倉本龍先生インタビュー②「教職員が居心地よく働くには?」(N高等学校・S高等学校)

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作成者:miku kiyokawa (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2021年3月12日に行われた学校法人角川ドワンゴ学園N高等学校・S高等学校(以下、N高等学校・S高等学校と表記)倉本龍先生へのインタビューを編集したものです。

インタビューでは、主に倉本先生の教育観とキャンパスの運営で大切にされていることついてお話を伺いました。今回の記事では、倉本先生がキャンパスの運営で心掛けていることや、若手の教職員の研修・育成についてご紹介します。

本インタビューは2部構成になっています。ぜひ他の記事もお読みください。

こちらの記事では、倉本先生が自身の教育観として実践されている、「わたしのプロジェクト」を持つことと「遊ぶように学び、学びながら遊ぶ」ことの重要性についてご紹介しています。

2 インタビュー

N高等学校・S高等学校以前のご経歴

———倉本先生のこれまでのご経歴を教えてください。

私はこれまで色々な学校で教員をしてきました。大学院修士課程で教育学を学んでから、初めてフルタイムで仕事をしたのは愛媛県の通信制高校でした。そこには、過去に社会からドロップアウトしたり、不登校になったりしていた生徒が多くいました。自分でも「人生終わった」と思っているような生徒たちが、全力で高校卒業の資格を取ろうとギラギラした目で学んでいる姿は今でも忘れられません。この学校で過ごした日々は私の教員人生の中でとても貴重な経験ですし、生徒たちからたくさんのことを学びました。

その後は、私立の京都橘中学校・高等学校で物理の特進コースを受け持ち、教務の仕事をしました。教務の仕事では、いわゆる「デジタル屋さん」として、学校のデータや成績情報の管理などをしました。そのときに、カリキュラム再編を行うプロジェクトや中学校新設の準備委員などの色々な企画に携わりました。私はおそらく一般的な学校の中で「ちょっと変なことを言う人」だったと思います。人と違う意見を言うことが多いので、企画の立ち上げに関わらせてもらう機会が多くあったのだと思います。

その後、立命館守山高等学校で5年間勤めました。そこでは、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の研究主任を務め、1人1台iPadの導入に関わりました。現在、GIGAスクール構想が推進されて、全国の学校に1人1台端末が導入されていますが、立命館守山では2014年度から1人1台端末の整備を進めていました。現在はその取り組みから7年経っており、授業のプリントや保護者への連絡もすべてデジタル化され、1人1台端末の利用が浸透しています。

———N高等学校・S高等学校ではどのような役職で、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

N高等学校・S高等学校では、京都キャンパスのキャンパス長を2019年度から2年間務めました。また2020年度からは、通学コースカリキュラム編成課と経験学習部にも携わっています。通学コースカリキュラム編成課では、N高等学校・S高等学校通学コースの授業のコンテンツを作成しています。また、授業改善のための、授業後のアンケートやインタビューの実施、教員研修にも携わっています。

経験学習部では、「21世紀型スキル学習」や「プロジェクトN」などN高等学校・S高等学校独自の授業の企画を行っています。

管理職として心掛けていること

———キャンパス運営で心掛けていたことは何でしょうか?

生徒たちから自然と「ありがとう」が出て、誰かに貢献しようと思えるようなキャンパスにしたいと思っていました。例えば、京都キャンパスでは生徒のなかで委員のような役割を作っていませんが、何かのプロジェクトが生まれたときに生徒自ら手を挙げて貢献したいと思ってもらえるようにファシリテートしています。そのおかげで、卒業アルバムや卒業生を送る会の実行委員を募集するときも、生徒たちは自分から手を挙げて担ってくれていました。

———教職員やTAが仕事を楽しいと思えるように工夫していることはあるのでしょうか?

自分ができているときとできていないときがあるのですが、「自然体でいること」ではないでしょうか。それはもしかしたら心理的安全性があることかもしれないし、忖度せずに議論できることかもしれません。自分を出したいように出せることが大切だと思います。

『アナと雪の女王』の主題歌「Let it Go」の最後で、「ありのままでいられると寒くない!」というニュアンスのところがありますが、自然体でいられるとポカポカします。自然体でいられないときはギスギスして、苦しいのです。

N高等学校・S高等学校での人材育成

———N高等学校・S高等学校の規模が拡大していく中で、教員免許を持たない職員や若手の教員をどのように育成しているのでしょうか?

現在、私は通学コースの中で研修を担当しています。まず、人材育成には2種類あると思っています。1つは教職員やTAが基礎(ミニマムスタンダード)をしっかりと身につけることです。もう1つはその上で自分の個性を出したり、得意なことを突き詰めていったりというアドバンスの部分を身につけることです。

私が現在担当しているのは、通学コースで働くことができるようになるためのミニマムスタンダードの部分の研修です。N高等学校・S高等学校通学コースで働く方には、一定水準の教育活動ができるようになってもらい、同時に本学園の方針や考え方も身につけてもらうことが必要です。

研修を作る上では、ミニマムスタンダードとアドバンスな部分の両方を意識しています。「研修を研修で終わらせない」ということが重要なのです。研修から自分のキャンパスに戻ってきたときに、研修で自分が吸収したことをもとに、今までできなかったことも自信を持ってできるようになることが大切だと思っています。

