小学校1年生のためのくりさげ・くりあげの定着方法 (岡篤先生)

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作成者:井上 渚沙 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~超スモールステップ計算~89号~93号」から引用・加筆させていただいたものです。
 皆さんが最初に算数と出会ったとき、どのように「足し算」や「引き算」の考え方を理解しましたか? 今回は初めて算数を考える小学1年生の「くりあげ」「くりさげ」の考え方定着方法について、岡篤先生の指導方法と体験談をご紹介します。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。
http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

また、関連記事として、下記↓リンクをご参照ください。
サクランボ算 ~たし算・ひき算の基本

2 実践内容

 くり上がり・くり下がりと10の分解合成

朝の準備はそれなりにできるようになりました。1年生の朝の準備(前半)しかし、1学期の時点で課題が明確になっていることがありました。
 それは、2学期に出てくる、くりあがり・くりさがりの計算です。このときは、4回目の1年担任でした。
 過去の経験から、10の分解・合成がスムーズにできないと、くりあがり、くりさがりの計算も本当にできたことにはならないと分かっていました。
「8+3」をするときは3を2(8と合わせて10になる数)と1に分解し11という考え方が必要になります。これができないと、いつまでも「8,9,10,11」と数えたしで答えを出すようになり、これでは、桁数が増えたり、+9などになると難しくなってしまいます。

 2学期の困難が5月に分かる

前回、1年生を担任したときは、このことが分かっていたので、1学期の段階である程度力を入れて、10の分解合成の習熟をしました。それでも、いざくりあがり・くりさがりに入るとまだ不十分な子がいて、自分の甘さを反省したものでした。今回の1年生にも10の分解合成をくり返し練習させていました。しかし、極端に苦手な子がいて、なかなか定着が見えません。
 まだ5月ですが、このままいけば、くりあがり・くりさがりでこの子が苦労するのは明らかです。もちろん、くりあがりのない足し算なども苦手で、お母さんからも
「宿題を泣きながらやっているときもあります。」というような話を聞いていました。

 いつまでも練習する覚悟を

カードを使った練習(「6」を見せたら、「4」と答える)は、1ヶ月以上続けました。
「5」で「5」は一番最初に覚えることが出来ました。しかし、他の組み合わせはなかなかです。単に5種類の組み合わせを覚えるだけのことです。毎日続ければ、いずれできると思っていました。しかし、やはりこれが苦手な子にとっては難しい課題ということです。一つ覚えても次の日には、また忘れているということが繰り返されました。
 以前の失敗を思い起こし、このカードによる練習を絶対やめないという決意をしました。できるようになるまでやり続けるという覚悟です。

 見通しはなかった

「見通しがあるとがんばれるもの」と私は考えています。逆にいうと、子どもの指導もどれだけやったら成果が出るか分からないことに関してはなかなか意欲が出ないものです。
 10の分解・合成が覚えられない子への指導も見通しがあるとはいえませんでした。たった5種類の組み合わせを一つ覚えては忘れ、また覚えては忘れを繰り返していました。ただ、過去三回の1年担任の経験から、「このままではこの子は、絶対にくり上がり・くりさがりで『数えたし』しかできない。くり上がりのための補助記号(10の固まりを使う)は、かえって混乱するだけのものになってしまう。」ということは分かっていました。

 腹をくくってやり続ける

10の分解・合成は、使用していた啓林館の年間指導計画では、5月に1時間ほどでやることになっていました。たしかに、それできる子もかなりいるでしょう。しかし、この内容は、2学期に出てくるくり上がりまでに、十分に定着させておきたい内容です。
 教科書の内容とは関係なく、算数の時間のはじめは、カードを使って、10の分解・合成の練習をゲーム感覚ですることにしました。個別での練習も多少しました。ただし、他にも遅れがちで休み時間などを使ってやるべきことは色々とあり、できるだけ一斉授業の中にシステムとして取り入れることにしました。他の子は、数回やれば覚えてしまっています。とはいえ、大切な内容だけに、みんなで復習を繰り返すことは無駄にはならないでしょう。特に苦手な子が目につきやすいものですが、その次くらいに苦手な子にとっても実はよい復習になっているかもしれません。
 ただし、組み合わせを答えるだけでは飽きてしまいます。わざと指名する順番を変えたり、カードをわざと逆さまにしたり、一部分を隠したり、別の数に関するゲームと組合わせて、変化をつけることにしました。もちろん、一番のターゲットである、まだ覚えられていない子には、ふつうの向きで、しかもそのとき重点的に覚えさせたいと思う数字をできるだけあてるようにしました。

 半年後に成果が! 

