社会科でアクティブ・ラーニング<理論編>

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この記事は、2015年8月8日に行われた「漆間先生、河原先生から学ぶ社会科授業づくりの極意セミナー」をもとに作成しました。

目次

1 はじめに

このページでは主に、アクティブ・ラーニングを実践するうえでの理論を紹介します。
より具体的な実践方法については、関連記事
「社会科でアクティブ・ラーニング<実践編①>~社会科授業づくり~」
「社会科でアクティブ・ラーニング<実践編②>~授業のネタ~」
をご覧ください。

2 アクティブ・ラーニングとは?

アクティブ・ラーニングについて、文部科学省の用語集では次のように定義されています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

また、中央教育審議会では、小中学校・高等学校でのアクティブ・ラーニング学習について

課題の発見と解決に向けて主体的・協同的に学ぶ学習

としています。

3 アクティブ・ラーニングを実践するにあたって

アクティブ・ラーニングを行う際には、ただ何となく課題解決的授業やグループワーク中心の授業をするだけではなく、きちんと目的を意識することが重要です。

アクティブ・ラーニングの目的は、将来子どもたちにとって本当に役立つ力や姿勢を育てることです。卒業後、個人にも、集団や社会にも、世界のレベルでも様々な問題が起こってきます。それを解決し、よき生活を送り、よき社会を築き、そして何よりも子どもたちがしあわせに生き続けるために必要な力や姿勢を育てる上で、アクティブ・ラーニングは効果的といえます。

すでに実践されているアクティブ・ラーニングを振り返ってみてください。そのアクティブ・ラーニングを通して子どもが学んだことは将来本当に役立つものですか?また、子どもたちはそこで学んだことを使おうとしていますか

子どもが使おうとし、本当に役に立つ力を養うために、アクティブ・ラーニングの中では「使ってみたらやっぱり役に立った」という経験いいんだ経験)を子どもたちにしてもらうことが必要です。

4 社会科でアクティブ・ラーニングをするということ

国際社会に生きる平和で民主的な国家・社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養う

社会科の目標として、学習指導要領には上のように記載されています。
これからの社会で本当に役立つ力をつけるという意味で、社会科はアクティブ・ラーニングの目標を達成するのに非常に適した科目といえます。

①アクティブ・ラーニング実践のための学習環境

「変なこと」を言ってもそれが馬鹿にされずに受け入れられる学びの空間づくりが前提となります。後に挙げる通り、アクティブ・ラーニングでは常に集団で活動させ、協働する経験を積ませることが大切です。子ども自身が、その学級で仲間と学んでいることをとても素敵なことだと思えるような環境、すなわち共感的人間関係があり自己存在感が感じられる学習環境を日頃から整えましょう。

②社会科におけるアクティブ・ラーニングの3要素

社会科におけるアクティブ・ラーニングの3要素は次の三つです。

 1.調べる

多様な方法(情報機器の活用など)で納得するまでこだわって調べる。
→情報化という社会に対応した能力

 2.考える

社会科の見方・考え方に基づいて、納得するまでこだわって考える。

 3.発表する

根拠に基づいてわかりやすく相手に伝えられているかにこだわって発表する。

③実践の上で大切な点

 1.こだわること

上記3要素に共通して重要なのは「こだわること」です。
こだわらないと解決できないことが多いと考えています。

 2.常に集団活動とすること 

子どもたちは社会に出てから集団で問題解決していかなくてはなりません。
そのために、みんなで考えて解決する経験をさせることみんなで考える癖をつけることが重要です。

 3.自己決定の機会を多く設定すること

子どもたちもいつかは卒業して学校を出ます。自分で考えて決める力を育てましょう。

5 目指すべきアクティブ・ラーニング

子どもたちが実際に「使えて、使おうとする」アクティブ・ラーニングにするために大事なことは、
問題や課題を解決したという成功・達成体験(いいんだ経験)を多く積ませること」です。

とはいっても、限られた授業時間内で、求められる基礎基本はしっかり教えなくてはいけませんよね。
「これを教えたい」という知識があるとき、教える方法は2つあります。

1. さらーっと説明する方法
  2. アクティブ・ラーニングで様々な資料を見て議論しあいながら、その知識につなげていく方法。

後者は時間がかかりますが、より定着します。

見方・考え方を養う

アクティブ・ラーニングを通して得られる見方・考え方がこれからの時代非常に重要です。
それぞれの分野で得られるおもな見方・考え方は以下の通りです。

地理的分野
比較、一般的共通性や地方的特殊性
歴史的分野
勝者の歴史、様々な立場、事実・真実(当事者に聞けない)
公民的分野

 個人の尊厳、対立、合意、効率、公正

こうした見方・考え方をアクティブ・ラーニングで子どもたちに経験させて、「いいんだ経験」(成功体験)をさせれば、社会に出てからもう一度その方法を使おうとするようになります。
  さらに、「いいんだ経験」で子どもの達成感を引き出すことができれば、子どもたちの学ぶ意欲も高まります。

6 実践者プロフィール

漆間浩一(うるしまこういち)先生
1954年生まれ。元横浜市立中学校教諭。
指導主事、校長、指導部長、横浜教師塾アイカレッジ塾長、教育次長を歴任。
「いじわるよっちゃん」の社会科授業で有名。
現在、鎌倉女子大学教育学部教育学科 教授

7 編集後記

この記事では、社会科でアクティブ・ラーニングを実践するうえでの理論的部分を紹介しました。
「アクティブ・ラーニングとはよく聞くけれど、実際どういう目的で何をする授業なのだろう?」
取材に行くまでそう感じていましたが、今回アクティブ・ラーニングの意義を理解することができました。みなさんはいかがだったでしょうか?

もっと実践的な内容を知りたいという方もいらっしゃるかもしれません。
関連記事の
「社会科でアクティブ・ラーニング<実践編①>~授業づくり~」
「社会科でアクティブ・ラーニング<実践編②>~授業のネタ~」
では、明日から授業で使えるより実践的な内容を紹介していきます。ぜひそちらもご覧ください。
(編集・文責 EDUPEDIA編集部 横山尚人)

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