるようになること」である。出てくるたびに同じ言い回しを繰り返し使用する。これには2つの利点がある。

  1. 後付けの計算は「10の倍数を含むかけ算」と同じ手法なので、実は理解しやすい
  2. 同じ言葉を繰り返し用いることで、指導に一貫性が生まれる。

「10の倍数を含むかけ算」とは、15×30の計算などである。このような10の倍数を含むかけ算でも15×3をしたのち、末尾に0を付け加える計算をしていることと理屈は同じなので、理解できれば違和感はなくなるだろう。

また、単元内でたくさんのことを教えたくなるものだが、今回は目的をあえて絞った方が良いだろう。目的を一つに絞っておくと同じことに繰り返し触れられるので、一貫した指導につながる。これが理解と定着につながっていくのである。

体系的に学ぶ「小数のかけ算とわり算」導入実践

1. 小数×整数の計算「2つの見方」

まずは、小数×整数の計算の必要性に気付かせる。

問題①:一人に3Lのジュースを5人にくばるとき、全部で何Lのジュースが必要ですか。

問題②:一人に0.3Lのジュースを5人にくばるとき、全部で何Lのジュースが必要ですか。

問題①で立式のイメージをつかんだところで問題②へ移行し、小数の立式について考える。それでも問題②に苦戦する場合は、一人分のジュースの量を□Lとして立式させた後にもう一度考えさせると良い。

その後グループをつくり、小数×整数の計算方法について、既習事項を利用して説明する活動を行う。予想される児童の考え方は以下の通りである。

  1. 0.1がいくつ分あるかという考え方(小数の導入を利用)
  2. 単位変換を利用した考え方

各項目をまとめておくので、グループで意見がまとまらない場合のヒントとして活用すると良い。

(1) 0.1がいくつ分あるかという考え方

0.3を0.1が3つ分あると考え、その塊を5人にくばるので、以下のような計算になる。

0.3×5=(0.1×3)×5=0.1×(3×5)=0.1×15=1.5(L)

ここでの利用も踏まえ、小学3年生での小数導入は以下の流れで行うことをお勧めする。

小学3年「小数」ゲーム実践で簡単導入!:

(2) 単位変換を利用した考え方

0.3L=3dLなので、まずL⇒dLで計算後、dL⇒Lに直すことで求められる。計算は以下の通り。

3×5=15(dL)であり15dL=1.5Lなので1.5L

2. まとめ(乗法の性質)

1「2つの見方」のどちらでも、計算上は「小数を含むかけ算」を「整数のみのかけ算」で考え、その後「小数に戻す」という計算方法を行っていることが分かる。これは小4「計算のきまり」で学んだ「かけられる数を10倍すると、積も10倍になる」という性質が根拠となる。根拠は説明しつつも、「小数点を後付けすれば良い。」というまとめを必ず入れておくことが重要だ。

もし、「小数だけ特殊な計算方法をとる」という認識の児童がいた場合には、目的でも記したように、15×30の計算などを振り返ると良い。

3. 筆算の仕方の確認

小数を含む筆算の書き方は児童に大きな違和感を与えるだろう。その理由は、桁数を揃えるという今までのルールを完全に無視した書き方になるからだ。

小学3年 スモールステップで学ぶ「かけ算の筆算(2)」:

この特殊な書き方をする理由は、小数の計算の考え方がある。先に確認した通り、小数の計算は、一度整数に戻してから考えるのが定石だつまり、1.2×3をそのまま計算するのではなく、一度12×3に直してから考えるのだ。思考の流れを表すと以下のようになる。

上記の説明は、表記の理屈を丁寧に説明して理解を促すというよりも、児童の思考の流れを整理するために活用すると良い。これが結果的に児童の計算ミスを減らすことにつながるだろう。繰り返すが、まとめとしては「小数点を後付けすれば良い。」だけである。

【補足】10の倍数を含むかけ算と小数を含むかけ算の関係について

児童には指数の感覚がないので、×10と÷10が同じ仲間だと言われても直感的には理解できないことに注意すべきだ。つまり、0を末尾につけるのも、小数点をつけるのもやっていることに大差ないというのは、説明を加えなければ分からないのである。

執筆者

まき先生

中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

この記事は、EDUPEDIAの認定を受けたライターによって書かれたものです。EDUPEDIAは、教育現場での実践経験や教育情報に関する記事の執筆について、様々な方にご協力いただいております。
教育実践の提供や記事執筆にご興味がありましたら、下記リンク(EDUPEDIAお問い合わせフォーム)よりお問い合わせください。
https://edupedia.jp/aboutus#1622473627276-8e2dffba-8002

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次