隂山メソッドドリルタイム実践(福岡県鞍手町立西川小学校)

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作成者:くるみ 渡邉 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

百ます計算や漢字練習の徹底反復学習で、基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立した立命館大学教授の隂山英男先生。この度2016年2月18日に行われた福岡県鞍手町立西川小学校のドリルタイム実践の視察にEDUPEDIA編集部も同行して取材をしました。

2 西川小学校の概要と取り組み

かつて西川小学校区は、炭鉱の街でした。当時生徒数が500人を越えるような大規模校だったそうですが、今では1学年10数名の小規模な学校です。炭鉱が廃れてしまってからは新たな基幹産業もなく、厳しい家庭状況にある生徒が多くいる学校でもあります。そのため西川小学校では、まず基本的な生活習慣を身につけさせること、主に食育から力を入れ始めました。そして4年前から、「隂山メソッド」を導入。毎朝15分のドリルタイム木曜1校時に45分のドリルタイム(通称:西川タイム)を取り入れ始めてから、みるみる学力が伸びてきており、全国学力テストにおいても結果として表れています。

3 隂山先生からの講評~研究協議会にて~

西川小学校の印象

一番強く思ったのは、私が以前勤務をしていた、兵庫県朝来市立山口小学校の空気感が、西川小学校にできているということです。さらにある種のオリジナルも現れているので、とても嬉しく、同時に衝撃を受けました。

やっていることは徹底反復ですから、要するに漢字や計算を繰り返せばいいので、それほど難しいことではありません。しかし、校長、あるいは教員の考えによっていろいろな形に進化していくのだと気づきを得ました。

子どもたちの能力について一番衝撃的だったのは、6年生です。西川小学校が子どもたちをどこまで高めているのかということは、最高学年である6年生に体現されているわけです。ドリルタイム(西川タイム)を見てまず、使っている教材に衝撃を受けました。私の徹底反復シリーズの「音読プリント2」を使っていたのです。

この「音読プリント2」を作る時に、実は議論があったのです。「音読プリント1」に全てを盛り込んでいたので、2を作るというのは相当より高度なものを入れていかないといけない。「小学生に高度なもの」をやらせて意味があるのかという議論があったのです。

その「音読プリント2」を学校で使っているのを見たのは初めてでした。とんでもないことをやっているのです。それに子どもたちはついていっている。プリントを見ていても、この子たちが暗記しているということは見たら分かりました。音読プリント2の文章を音読だけで暗記する。「この子たちの脳はどうなっているんだ」と驚きました。

このような学級であれば、2分以内で100わり計算ができているはずだと感じ、予定を変更して計算を見せてくださいとお願いをしたら、やはり2分以内の子どもが3人くらいいました。おそらく今後は、もっと増えると思います。

助言①~教師の立ち位置、振舞い〜

基本的なことを言うと、読み書き計算の実践というのは、その一人ひとりの基礎的な能力を高めていくためにやっていくものです。ですから反復練習は「音読しましょう、計算しましょう」というように、みんな一斉に用意ドンとやっていくのですが、実はその中で一人ひとりを伸ばすために、一人ひとりを見ていなくてはならない

そうした中で、課題にしていただきたいと思うのは、教員の立つ位置です。教室前方にいると実は一定の角度からしか見えません。これを少し動かすだけで見えるものが違ってきます。これだけで違う。さらに覗き込むように腰をかがめていくと、口の形とか発声とか「見られている」という意識を子どもたちは持つわけです。立ち位置、目線は指導にとってものすごく意味をもってくるのです。ですから、そういう先生方の目線の使い方、姿勢、机間巡視の仕方をもう一度、各学校内で研修をしていただければと思います。

それから、重要なのは表情です。よく言うのですが、緊張と集中は違います。緊張させると逆に子どもたちは集中できない。私が特にガッと見ると「え、隂山先生に指導受けるの…」という感じになります。もうそれだけで緊張してしまい、私が言っていることは頭に入っていかないでしょう。多少にこやかに「みなさん、すばらしいですね」と言いながらやっている方が、実は入っていくわけなのです。緊張ではなくて集中するということ。ですから、そのためにはリラックスするということを念頭においておきましょう。

