池島徳大先生に聞く!いじめ防止に役立つ対策実践特集②

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作成者:shunichi miyazaki (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事ではいじめに立ち向かうためにはどんな取り組みが有効なのか、奈良教育大学大学院でいじめについて研究されている池島徳大先生に現場で使える実践を取材しました。

なお、本企画は2016年11月20日(日)開催の、NPO法人ROJE「関西教育フォーラム2016 いじめ問題をもう一度~行政×学者×遺族で創る『新しい教育フォーラム』~」(詳細はこちら)とのコラボ企画となっております。

このインタビュー記事は三部構成となっております。

関連記事として、

もアップされておりますので、併せてご覧ください。

2 ピアサポートについて

——ピアサポートで仲間同士で助け合いの活動をするわけですが、「生徒が生徒を助ける」という関係性を作る過程ではどんな取り組みが効果的でしょうか。

「遊び」を取り入れることだと思いますね。人間関係を築くうえで、「遊び」というのは非常に大切です。小さいころに親御さんと遊んだ経験があると思いますが、口で説教されるよりも遊びを通して人間関係を築くことができます。

遊びには、不安感を和らげることができるという教育的意義があります。体を動かしたり、「楽しい」という情動反応によって、安心感を作ることができます。これを、専門用語で「不安の逆制止」といいます。不安の逆、つまり安心な状態にさせるために、不安とは逆のことを取り入れると不安が制止されるということです。

——子どもを安心させる環境を作るということですね。

そうです。その「不安の逆」というのが、体を動かすという身体運動反応と、楽しいという情動反応の2つです。これらがあれば、そうした環境が作れるというわけです。
 
遊びの教育的意義については、私は以前、遊戯療法(プレイセラピー)を研究し、実際に箱庭療法などの治療相談もしていました。遊戯を通して信頼関係が徐々にできあがり、相談者が安心して自分を表現できるようになっていきました
 
面談のような、言語でのやりとりの場合は、知的にある程度発達している段階からでないとカウンセリングとして取り入れられません。小さな子どもの場合は人形などのおもちゃを使った方が関係性を築きやすいですね。
 
安心感を持つためには関係性を築かなければなりません。私も講演やワークショップではエンカウンター的な遊びを取り入れるようにしています。受講生同士でやってもらっています。

——いわゆるアイスブレイクやゲームといったものを取り入れるということですね。具体的なゲームの例を1つ教えていただけますか?

それでは、2人でやってみましょう。

身体的接触をともなうゲームです。

「馬と牛ゲーム」

①まず、ジャンケンをします。   大きな声で、相手の顔をみながら行いましょう。   →勝った人は馬に、負けた人は牛になります。

②真正面で向かい合い、右手と右手を軽く握手します。

③司会が「馬」と言ったら馬の人が、「牛」と言ったら牛の人が、空いている自分の左手で相手の右手の甲を叩きます。

④叩かれる側の人は、叩かれないように、左手の手のひらで自分の右手の甲を守り、防御します。   →司会が馬や牛以外の言葉もかけ、お手付きを誘うのもいいでしょう。

⑤「馬」と「牛」の入った創作文を読み上げ、ゲームを進めます。

創作文の例:

「昔々、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんの名前は馬太郎、おばあさんの名前は牛子。おばあさんの牛子は川へ洗濯に行きました。牛子が川で洗濯をしていると、川上から何やら変なものが流れてきました。牛子はなんだろうと思って、それを持ち帰りました。やがて馬太郎が帰ってきました。「ねえねえおじいさんおじいさん」「なんだい牛子」「今日、川で洗濯をしていると何やら変なものが流れてきましたよ」「じゃあ切ってみよう」馬太郎は台所へ行き包丁を取ってきました。馬太郎が切ってみると、変なものが出てまいりました。「なんだいこれは、顔が長いから馬かな?角があるから牛かな?馬かな?牛かな?」これは本当にうまいはなしだな。」

学級という緊張感が高い場所において、不安な気持ちを安心感に変えたいですよね。

こういったゲームを行うことで、不安の逆制止ができるわけです。遊びには、身体を動かしたり、楽しんだりといった、不安を制止できる要素がたくさんあるのです。

——こうしたゲームを通して、学級の雰囲気づくりができそうですね。ゲームを導入する際の注意点はありますか。

まず大切にすべきは子どもを尊重する態度です。例えば、先ほどのゲームでいうと、人間関係ができていない状態で最初から手をつなげというのはやりにくいですよね。不安な気持ちを安心に変えるためには「楽しい」という気持ちになることが大切なのに、やりにくいことを強要して、「君らなんでしないんだ」というような態度でいてはダメです。その場合、別の方法を考えることが必要です。

例えば、思春期になってくると、男の子と女の子が手をつなぐといった身体的接触のある行為は抵抗感を持たれるので、色塗りをしてなぜその色を塗ったのかを紹介するワークや、ある図形に線を付け加えて、同じくなぜその線を加えたか紹介するワークなど、紙の上でできるものにするという工夫ができます。

