隂山英男氏インタビュー 【関西教育フォーラム2018】

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作成者: miyu (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2018年11月25日に開催された関西教育フォーラム2018「学校×塾×家庭で対話する"その子らしさ"を引き出す新時代の教育」後に、登壇者の隂山英男氏(陰山ラボ代表(教育クリエイター)、NPO法人日本教育再興連盟代表理事)にお話しいただいた内容を編集・記事化したものです。

隂山氏には、フォーラム内でも特に強調されていた基礎定着の徹底Society5.0の提唱に伴うこれからの教育についてお伺いしました。

2 インタビュー

 「子どもを伸ばす」ために

ーー「子どもを伸ばす」ために、学校にしかできないことは何でしょうか。

小学校であれば、1年生から6年生まで毎日子どもが通う場所という面を活かして、その学年に必要とされるものをきちんと積み上げていくことができるということです。

ところが現状では、そこのところに抜けが出てきてしまっています。フォーラム内でも言及された、「8+7や7+6が分からない」といった具体的な事例を拾うことができないのもその一つです。今回のフォーラムでは、そうした学校の弱点を家庭や塾で個別に補っていく必要があるというところが見えたのではないでしょうか。

ーー子どもたちを伸ばすために教員が持つ必要がある、洞察力・観察力を身に付けるには、具体的にどうしたらよいのでしょうか。

坪田先生もフォーラム中に話されていましたが、授業の様子をビデオに撮って、教員が何秒間子どもを見ているかをチェックすることです。公立学校でそうした研修が行われていると聞いたことがありますか?はっきり言って、今の教育研究自体が間違っていると思います。間違った方法をいくらやっても意味がありません。

 基礎学力の重要性

間違った指導を受けて「できない」という経験を際限なく積み上げて高学年になってしまった子どもたちは「もう無理」という言葉を口にしてしまいます。「もう無理」と思わせないためには、その子どもたちができるところまで、高校生であっても百マス計算まで戻すことが必要なのです。

しかし、坪田先生も佐藤ママもおっしゃっていましたが、そこまで戻すにはとても時間がかかってしまいますし、徹底してやることが求められるのです。
私は、そうした話が教員側からほぼ出てこないことに危機感を覚えています。

ーーその学年で勉強する項目が既に決められている学校の現場では、「できるところまで立ち戻る」ことが難しいのではないでしょうか。

はっきり言ってしまうと、それは嘘です。優先順位が違うだけの話です。「今はこの授業を終わらせなければいけない」という考えが教員の頭の中で優先されているからそうなってしまう。
むしろ、その授業を進めるためには一旦立ち戻らなければならないということが理解できて、優先順位を立て直すことができれば、どんな時間だって作ることができるはずです。

今日登壇なさった坪田先生や佐藤ママは、時間が有り余っている中であのような指導を進めたのでしょうか。違いますよね。例えば、佐藤ママであれば、覚えさせたいものを壁や天井に貼るといったように、いかに少ない時間の中で効率よく教えることができるのか、方法を工夫している。学校はそういった工夫をできているでしょうか。

この状態で学校の働き方改革をしてしまうとどうなるでしょう。ただ働く時間を縮めるだけでは、できない子がもっとできなくなってしまいます。基礎学力もつかなくなってしまうでしょう。

ーー勉強を苦手としている子どもに読み書き計算といった基礎的な学習に取り組んでもらうことは難しいのではないでしょうか。

それは1,2年生のときの指導がなっていないと思います。

1,2年生のときであれば、子どもの間にそれほど大きな差はありません。例えば3年生の筆算ができない子どもたちは、1年生のときの繰り上がりをきちんと理解できていないのです。

フォーラム中に佐藤ママは自分のお子さんが「8+7と7+6ができていないことに気が付いた」と話されていましたよね。これは、学校教育側から見ると「この子は繰り上がりができません」あるいは「繰り上がりが大体できます」になってしまうのです。

具体的な8+7や7+6に気が付くことができないのが学校教育の穴です。
こうした細かい部分を改善する話は学校現場であまり聞いたことがありません。ですが、子どもたちを伸ばすときに最も重要なのはそこだと思います。

