【隂山英男先生基調講演】ROJE関東教育フォーラム『どうなる?大学入試~改革延期の今、何が必要か~』

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作成者: ROJE関東教育フォーラムさん

1 はじめに

本記事は、2020年7月12日にYouTubeでライブ配信されたROJE関東教育フォーラム『どうなる?大学入試~改革延期の今、何が必要か~』内で行われた、隂山英男先生の基調講演を記事化したものです。

基調講演内で、隂山先生は大学入試改革と英語教育の変遷についてお話しされました。 

※当フォーラムでは、新型コロナウイルスの感染を予防するため、適切な対策を講じています。

ROJE関東教育フォーラムの様子はこちらからご覧ください。

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2 基調講演

はじめに

最近では、大学入試を巡る問題に限らず、突如として巻き起こってきたコロナ禍の問題が複雑に絡まり合って、社会全体に大きな混乱を生んでいます。そうした流れの中で大学入試でも英語における民間試験の導入が延期されました。また、記述式の問題についても様々な議論があります。さらに、大学入試の日程までもがコロナの影響によってどうなっていくのかわかりません。今のところ文部科学省は予定通りの日程を確保しつつ、追試をする可能性について言及していますが、果たしてそれが適切であるかどうなのかということは実際にやってみないと分からないという状況であります。
       

大学入試改革

民間英語試験の延期について

2020年は大学入試の改革が実行される年です。私自身も大学入試においては1点刻みの競争試験ではない形にする、あるいは多面的な受験生の可能性を試すということを期待していました。しかし、実際これが動き始めた途端に、英語の民間試験の導入が延期されたことは大変な衝撃でした。何十年も教育に携わってきましたが、これほど大きな改革が受験の申請が始まったあとで延期されるようなことは過去に前例がありません。さらに、その延期のきっかけの一つは、実際に受験をする高校生がネットなどの様々なメディアを通じて異議を申し立てたことにあります。これは行政手続き的にみても異例のことであり、今後の大学入試制度がどうなるのかについて、受験生を非常に不安にさせてしまいました。自分の子どもたちの大学受験に関わってきた身として、受験する立場の人が困るのは「変わる」ということだと思います。制度がコロコロ変わるとなってくると、準備のしようがありません。きちんと勉強しているということと、それをテストで成果として出すということは実は次元の違うところがあります。皆さんも一度は経験したことがあるようにテストで良い点を取ることができるときは、単純に勉強したときではなく、テストに問われるものを十分考えながら準備をしたときではないでしょうか。これは大学受験にもそのままあてはまります。大学入試が大きく変わる場合には、十分な猶予期間が与えられ、十分な準備ができ、なおかつ公平・公正さのような、基本的な観点が十分に担保されていなければいけません

コロナ禍の大学入試

コロナ禍の大学入試については第2波、第3波があり得る中で日程も揺らいでいるというのが実態でしょう。全国の高校関係者の中には、開き直って予定通りの入試をするという線を出す人もいるようです。私もそれに賛成です。様々な変化に対応していくことは受験する側にとって非常に難しいです。そして、それを準備する高校も、受験票に関する事務的な問題などがあり、大変です。ですから、この問題についてはふりだしにもどる形となってしまいましたが、今一度考える際にはやはり受験する側の立場や考えを十分考慮したものにすることが必要です。

英語教育の変化について

大学入試の変化に伴う英語教育の変化

大学入試が英語4技能に変わる、そして英語の民間試験を導入するとなると、当然、それまでの高校、中学校や小学校の英語教育にも大きな影響を与えます。小学校5、6年生の小学校英語教育義務化も2020年から始まりました。しかし、コロナ禍でいきなり休校からスタートした関係で、やはり学校現場においては非常に心配されているということが浮き上がってきました。
 最も大きな問題は、小学校の英語がどういう形になっているのかを多くの方が知らないということです。それ以前の小学校英語では、子どもが英語を苦手にならないようにすることが意識されてきました。だから、小学生にとっては書くという作業があまりにもハードルが高いので、少し慎重に行おうということになっていました。そこで、英語の導入に当たっての試行段階では、英語の歌を歌ったり、チャンツをやったり、ダンスをしたりというように楽しく英語を学ぶということに重きがおかれていたのです。一方、新学習指導要領に基づく英語の授業では、会話の中で動詞の過去形を用いた文なども扱うことがあり、小学生にとっては難しい内容を学習することになっています。

小学校英語の負担増加

さらに、もっと分かりやすく見ていくためには、子どもたちが学習する英単語数に注目すればよいでしょう。実は小学5、6年生の英単語数は、指導要領によって600~700語と規定されています。中学校においては1600~1800語、そして高校では1800~2500語ということで、小学校5年生から高校までの間に、約4000~5000語の英単語を学習するという過程になっています。これを2000年のゆとり教育の頃と比べてみると、当時は中学校3年間で900語、高校3年間で1300~1800語を学習していました。このように、高校修了までに約3000語の英単語を学ぶようになっていましたが、これが来年からの中学生は高校修了までに約4000~5000語と、倍近い数の英単語を学習することになっていきます。そして4技能のテストがあるということになると、単に英単語を覚えるというだけではなくて、発音をしたり聞いたりということも必要になります。さらに、民間試験を導入することになると、早くからそれに対する準備もしなくてはなりません。このようなことから、私が言いたいのは子どもたちの学習に対する負担が大きく増えていくということです。
 

おわりに

大学入試という大きな関心事をベースにしながら、学校教育全体をもう一度見直して、本当にこれで子どもたちは健全に成長していけるのか。言葉だけの教育改革ではなく、本当の意味で子どもたちと日本の社会が明るく豊かになっていく方向になっているのか。このフォーラムを通じてみなさんと共に考えていきたいと思います。こうした子どもたちの負担、学校の負担、先生方の負担を考えながらこのフォーラムを聞いていただき、さまざまなことをお考えいただければと思っています。

3 プロフィール

隂山英男先生

陰山ラボ代表(教育クリエイター)/一般財団法人基礎力財団理事長/NPO法人日本教育再興連盟代表理事
1958年兵庫県生まれ。岡山大学法学部卒。反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「陰山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月、尾道市土堂小学校校長に全国公募により就任。2006年4月から2016年まで、立命館大学教授を務める傍ら、立命館小学校で副校長、校長顧問を歴任。
現在は陰山ラボ代表、一般財団法人基礎力財団理事長、NPO法人日本教育再興連盟代表理事、徹底反復研究会代表を務める他、全国各地で学力向上アドバイザーを務める。
内閣官房教育再生会議委員、文部科学省中央教育審議会特別委員、大阪府教育委員長などを歴任。

※プロフィールは2020年7月現在のものです

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