また、イギリスでは週一回サークルタイムというものがあります。たいてい月曜日の朝のことが多いようですが、学級によって様々です。大体20名くらいで輪になって、子どもたちが話をします。人形を使って行うのですが、人形を受け取った人にしゃべる権利があり、持っていない人は聞く義務があります。すぐに話すことが思いつかない場合はパスする権利もあります。相手を尊重してあげることが重要です

話題としては、例えば自分の好きなもの、嫌いなものをそれぞれ言ってくださいといったものがあります。「僕は、阪神タイガースが大好きですけど、ピーマンは嫌いです。」といった具合です。その後、それぞれの好きなものと嫌いなものをまわりの人が思いだして言ってあげます。正解を言ってもらえたらうれしいですよ。絶対誰かが覚えてくれているんです。そうしたことの積み重ねで、個々の存在感を作ってあげるんです。

もちろん、ワークが嫌いな子もいます。みんなの前で自己開示するのは緊張もあるし、すぐに好き嫌いを言えと言っても少し時間かかったりします。体験をどんどん積ませていってあげて、不安や緊張を取り除いてあげましょう。対人関係はそうした遊びを通して慣れていくものなんです。だから始めからあまり強要しないほうがいいですね。

ゲームなどを使ってピアサポートを導入する準備をする時は、もしクラスの雰囲気が固ければ、強要せずにゆっくり導入していくことが大切です
 

——ピアサポートを導入する際、そうした雰囲気づくりやルールづくりといった準備が必要ですよね。その中で、例えばできない人に目を向けすぎてしまったりするといじめを助長する危険性があると思います。実践の準備段階でいじめを助長しないために教員が気を付けるポイントはありますか。

集団の中の一人の子が浮いてしまうということは起こり得ます。先生がある一定の価値観で「先生の話をしっかり聞け」と、集団を相手に話してしまい、一人一人の子どもの気持ちを読み取れていないときに起こりやすくなりますね

例えば、勝手なことをした子どもに対して、その勝手な行動を許してしまうと、周りの子どもたちに注意ができなくなってしまうという意識が高かったりします。つまり、人と違うことをした子どもに対して、日本の場合は制裁を加えやすいんですね。

ところが、その子が人と違う行動をとってしまうのは脳の機能障害、つまり衝動性を抑えるものが足りていないためという場合があります。薬を飲めば一時的に収まるということがわかっていれば、個別支援が十分に可能です。

こうした子どもに対して注意しすぎると、その子は自分が先生に注意されやすい子どもだと自分のことを否定的にとらえてしまいます。そして周りの子も、その子のことを注意されやすい子だから、要注意だと考えるようになります。子どもが、いじめられやすいポイントを持っているかどうかということがポイントなんです。

——その子が人と少し違った行動をとってしまう原因が何なのかをきちっと理解したうえで教員は指導すべきなんですね。

そういうことです。私が現職で教員をしていたひと昔前にはそんな考えはありませんでした。古い考えに基づいてよく怒っていましたね。教室をうろつく子どもにもよく怒っていました。しかし、臨床心理などを学び、脳の機能障害を持つ子どもの場合は、薬を飲めば収まるといった事実を知ってから、接し方が変わりました。薬で収まっている良い状態の時にきちんと褒めるといった環境調整を行おうといった具合に、道筋が見えてくるのです。
 
道筋がみえない状態では、教師は自らの今までの経験してきた枠組み以外で状況をとらえる術がなく、そうした子どもに対しては怒るという指導方法しか持っていませんでした。怒ってもうまくいかなければその子の親を呼び出して、「きちんとしつけしてください。こんな子を持ったのは初めてです」と言うケースもありました。これでは何の解決にもなりません。学校と家庭の間の信頼関係が壊れるだけです。ひと昔前にはこういった事例があったように思います。

脳の機能障害となると、その子どもが自分でなんとかできる問題ではなくなってきます。そこに教師の専門職たるゆえんがあると思います。医学の力も借りつつ、ピアサポートを通して子どもの持っている可能性を見出し、引き出していって支援をしていくということが必要です

3 いじめられやすさを持った子どもへの対応

——脳に障害のある子への対応についていまお話をいただきましたが、他にもいじめられやすさをもった子どもたちがいると思います。そうした子への対応についてもう少しおしえてください。

 
特別支援を必要とする子は、いじめられやすさを持っていますね。これをヴァルネラビリティー(攻撃誘発性)といいます。だけど、だからといっていじめていいということではないですよね。。学校の先生が難しいゆえんはそこにあり、学級の中で授業はしなくてはならない(教育指導)上に、ちょっと教室がざわついたり、勝手にうろうろする子が出たりした場合には、きっちり指導・注意する必要も出てきます。

でも、その指導が届きにくい子もいるんです。その代表例が、ADHD(注意欠陥多動性障害)のお子さんです。通級での指導を受けているお子さんも最近では多いですね。ADHDは脳の機能障害だということが約30年前には言われているんですが、日本の場合は、そうした大脳生理学の知見もなくこの子の性格の問題、あるいは親のしつけの問題という風にとらえられ、お叱りの対象になっていた。だからそうした子も叱られて当然だと先生も思ってるわけです。