やはり、東大理三に我が子を受からせる。偏差値30の生徒やド田舎に暮らす子たちを名だたる大学に合格させる。そこに共通しているのは基礎の徹底なんです。しかし、学校はそうした基礎学力を無視して、アクティブラーニングなどの新しい先進的なものばかりを取り入れているように思います。
小手先だけの指導法に走ってしまっては、結局悪循環に陥ってしまいます。

 Society5.0とこれからの学校教育

ーーこれからの学校の役割、学校に求められるものにはどのようなものがあるとお考えですか。

Society5.0では、いわゆる個に応じた教育を徹底していく、ということが言われています。

一方、指導要領は集団教育を前提として成り立っており、学年ごとにやらなければいけないことが決まっています。

こうして集団教育を前提としてきたものを完全なる個別教育にしていくといった流れからは、いわゆる今までの日本で意識されてきた学校制度を無くして、別の教育システムに変えていく、という考えの芽生えが見えてきます。

なぜそこまでのことが言われるかというと、現在の学校教育では、全体的に各個人に応じた指導ができないからです。本当はできるのですが、現状としてできていません。
では、できないようになっている理由は何か。それは、既存の教職員の意識や仕組みです。ですから、そういったところの解体・再編までひっくるめた改革が提起されてきているのです。

しかし、ここで問題となってくるのは、解体・再編の方向性が定まっていないという点です。既存のものを解体して新しいものに組み上げていくのは非常に難しいことです。なにかをモデルにしながら全体を変えていくのとは訳が違います。当然のことながらこの過程には、いくつもの試行錯誤が必要とされます。つまり、多くの失敗を重ねて正解を見つけるまでに膨大な時間がかかる可能性があるということなのです。

こうした背景から、Society5.0をめぐる議論はそう簡単に進みません。ですが、今後そうしたスクラップ&ビルドに向けて大きな力学が学校現場に働いていくのは間違いないでしょう。

ーーその他のSociety5.0の問題点にはどのようなものがあるとお考えですか。

Society5.0の中には、早期卒業や飛び級を一般化する、といったことが書いてあります。では実際にある生徒が中学校を2年で卒業するとしましょう。その生徒はいったいどこに行くのでしょうか。

現在、中学校と高校では別のシステムが構築されています。そのため、早期卒業や飛び級を可能にするには、その全てを一気に変える必要が出てくるのです。

現行のような指導要領を無くして子どもごとに違う対応を……としている国も実際にあるのですが、結果的に、全く基礎力の身に付いていない事実的な貧困層が生まれてきています。「自由化」という言葉には、勉強をしなくてもいい自由化も含まれていますからね。

ーー「学校教育でも個別に見たいのに見ることが困難な状況がある」ということについて、どう思われますか

キーマンは校長先生です。学校全体で穴がなくなるように教育をしていく必要があるからです。

ところが、自分の学級や教科については考えても、学校全体をマネジメントして子どもを育てていこうと考える教員は少ないように思います。

坂本先生も基調講演で話されていた通り、子どもの成長を一番阻害しているのは、学校の生産性のなさだというのは明らかです。それを個々の学級の中で変えていくのもいいのですが、根本的な解決のためには、学校全体で変えていかなければ意味がありません

指導の工夫によって、半年もあれば十分子どもは伸びるのです。過去に隂山メソッドを導入した学級がそれを証明してくれています。学校の持っている組織力は、思っているほど脆いものではありません。坪田先生も学力が最下位レベルの子どもを、一年間で帝国大レベルに合格するまで上げたということをおっしゃっていたではないですか。要するに、正しい学習方法をとればいいだけなのです。

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【講演録】

【パネルディスカッション】

  • パネルディスカッション第一部 (準備中)
  • パネルディスカション第二部 (準備中)

【フォーラム後インタビュー】

また、この記事は関西教育フォーラム2018の連携企画となっております。以下の記事も併せてぜひご覧ください。

5 編集後記

基礎学力の徹底。その重要性を誰もが感じている一方で、集団指導をメインとした学校教育では軽視されがちであるとのお話は、今回の事後取材のみならずフォーラム内でも強調されていました。現在進められている「主体的・対話的で深い学び」とうまく両立させ、よりよい教育を行うにはどうしたらよいのか、これから熟考していきたいと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 村上達也、粒來珠佑)

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