助言②~教材について〜

これからのドリルタイムはどうしていくか。ここまで西川小学校が伸びた最大の理由は、「音読プリント2」を使ったことです。重要なのは教材なのです。西川小学校の子どもたちは基礎があるから難しい教材にも発展していけるのです。要は、子どもたちに与える教材というのは、子どもたちを伸ばしていくためのもので、より高度なものが求められてきます。この基礎力をより具体的な学力にしていくために、一体どのような教材を使っていくのか。このことを考える段階にきていると思います。

西川小学校の先生からの質問

Q1学力に差があって、クラスの課題についていけない生徒がいた場合、無理にでも同じ課題をやるべきか、その子だけレベルを落とすべきか、どうお考えですか?現在は、別のものをさせています。
A それでいいです。生徒の「みんなと同じものをしたい」という気持ちは大切にするべきですが、その子の「今の力を伸ばす」、ということを最優先に考えなければならない。そのため、その子にあった教材というのが大事です。無理をすると、「ついていけない」ということを学習してしまう。みんなと同じように努力をすることとのバランスをとることが大切です。ちなみに百ます計算の場合には、早い子と遅い子の差に、4倍の原則があります。宿題で考えると、人によっては少ないと感じたり、多いと感じたりする。これは当たり前のことで、継続することで鍛えられていきます。
Q2生徒が音読プリントを既に覚えて飽きてしまっているのですが、同じものを何度もするのが良いのか、違うものを出すべきなのか、どちらが良いでしょうか?
A 飽きさせてしまってはいけない、という考えは間違いです。飽きるまでさせなければならない。飽きるとは、完全に習得したということです。逆を言えば、飽きてないのならば、まだ習得しきってない。だから、子どもは求めるのです。私の中で、2週6週という原則があります。2週間で子どもの変化が顕著に表れる。例えば百ます計算だと、はじめ3分だったのが、1分30秒になったりする。あと2週間やるとタイムは伸びないが、完全に飽きるとこまで来て、安定する。そうすると2、3か月放置しても、2,3日ですぐタイムが戻ります。また、少し課題のレベルが高いときには、4週間で変化が起き、残り2週間で定着する。これが2週6週の原則です。

4 関連書籍・記事



モジュール学習による徹底反復の取組~西川タイム・ドリルタイムを通して~(福岡県 鞍手町立西川小学校)(徹底反復 学力向上セミナー inゆくはし)

5 関連イベント情報

スペシャル・セミナー 『地域を再生・活性化する「主体的・対話的で深い学び」とは?』

日時:2018年8月18日(土) 12:30〜16:50

会場:エル・おおさか 南館 南ホール(大阪府大阪市北浜東3-14)

内容
○菊池省三先生による講座「いの町・中津市ほかでの取組の現在」
○南惠介先生による講座「木を見て森を見て、そしてまた木を見る~全ての子供たちに小さな社会を紡ぐAL~」
○隂山英男先生による講座「福岡県飯塚市、田川市等における地域ぐるみの取組」
○講師鼎談「地域・学校を再生・活性化する、今後の教育のカタチを考える」

詳細https://www.kokuchpro.com/event/2d7fd7f0601b587906af123eff0d4aa7

さらに、本記事にご協力いただいた隂山先生が開催されるセミナーをご紹介します。
集中速習導入講座
日時:8月19日午前10時~12時
会場:隂山事務所(京都市丸太町駅東)
講師:岐阜市立梅林小学校長 堀江秀樹校長先生
お申し込み:kage@kageyamahideo.com

6 編集後記

大きな声でたくさんの暗唱をしていたこと、難しい計算を難なくこなしていたことがとても印象的でした。クラス全体の一体感、そして学校全体の一体感が伝わってきました。児童一人ひとりに寄り添っているので、生き生きとした雰囲気になるのだと思いました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 渡邉くるみ)

休み時間は無邪気に遊ぶ児童がドリルタイムでは集中する姿を見て、そのギャップに驚きました。「学習する場面ではメリハリをつけて集中する」という難しいことを難なく行っている児童の様子はとても新鮮に感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 村岡美紀)

人数の少ない学校にも関わらず、学校中に響き渡る音読の声に驚かされました。明朗活発に、まっすぐな瞳で学習する子ども達の姿が印象に残っています。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 田中真奈)

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