1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
交番の時間
学校の交番は何時から何時までやっていのるかを考えてみました。
- 時間が決まっている
- 24時間
それぞれ、子どもたちからは下のような意見が出てきました。
〈時間が決まっている〉
- 朝5時から夜9時まで。いろいろ調べて疲れたりしているから。夜は寝ていると思う。寝る時には布団の近くに服とかとか置いてあって、電話があったらすぐに服を着て行けるようにしていると思う。
- 朝6時から夜12時まで。交番のところを通るとやっている時とやっていないときがあるから。
- 朝5時から夜9時まで。警察の人も睡眠をとらないと体がもたないから。
〈24時間〉
- もし何か事件が起きたら、ほったらかしにしてしまうから。
- 夜寝ている、その時にすきを見て泥棒が来てしまうから。
- 泥棒は夜遅くに来る。24時間対応して安全を守っていると思う。
- 泥棒はいつ来るか分からない。もしやっていない間に来ると変なことされる。
- 消防も24時間やっていた。どちらも人を助けるために働いていた。仕事は警察も消防も一緒だから、24時間。
- 警察と消防はいつ来るか分からないし、いつ事故が起きるか分からないから24時間。
- コンビニみたいに交代でやればいい。
「青色」=教師の発問
それぞれ意見が出たところで、さらに考えてみることにしました。
「消防署の場合、人が何人もいたので24時間やっていても、1日交代で仕事をすることができました。しかし学区の交番には、お巡りさんが一人しかいません。消防署のように交代できる人がいないことも考えてください。」
そして、同じ考えの人同士で作戦タイムをとりました。
「相手チームの人が意見を変えてくれるようないい作戦を立てよう。」
〈時間が決まっている〉
- 一人で24時間もやっていると、疲れて眠いときもある。ずっといても交代する人がいない。
- 事務所(交番)と家がつながっているから、もし何かがあると、本部の方に連絡が入って、そこで家の電話番号がわかるから連絡が来る。前にバイクとバスがぶつかる事故があったときに朝早くて、まだ起きていないみたいで、少し来るのが遅れたことがあった。
- お巡りさんだって家族の人と楽しみたい時だってある。24時間ずっと起きていて、それが毎日続いたら死んじゃうと思う。休みの日だってある。
- 休んでしっかり栄養をとらないと寝不足になってパトロール中に事故になってしまう。
〈24時間〉
- 眠いときは、栄養ドリンクとかコーヒーを飲んで眼をさましている。
- みんなは自宅の電話番号知らないから、いつもやっていると思う。
他にも、「交番は何時から何時までやっているのか調べられたら調べてみよう」と声をかけておいたところ、調べてきた人の話を聞いてみる。
- 24時間やっている。
- やっているけど休んだりする。寝ていたら電話で起きる。
- 交番の電気が消えてやっていないときがある。
無人の交番
教師の体験をもとづいたことを学習問題にした。
「交番に誰もいないときに事件が起きたらどうしましょう。」
実は、今度交番に見学に行こうと思い、先週から交番に電話をかけているけれど全然通じません。朝は交番には誰もいないし、20分休みや昼休み、放課後、帰るときなど何度も電話をしたり、交番の前を通ったりしていますが、一度も繋がらないのです。FAXを送ってもうまく届きません。仕方がないから用件を書いた紙を直接持っていって、机の上に置いてきました。ドアは開いているし、泥棒が入ったらどうするんだろう?と思いました。
「いつもいつも電話に出ない交番。もしもこれで何か事件や事故があったらおまわりさんは来てくれるのでしょうか。」
〈すぐにくる〉
- おまわりさんは腰のところに何かついてきて、何か事件とかあったら、この無線にかかってきて、すぐにいくと思う。前に無線のところで何か話をしてるのが聞こえた。
- 無線につながっていて聞こえるようになっている。それが聞こえてきたらすぐに行く。
- 110番をかけると、それは本部に連絡がいく。本部からパトカーの無線とかに連絡が入っておまわりさんがくる。
〈遅れてくる〉
- 何とか連絡をつけられるけれど、すぐ近くにいるわけではないから結構時間がかかると思う。
- すぐに来なかったら警察ではない。でも遠かったらすぐに来られないから、少しは遅れると思う。
〈すぐに来ない〉
- 先生がいつもかけても出ないし、もし「火事です」と電話をかけても出なくて、もう一度かけたときにやっとつながったとしても、1時間以上たっているかもしれないから。
- 電話が鳴ってもいつも出ない。もしかしたら、いつも寝ているのかもしれない。