そのために、研修を終えた教職員のその後を追っていく必要があると思っています。昨年の夏に新入職者を対象に研修を行い、その研修後の同じ年度の3月に20分ほどの面談を実施しました。面談では「1年間どうでしたか」「困ったことはありませんでしたか」といった内容を聞き、1年間を整理したうえで、「2年目はどうしたいですか」と聞いています。新入職のときの気持ちを消化してもらい、どのように次につなげるかを考えてもらいます。

キャンパスでの生徒との関わりにおいてもこの2つの視点を大切にしています。まず、私がキャンパス長をしていた京都キャンパスは自由な雰囲気だけでなく、「当たり前のことは当たり前にする人になりましょう」ということも大切にしています。例を挙げると、アンケートなどの提出物は期限までに出したり、挨拶をするときはスマートフォンを置いたりするということです。

また、生徒が自分でやりたいことを見つけて、突き詰めていくことも大切にしています。例えば、イラストレーターやフォトショップで様々な作品を作ったり、動画の編集も行なっていたりする生徒がいます。自分の得意なことややりたいことを見つけるのも大切だと思っています。

———都道府県単位の公立学校の研修を効果的に行うためには何が必要なのでしょうか?

研修は、よくなかったことを指摘する機会になることが多いと思っています。研修の場で研究授業を行うと、その授業に対してよかったことよりも改善点が多く出されます。日本では振り返りやリフレクションという言葉があまり使われず、反省会、つまりよくなかったことを先に洗い出すことが多いと思います。もちろんそれにより目標や次にやらないといけないことが定まるかもしれませんが、「これができない」「あれができない」が連発すると心地よくないと思います。改善点を指摘すること自体は問題ではないのですが、空気作りが必要なのではないかと思っています。

このような研修に対するイメージや経験があると研修が苦手と感じる人も出てしまい、自分からも研修の参加や自己投資をしようと思う教員が少なくなります。そうではなくもっと前向きに、研修がしっかりと仕事や実生活で活きるようになればよいと思っています。全ての人にその研修がヒットするのはむずかしいかもしれませんが、6割の人にヒットすればよいかと思っています。

これから成し遂げたいこと

一番大きなくくりでいうと、いつまでも遊んでいたいと思っています。この瞬間のときめきを大切にしたいので、ストレートに教育に携わらない仕事になってもよいと思っています。いつまでも自分がワクワクすることをやりたいというのが一番の夢です。

メタファーですが、しなやかな筋肉をつけたいと思っています。バーベルではなくヨガで筋肉をつけるイメージです。ヨガのインストラクターは自分の動かしたいときに動かしたい筋肉を動かすことができると聞きます。自分もそんなふうに、自分が何かをやりたいときに、自分の体や頭をしなやかに使えるようになりたいと思っています。そのためには、思考でいうとたくさんの知識を持っていること、そもそもの前提を疑えること、色々なことに興味を持てることが必要だと思っています。いつまでもそのような自分でありたいと思っていて、常に一番ワクワクすることをしていたいと思っています。

小中高教員、教育に関心のある学生へのメッセージ

教育というと、どうしても自分が受けてきた教育をフィルターにして見てしまうことが多いと思っています。しかし、教育は多様な形があるので、「最適な教育」や「教育は〇〇」といった自分の信念を持つことはよいと思いますが、それに凝り固まらずに様々な教育の形を吸収していく姿勢を常に持つことが大切だと思っています。多種多様な教育の形を吸収し、認識した上で自分の教育を作ってほしいと思います。

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こちらの記事では、倉本先生が自身の教育観として実践されている「わたしのプロジェクト」を持つことと「遊ぶように学び、学びながら遊ぶ」ことの重要性についてご紹介しています。

4 プロフィール

倉本龍先生

<現職>
学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校・S高等学校 通学コースカリキュラム編成課
全国展開する通学コースのカリキュラムマネジメントを担当し、授業やプロジェクト学習、課外活動を企画・運営することで「ネットを駆使した未来の学校づくり」を率先して行っている。
(プロフィールは2021年6月時点のものです)

5 関連情報

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学校法人角川ドワンゴ学園では、生徒へのコーチングから学校運営補助、校内イベントの企画・運営など、様々な場面で長期インターン生が活躍しています。インターン生に求めていることは、生徒へ勉強を教えることだけではなく、生徒の成長をサポートする環境そのものを創ること。「教える」ではなく「創る」仕事です。自由な発想で、主体的に、正解のない「未来の学校づくり」に挑戦していただきます。

学校法人角川ドワンゴ学園は、新しい時代に合った、新しい学びの場を提供し、
新しい社会システムを創造していくことに取り組み続ける組織です。

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詳しい募集職種・条件は下記ページよりご参照ください。
https://open.talentio.com/1/c/nnn-ac/requisitions/2223

6 編集後記

本記事では、N高等学校・S高等学校京都キャンパスで2019年から2年間キャンパス長をされていた倉本龍先生の主にキャンパス運営や若手職員の育成についてご紹介しました。

学校の管理職の立場から、職場環境を整えたり、若手教員の育成したりする教員の皆さまに少しでもお役に立てれば幸いです。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 清川美空、鎌田真衣、瀬崎颯斗)

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