自分の成長時間(深美隆司先生)

24
目次

1 本時のねらい

時間管理とは、単にスケジュール帳に予定を書くという単純なものではなく、自分の目標設定から導き出されるべきであるということに気づく。

2 身につけさせたい力

自己管理力、時間管理力

3 準備物

・アイスブレーキング
 なし
・どうすればいいの?
 サラリーマンの衣装、電話、子どもへの指令書、メモ用紙(人数分)

4 授業のポイント

 この授業は、まず、自分自身の目標(短期的・中期的・長期的)を持っているかどうかが問われる。自分自身の行動が4つのマトリクスの中の、どの部分に入っているのかという実態に、子どもは気づくことになる。その結果、目標をしっかりと持ち、自分の時間をどのように使っていけばいいのかということに気づいていく。できれば教員2人で取り組みたい。

5 流れ

①インストラクション(教員のみで演じる)
②エクササイズ(子どもと教員で演じる)
③ふりかえり・シェアリング

①インストラクション

『どうすればいいの?』サラリーマンAさんバージョン

入社5年目のサラリーマン・Aさんに色々な用事がふりかかってくる。Aさんは30歳。部署は営業部である。将来は海外勤務を希望しており、今夜も妻と一緒に1年間続けている英会話教室に行く予定がある。1週間前に言われた書類を今日の17時までに提出しなければならないが、昨日DVDをたくさん観てしまったため、まだ出来ていない。また、今日はもうすぐ契約の取れそうなお得意様の所に行きたいとも思っている。そんな時、先輩から仕事の依頼が入る。後輩から、仕事終わりにご飯に連れて行ってと言われてOKと回答。と、そこへ電話が掛ってきた。保険のセールスの電話である。担当の女性とだらだら長電話してしまった。17時までの書類もあるし、お得意さんのところにも行かないと行けないし、妻との約束もあるし、後輩からの誘いもあるし・・・どうしたらいいんだ~!?

<手順>
①ロールプレイングを観て、4つの条件によるマトリクスに設定する。
1)緊急であり、重要なもの
2)緊急ではないが、重要なもの
3)緊急だが、重要ではないもの
4)緊急ではなく、重要でもないもの
②Aさんの全ての行動を4つの領域に分類する

<教員の留意点>
○教員1人がAさんの役になって演じる
○Aさんの行動をもとにして、Aさんを演じる教員用の台本を準備しておく
○4つのマトリクス

○クラス全員に質問しながら、Aさんの行動を4つの領域に分類する

②エクササイズ

『どうすればいいの?』生徒Bさんバージョン
 中学生のBさんに様々な用事がふりかかる。Bさんは中学生3年生。11月を迎え、来週から期末テストが始まる。Bさんはゲームが好きで昨日もだらだらとゲームをしてしまっていた。そのため、今日の宿題の国語の漢字帳と数学のプリントのうち、漢字が出来ていない。でも国語は5時間目なので、昼休みに終わらせようと思っている。いつも通り家庭学習ノートはばっちり仕上がっている。今日は塾もないので、高校で野球部に入り活躍するための練習を家でしようと心に決めている。学校に行くと、友だちのCDが今日の夕方、一緒に勉強しようと誘ってきた。「分かった!」と回答。しかし朝のHRで担任の先生Eが急な時間割変更を伝えてきた。5時間目の国語が4時間目になったのだ。「大変や~」と思っていた時に、社会の先生Fがやってきて、社会のやりなおしプリントが出ていないと激怒!昼休みに必ず持っていくと約束をする。放課後、BにGが野球の練習に誘ってきた。行きたいのでOKを出す。

※家庭学習ノートとは?
 自習学習ノートのこと。自主的な勉強意欲を湧かせることが目的。生徒は、自分がしたい勉強を家庭学習ノートにしてくる。担任は、このノートをチェックをする、プリントやワークシートを貼るといった学習支援を行っている。時には生徒と担任との交換ノートの役割も果たす。(ただ、担任は毎日点検をして返すという作業をしなければならず、確実に1時間は時間を費やすこととなる。)

<手順>
①指令書の受け渡し
②生徒バージョンに出演する5人が選ばれる
③生徒5人と指導者によるロールプレイングを観る
④生徒Bさんの行動をメモにとる
⑤生徒Bさんの行動を4つのマトリクスに分類する
⑥分類した行動を全体で共有する
⑦この1週間の自分の行動を4つのマトリクスに分類する