〈すぐにくる〉の説明の劇を作ってみました。
役者は[通行人(発見者)][被害者][警察本部][地域のおまわりさん][鑑識]の全部で5人。歩いている[歩行者]が[被害者]を見つけ110番します。連絡を受けた[警察本部]がパトロール中の[警察官]に連絡をとり駆けつけます。[被害者]の状況を見て、もう一度[警察本部]に[鑑識]の応援を頼み、紺色の帽子をかぶった[鑑識]が駆けつけ、いろいろと調べるというストーリー。110番通報や警察本部が大きな役割を果たしていることが劇を通して分かりました。
交番見学
交番に行って、問題になっていることを教えてもらいました。
Q1 警察で一番力を入れていることは何ですか。
- 犯罪の防止:犯罪の予防。制服の警官の姿を見せて防止する。
- 交通事故の防止:交通事故を減らすための取締りや指導。
- 家庭状況調査:東海地震に備えて各家庭の様子を把握する。
駐在所の仕事
泥棒などの犯罪を防ぐためのパトロールをするのが主な任務。
警察の体制や人員
- 刑事課:泥棒や事件の捜査をおこなう。
- 地域課:犯罪の予防、パトロール。
- 交通課:交通事故を防ぐ、指導取締り、交通安全教室。
- 交通規制係:信号機や歩道の設置。
- 生活安全課:麻薬、銃、少年犯罪などの取締り。
Q2 警察は何時から何時までやっているか
- 24時間体制でやっている。大きな警察署や交番は交替しながら勤めている。
- 24時間帯体制だけれど制服を着るのは8時間。(7:30~16:30)
- 月10日間は、夜勤をする。
- 8時間のうち6時間はパトロールをしている。
Q3 駐在所にお巡りさんがいないとき事件が起きたらどうするか
- 24時間体制でやっている。夜寝ているときに事件があったら中央署から連絡が入る。警察専用電話がある。中央署のほかに、他県からも電話がある。
- 110番をかけると県警本部の通信司令室に連絡が入る。ここから指令が出て、30分以内に駆けつけることができる。サイレンを鳴らすので20分くらいで着くと思う。
お巡りさんに質問をしました。
- けん銃は1年に何回くらい撃ちますか。
- 訓練で1年間に40発撃ちます。
- どんな訓練をしていますか。
- 柔道、剣道、逮捕術、けん銃などです。柔道と剣道で年に30日ほどやっています。
- どんな人があやしいですか。
- パトロールをしているとき目をそらしたり反対の方へコソコソ行く人です。後ろめたいことがある人は警察官の姿を見ると逃げようとします。
- 死んだ人がいたらどうしますか。
- 本部に応援を頼んで、刑事さんや鑑識課の人に来てもらいます。
- いつも何時にパトロールをしていますか。
- いつも同じ時間にパトロールをしないようにしています。時間がわかってしまうと、お巡りさんのいないときに悪いことをしようとするからです。
交番の見学から戻った後で、警察の劇をつくることにしました。
警察には大きく3つの仕事がありました。事件や事故を調べる刑事課、犯罪を未然に防ぐ地域課、交通事故を扱う交通課です。3つのグループに分かれて劇をしたいのですが、どれをやってみたいですか。
それぞれの役に沿って、下の用に警察官の仕事を調べます。
私は( )課の警察官。仕事は1.2.…
子どもたちは書籍やインターネットで自分の役の警察官の仕事について詳しく調べました。刑事課、地域課、交通課の仕事について十分調べた後に、劇づくりに取り組みました。
劇の中には、必ず「通信司令室」と「お巡りさんの願い(台詞)」が入るように指示しました。子どもは劇が大好きです。劇をして体を動かす中で、必要な役割や仕事に気づいていきました。小道具作りにも熱心に取り組みました。
最後に、これまで調べてきたことを体全体を使って表現しながら劇の発表会をしました。
3 プロフィール
静岡県教育サークル
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウト アイデア事典」(明治図書出版 2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
交番に人がいなくても、交番があるだけで犯罪抑止効果になっているということなのですね。私は落とし物や道に迷ったときによく交番のお世話になっていますが、無人の交番も多く、1日の大半をパトロールをしているということも知らなかったため、不思議に思っていました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 栗林茜)
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