1 はじめに
この授業は2つのワーク(『一致団結ソーレ!』『もめごとだって解決できるさ』)を通して、アサーティブな状態(自分の要求や意見を、相手の権利を侵害することなく、誠実に、率直に、対等に表現し、うまくコミュニケーションをとることができる状態)を目指すことで、子どもたちに日常の中にあるもめごとを解決する力をつけさせようというものです。
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【本時のねらい】
相手の非言語的表現をしっかりと読み取り、アサーティブなあり様をめざすことによって、もめごとを解決していく力をつける。
【身につけさせたい力】
共感力、決断力、問題解決力
2 授業の流れ
<ウォーミングアップ>
『一致団結ソーレ!』
指導者の「一致団結ソーレ!」というかけ声を合図に、全員が「ソーレ」と声を出して「パン!」と手拍子1回、もう一度「ソーレ」と声を出してから手拍子を2回「パンパン!」と、「ソーレ」の後の手拍子の数を増やしていき、5回まで続ける。気持ちを合わせて手拍子が揃って教室に響き渡るのが心地よい。
- 準備物
- なし
- 留意点
・大きな声で、明るく、リズミカルにリードしていく。
・1回から5回まで成功したら、5回から1回まで戻っていく。
<インストラクション>
『もめごとだって解決できるさ』
仲の良い友だちどうしで、いっしょに遊びに行く計画を立てようとするのだが、ケンカ真っ最中の2人がいたり、それぞれが自分の事情を言い出したりしたために、計画が実現しそうにない。週末の土曜日か日曜日に何とか全員で遊びに行けるように、もめごとを解決して、都合をつけ合うためにはどうしたらいいのかを、自分たちで話し合うという設定の授業である。
- 4人班で次の土・日に遊園地に遊びに行く計画を立てる。どうしたら5人全員で遊園地に行けるか話し合う。
- 5人のメンバー紹介と事情の紹介がなされる。
- 準備物
- 登場人物写真付きかぶりもの(5人分)、事情を書いたフリップメモ用紙(人数分)
- 留意点・教具等
・写真付きのかぶり物を用意し、それをかぶりながら紹介していく。
・キャラクターは教員であれば親しみがわいてくる。
・せりふをフリップにしてかぶり物の写真とともに黒板に貼る。
・5人全員が遊びに行くために、アサーティブなあり様で解決することが大前提である。
<エクササイズ>
1. 2つの課題について考える。
課題1:CさんとEさんをどう仲直りさせるか。
課題2:5人の事情をどう調整していくか。
2. メモ用紙に5人の会話を考えて書いていく。
3. 班としての結論を出す。
4. 班ごとに全体で発表する。
- まず、個人で考えさせ、次に班としての考えをまとめるように支援する。
- 5人で遊びに行く、アサーティブなあり様で解決するという大前提をくずさないようにもっていく。
<ふりかえり・シェアリング>
1. グループで気づきを共有する。
- 班のそれぞれの結論に、どうアサーティブなあり様が表れていたか。
- 自分の考えと、他のメンバーの考えの違いからの気づきはどんなことだったか。
2. ふりかえり用紙に記入する。
<フィードバックの視点>
- 各班での話し合いのプロセスから拾いあげる。アサーティブな表現を考えている子どもたちの姿から、どのようにアサーティブな表現に落ち着いていったのかを返す。
子どもの気づき
- 本当にありそうなことで、もしかしたらもうすでに経験していることかもと思う。「ああしたらよかったかな」とか思ったことをみんな思ったん違うかなー。だからこの発表をみんな真剣に考えられるんやと思う。
- アサーションを使うところが難しかった。ケンカをしたときとかどうしたらいいかすごく考えた。
- それぞれの班の発表の中身が違ったから、色々な意見があると分かった。
- みんなの都合を合わせるのが難しかった。
- アサーションは難しいけど、普段の生活の中で使えるようになりたい!と思った。
教員からのコメント
ケンカしているとか、いっしょに遊びに行くということは、子どもたちの普段の生活によくある話なので、身近な課題だったと思います。普通ならケンカをしていたら、「あの子をはずそう。」とか、都合がつかなければ、「都合がつくメンバーで行こう。」ということになると思います。しかし、そこをアサーションを使って、粘り強く解決していこうという考えをこの授業を通じて子どもたちは学んだのではないかと思います。日常生活に生かすことはなかなか難しいことだとは思いますが、徐々に身につけていってほしい大切な観点だと感じました。
3 編集後記
アサーションというのは自分も相手も大切にした上で成り立つ誠実で率直で対等なコミュニケーションの方法です。相手を傷つけずに、自己表現するというのを身につけ実生活で使うことは、子どもたちにとってとても難しい事です。しかしこうした授業は子どもたちに、その苦労をこえてコミュニケーションが成功した時の喜びを感じさせることができると思いました。そして、そういった体験は子どもたちが変わっていくきっかけになりうると思うので、広がっていけばいいなと願っています。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 杉田 彩)
4 講師プロフィール
深美隆司
32年間、大阪府の公立中学校教員として勤め、2011年に退職。
「いじめ・不登校への挑戦」の目標を掲げて、2011年4月1日からフリーの活動として「あいあいネットワーク of HRS」( http://www.aiainet-hrs.jp/ )をたちあげた。現在、大阪府松原市スクールサポーター、島根県松江市教育委員会アクションプランスーパーバイザー。
現場では、人権教育、キャリア教育を主に取り組み、1996年には職場体験学習の原型をつくりあげた。
2007年から4年間、文部科学省研究開発学校の研究主任として大阪府松原市立松原第七中学校区の研究開発「いじめ・不登校等の未然防止」に取り組んだ。
「子どもが先生が地域とともに元気になる 人間関係学科の実践」(図書文化社)を共同執筆。
教育雑誌「教職課程」「悠+」「指導と評価」「解放教育」「慶應義塾大学教職課程センター年報」等に論文を執筆。
人間関係学科シリーズ
★「もめごとだって解決できるさ」(深美隆司先生)
★人間関係学科とは・・・
★人間関係学科の三要素
★人間関係学科の三側面
★人間関係学科・・・教員に求められる力
★人間関係学科を語る・・・ストレスマネジメント
★自分の成長時間(深美隆司先生)
コラム
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」
https://edupedia.jp/entries/show/1175
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その②
https://edupedia.jp/entries/show/1178
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その③
https://edupedia.jp/entries/show/1184
深美です
授業へのご質問等がありましたら、下記コメント欄 または
あいあいネットワークofHRSのブログ ご質問のページ
http://aiai-net.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/04/post_1d6f.html
へご遠慮なく。迅速にお答えいたします。
コメント
コメント一覧 (1件)
深美です。5月に図書文化社より松原第七中学校の書籍
「子どもが先生が地域とともに元気になる 人間関係学科の実践」
が2013年4月17日に発売されました。
副題は「人権教育・多文化共生共育をベースにした予防・開発的生徒指導」です。いじめの4層構造を提唱された大阪市立大学名誉教授・森田洋司先生が監修をしてくださいました。私も、あいあいネットワークofHRSの立場で一部執筆しております。
あいあいネットワークofHRSのHPから申し込んでいただきましたら、松原第七中学校実施プログラム60時間分の指導案と授業の様子がわかるふりかえり掲示物のPDFを収録したCDを進呈させていただきます。