<指令書の内容>
○役名:友だちC
出番順:1番(Bと一緒に)
指令です!よろしく!! ナレーションに続いて出てきたセリフを言ったら席に戻ってね!
「あっ!名前!おはよう!」
○役名:友だちD
出番順:1番(Cと一緒に)
指令です!よろしく!! ナレーションに続いて出てきたセリフを言ったら席に戻ってね!
「なぁなぁ!テストも近いし今日の放課後、一緒に勉強せえへん?」
○役名:担任の先生E
出番順:2番
指令です!よろしく!! ナレーションに続いて出てきて、
みんなの方を向いて先生っぽくね!セリフを言ったらドアから一回出て席へ
「みんなごめん!時間割変更です!
5時間目の国語が4時間目になりました!よろしくね!」
○役名:友だちG
出番順:3番
指令です!よろしく!! ナレーションに続いて出てきたセリフを言ったら席に戻ってね!
「名前!高校行ったら野球部に入って頑張りたいって言ってたやろ?
今日さ、先輩たちが来てくれて一緒に練習するんやけど一緒にしよう?」

<教員の留意点>
○選出した5人と教室の外へ出て打ち合わせをする
○社会の先生Fは指導者が演じる
○分類の支援をする
○同じ行動でも自分の位置づけによって、どこに分類されるか異なる

③ふりかえり・シェアリング

<手順>

①グループで気づきを交換する。
 *自分自身の行動を4つのマトリクスに分類してどう感じたのか。
 *仲間と交流してどう感じたのか
②ふりかえり用紙に記入する。

<フィードバックの視点>
 自分自身の行動パターンがどのような分類になっているかを知ることが重要だが、その上で自己管理をどうしていけばいいのかを指導者の体験もふまえながら返していく。

<フィードバックを通し子どもが気づいたこと>
・みんな色々な意見が出て個性とかがあっておもしろかった。
・自分はあんまり計画性がないな~って思った。計画を立てたい。
・いろいろ考えることがあった。どんなことが自分で多いとかが分かったし、自分は緊急ではないが重要なことが多くて嬉しかった。
・今まで知らなかったことを実際にやってみたりすることが分かった。
・緊急でもなく重要でもないことが多くて人生損してるなと思った。
・別にやらなくてもいいこと(緊急でもなく重要でもないこと)ばっかりしていて自分でもびっくりした。

6 教員からのコメント

この授業は、子どもレベルの問題だけでなく、教員自身の問題として、学年教員の間で大いに盛り上がってしまいました。ほんとに、今の自分の仕事が、第一領域(緊急で、重要な)に偏ってしまっているかを知って、愕然となってしまったほどです。1日のスパンを考えると、なかなか解決のつかない問題ですが、例えば、1週間スパンで考えると、結構、自分自身を成長させる第二領域(緊急でなく。重要な)のための時間をつくれるような気がします。

7 参考文献

『7つの習慣』スティーブン・R・コピー キングベアー出版

8 編集後記

しっかりとした目標を持つこと、その達成のため時間をどのように使うべきかをきちんと考えること。この2つが出来れば、目標達成もより近づくだろう。そして、人生も豊かになるかもしれない。編集をしながら、自分も、時間管理をしっかり見直さなければいけないと痛感した。
(編責・文責:EDUPEDIA編集部 井上頌美)

9 講師プロフィール

深美隆司

32年間、大阪府の公立中学校教員として勤め、2011年に退職。
「いじめ・不登校への挑戦」の目標を掲げて、2011年4月1日からフリーの活動として「あいあいネットワーク of HRS」( http://www.aiainet-hrs.jp/ )をたちあげた。現在、大阪府松原市スクールサポーター、島根県松江市教育委員会アクションプランスーパーバイザー。

現場では、人権教育、キャリア教育を主に取り組み、1996年には職場体験学習の原型をつくりあげた。
2007年から4年間、文部科学省研究開発学校の研究主任として大阪府松原市立松原第七中学校区の研究開発「いじめ・不登校等の未然防止」に取り組んだ。
「子どもが先生が地域とともに元気になる 人間関係学科の実践」(図書文化社)を共同執筆。

教育雑誌「教職課程」「悠+」「指導と評価」「解放教育」「慶應義塾大学教職課程センター年報」等に論文を執筆。

人間関係学科シリーズ
「もめごとだって解決できるさ」(深美隆司先生)
人間関係学科とは・・・
人間関係学科の三要素
人間関係学科の三側面
人間関係学科・・・教員に求められる力
人間関係学科を語る・・・ストレスマネジメント
自分の成長時間(深美隆司先生)

コラム
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」
https://edupedia.jp/entries/show/1175
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その②
https://edupedia.jp/entries/show/1178
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その③
https://edupedia.jp/entries/show/1184

10 深美です

授業へのご質問等がありましたら、下記コメント欄 または
あいあいネットワークofHRSのブログ ご質問のページ
http://aiai-net.blog.ocn.ne.jp/blog/2013/04/post_1d6f.html
へご遠慮なく。迅速にお答えいたします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次