一進一退を繰り返す中で、いつになったらスムーズに10の分解・合成がいえるようになるのかは見当もつきませんでした。ただ、わずかな歩みであっても着実に前進はしているということは感じていました。3ヶ月が経ち、1学期の終わりには一応、言えるようになりました。やはり、努力しただけのことはありました。
 しかし、夏休みがあります。もちろん、2学期は0からの覚悟で同じようにカードでの練習をスタートしました。覚悟ということは大切で、「0からやり直しだ。」と思ってみると、2学期のスタートは思いの外順調でした。少し練習すれば、すぐに1学期後半の状態になり、間もなく、すらすらと言えるようになりました。

 いよいよくり上がりの計算

10月に入り、いよいよくり上がりの計算に入ることになりました。10の分解・合成は全員ができるようになっています。とはいうものの、1学期はくり上がりのない計算でも宿題ができなくて泣いている子もいました。補助記号や『数えたし』でないやり方を学習する過程で、混乱することは十分予想できました。

 補助記号の徹底

まず、補助記号の徹底から始めました。補助記号の一つ目は、「スマイル」です。
 「7+4」であれば、7の下に10の補数の3を書いて7と3の両方を○で囲むようにします。記号の呼び方はそのときの子どもに考えさせるので、毎年違います。
 このときは、クラスのテーマをスマイルとしていました。そこで、子ども達は○を見て「スマイルがいい!」と言い出しました。私としては、「縦長の○なのになあ…」とも思いましたが、ここは子ども達の意見にゆずることにしました。 
 二つ目の記号は「さくらんぼ」です。
 「7+4」の「4」から7の下の3をつなぐ短い線を引きます。もう1本の線を4の真下に引きます。
 4は分解して3と1に別れるので、その真下への線の先には1と書きます。これは、枝分かれしているので、「さくらんぼ」です。この記号は、先に塾などで習っている子は違う呼び方、記号を習っている場合もあります。記号なしでさっと答えが浮かぶ子もいます。それでも、「先生が『自由にしていいよ』というまでは、なくてもできる子も、ぜったいにこれを使ってね。」と約束します。宿題であっても、テストであっても必ず書かせます。もし、補助記号なしで書いていたなら書き加えさせます。 「できる子はなしでもいいよ。」とすると、補助記号がないとまだできない子も他の子につられて、「ぼくもなくてもできる。」と言い出すことになります。結果は中途半端な定着に終わってしまいます。そうなると、補助記号を指導することがかえって混乱の元というようなことになってしまいます。 

 10の分解合成の威力発揮

○で囲んだ部分は必ず10になります。さくらんぼの右がわの数字を□とすると、「じゅう□」が答えになります。ここで、1学期から10の分解合成をやりつづけた威力が発揮されました。
 あれだけ、計算が苦手で、10の分解合成も覚えられなくて苦労した子がこのときには、すらすら言えるようになっていたのです。そうなると、スマイルを書けば、すぐに書き込む数字は分かります。さくらんぼも問題なく書けます。
 つまり、答えを出すために必要な、以下の4つのうち、3つまではさっと書けることになります。
・スマイル
・10の補数
・さくらんぼ
・足す数を分解した数
 勢いということは大切で、こうなると内心、心配していた足す数の分解も難なく書くことができました。
 過去の1年担任の経験では、けっこう難しいと感じていたくり上がりの計算が全員実にスムーズに進んだわけです。一番計算が苦手で、10の分解合成も覚えられなかった子はそこまで大変だっただけに、「くり上がり、かんたん!」とテンポ良くできることに大喜びでした。「家でも『けいさん、とくいになった』と喜んでました。」と後でお母さんから感謝の言葉もいただきました。
 この指導に関しては、以下の点がポイントでした。
5月に出てくる10の分解合成が10月のくり上がりにとって重要ということが分かっていた
10の分解合成は、徹底できていないまま進みがちだった。
苦手な子もできるまでやると覚悟してやれば半年でできた。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
 1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

今回の記事は、算数を理解するときに最初につまずきやすい、「くりあげ」「くりさげ」の定着方法についてでした。いかがでしたでしょうか?
「くりあげ」「くりさげ」は算数の中で、小学一年生がもっとも定着の必要なところです。ここでつまずくと、今後算数を理解するときに混乱がおきてしまいます。根気よく丁寧に指導することが大切だと伝わってきます。
 さらに夏休みを挟んでしまうと、あやふやに入れた知識はおろそかになってしまいがちです。苦手な子へのフォローはもちろん、得意な子にも、丁寧に学ぶよう促すことが重要だと改めて感じました。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 井上渚沙)

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