——障害ということへの理解が無かったということですね。

そうですね。学級の中で先生が叱ることによって、周りの子たちはADHDの子を「落ち着かない悪い子だ」「先生の云うことを聞かない悪い子だ」と思って、疎外し始めます。叱ることを通して攻撃が誘発されているんです。そうした事態を避けるというのがものすごく大事な時代になってきた。だから、集団の中でそうやっていじめられる子を生まないための知見や関わり方を専門職として教師が身に付ける必要がありますね。

教師は集団全体も見なくてはいけないし、個別支援もやらなければいけないし、大変ですよ。不登校の子や、いじめられている子もいるかもしれません。その子どもが浮かないようにするための指導をしなくてはいけません。担任にしかできない仕事です。スクールカウンセラーには厳しい業務なのかもしれない。教師の責務ですね。

他にも、身体に障害を持っている子や転校生、そして帰国子女はヴァルネラビリティーを持っているといえます。特にアメリカで自己主張を学んできた子ども。教室の中でじっとしていなくちゃならないし、手をあげたら先生が指名するまで待っていなくてはならない。指名される前に発言すると、勝手に言うなと逆に叱られる。お前うるさい、黙っとれよ、と他の子どもから言われる。

先生は、集団の中で浮いている子が出てきたとき、いかに指導観をもってきちっとやれるかが大事です。

——自分が問題を抱えていると気づいていない子どももいるかと思います。例えば、指しゃぶりをしてしまう子どもにそれを問題行動と意識してもらうことは必要でしょうか。必要だとすればどうやって意識させればいいでしょうか。

問題行動には自然とやってしまうものもありますよね。自然とやってしまう行動が自覚されたとしても、それがダメだと気付いて自分で改善するというのはなかなか難しいですよね。たとえば、指しゃぶりをなくすために、小さい時に指にからしを付けたりするという方法もありますよ。暴露療法(エクスポージャー療法)といいます。不潔恐怖のある場合に少しずつトイレ掃除をさせてみるとか、そういったアプローチですね。

しかし、そんなことを導入するのではなくて、むしろ指しゃぶりといった否定的行動を忘れてしまうほどに、別の代替行動、無我夢中になってやってしまうような行動をするように仕向ける、そんな活動を導入することによって、いつのまにかしなくなっている。そういう実践が良いかと思います。例えば手を使う遊びなどをずっとしていたら、しゃぶる時間もないですよね。それでいてやっていて楽しい。

「君は何をしているんだ」と問題行動そのものを指摘するのではなく、楽しい活動をさせる、あるいは満足感を与えることが重要です。そうすることによって、問題行動は減少していくんですね。こういう活動は専門用語でサブリメーション(昇華)といいます。みなさんもストレスがたまったときに好きなことするでしょ。おいしいケーキ食べるとかね。

——先ほど個別支援を行うということがお話に出てきたのですが、個別支援というのは、授業の後にやるのですか?

後でやってもいいし、その場で行うことも重要である場合があります。例えば、注目を浴びたいがために、授業中静かな時にまわりを笑わせるようなことをする子もいますよね。ここで「うるさい」と注意すると、後々おかしなことになる可能性があります。そういう行為に対しては、「そっか~」ぐらいの反応で返し、放っておくのが一番いいということもあるでしょう。

こんな事例もあります。春の遠足の話をしますというと「秋の遠足はどこに行くんですか?」と聞いてくる。ここで、叱りたくなるかもしれないけれども、この子はアスペルガー症候群の疑いが少しあるからということを念頭において、「秋の遠足はちょっとそこの袋入れておいてくれる?」というふうに切りかえすという判断もできるでしょう。

「今日の5時間目は読書の時間です」と言ったとたん「先生、図書室の鍵いつ開けるんですか」と言う生徒に対してはどうでしょう。この発言自体は、すごくいいことですよね。だから「よく気づいたね、偉いね」とほめてあげる。

つまり、その行動や発言を先生がうまくつないであげる、あるいは「その話はあとにおいておきましょう」といった具合の無視をするのです。ここで「いちいちそんなこと言うな!」と否定をしないことが重要です。意図的に無視する。これを消去手続きといいます。問題行動にたいして、注意をし続けていると、「なんでこんなことしているんだろう」といった否定的な感情が生まれやすくなります。なので、必要に応じて無視するべきなのです。

教育は教えて指導することがすべてではなく、問題行動についてはそのまま意図的に無視をしてあげるという判断が正しいこともあります。それで、いい行動をしたときに褒めてあげるのです

4 編集後記

本記事では、池島先生へのインタビューの中で「ピア・サポート」に関してお話しいただいた部分をまとめております。
悪いことをしたときに怒るのではなく、いいことをしたときにほめることで、子どもに否定的な感情を与えることがなくなります。
こういったように、子どもを傷つけることがないということがピア・サポートの最も良い点ではないでしょうか。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 宮崎俊一)

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