人間関係学科の三要素

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目次

1 人間関係学科の三要素

(ソーシャルスキルはすべてをあらわす概念)

人間関係学科では、社会生活において、幸せな人生を送ることができることをめざしています。ソーシャルスキルは、そんな幸せな人生を送っていくために、必要な技能であるということができます。ですから、子どもから大人までどの時点においても、社会生活において必要な技能としてソーシャルスキルを位置づけることができます。例えば、小学校低学年において、遊んでいる何人かのグループに近づいた子どもが「(遊びに)いれて」と言える、独りぼっちの子どもがいたら「いっしょにあそぼ」と言えるというようなレベルから始まります。さらに、会話をしている場面で、相手の顔を見て「へー」「そうなんですか」と、あなたの話を「聴いているよ」、あなたのことを「受けとめているよ」ということを表す傾聴スキルなどにつながっていきます。そして、さらに、ストレスがたまったり、怒りの感情などがあふれてきたときに、そういう自分や、そういう感情を適切に対処するストレス対処や感情対処などに発展していきます。最終的には、小学校高学年や中学校段階において、相手の気持ちを想像し、共感しながら、自分の主張を述べていくということを通じて、相手との折り合いをつけていくことができる人間関係調整力へとなっていきます。また、もめごとや争いなどの紛争を解決する力(メデュエーション)も人間関係調整力のひとつであるということができます。中学校3年生くらいから高校生くらいになると、個人と個人の力をあわせて相乗効果を生み出す力へと成長していきます。プロジェクトやNPOをたちあげたり、起業したり、何か新しいものを産み出していく人間力として完成していくのです。

しかし、一般的にはソーシャルスキルを土台として、「出会い」と「気づき」の力人間関係調整力や人間力が育成されていくというふうに理解されています。当然、この考え方に松原七中校区の人間関係学科も立脚しているのですが、本当はソーシャルスキルという概念の中に「出会い」と「気づき」の力、人間関係調整力+人間力というものが含まれていると理解するほうが、正しい理解だと思います。つまり、整理する意味合いで、ソーシャルスキルを土台として「出会い」と「気づき」の力、人間関係調整力+人間力を積み上げていくという理解をしますが、それぞれの間の線引きというものがないということになります。

(心を育てる「出会い」と「気づき」の力〔エンカウンター&アウェアネス〕)

基本的なソーシャルスキルを使いながら人間関係をつくっていくと、そこから生まれてくるコミュニケーションがフィードバックとなって自分に還ってきます。それを積み重ねていくことで、自己概念とか自己意識と言われるものが心の中にできあがってくるのです。これを人間の枠組みというふうに考えてもらってもいいと思います。人間の枠組みには、コミュニケーションや積極的な学習や様々な経験を通じて形成されていくものです。この人間の枠組みや心のなかみが大きく深くなればなるほど、「人の気持ちがわかる、想像できる力」つまり共感性というものが育ってくるのです。

心の成長のプロセスである「認知」「行動」「評価」のスパイラルの出発点である「認知」力を高めていくためには、「評価」から「認知」に至る部分をいかに言語化して客観化できるかというところが大切になってきます。つまり、感じたことを無意識のまま終わらせるのではなく、いかに言葉として自分の中に残していくのかということなのです。「出会い」と「気づき」の力は、この点において重要なのです。人間関係づくりの授業を通じて、まわりの人々や出来事に出会い、授業での関わりを通じて起こった心の変化や感情の変化にいかに「気づき」、それをいかに自分のものにしていくかということです。そして、最後には、「気づき」によって成長した自分自身と「出会う」のです。そのことを可能にしていく力こそが「出会い」と「気づき」の力だと言えるでしょう。

実際の授業においては、トーキング系の自己開示のもの(すごろくトーキング、ルーレットトーキング等)にはじまり、グループ・エクササイズのほとんどは、この「出会い」と「気づき」の力を育成するものであると言っても過言ではないでしょう。一般的には、小学校3年生くらいから、「認知」力というものが成立しはじめると言われています。また、ふりかえりもできるようになりますし、ある程度のフィードバックを還すこともできるようになります。人間関係学科において、子どもたちは、フィードバックを還し合うことを通じて「気づき」を積み重ねていきます。この積み重ねが、子どもたちの自己概念・自己意識を育て、人間の枠組みを広げていくのです。つまり、心が育っていくのです。

(人間関係調整力+人間力が個を育て、相乗効果を発揮する)

人間関係調整力と人間力を育てることが人間関係学科のゴールです。人間関係学科において、人間関係調整力を身につけていくためのアイテムはロールプレイングになります。「認知」「行動」「評価」の人間の成長のプロセスという部分で言えば、「行動」する力を強化していく部分にあたります。

人間関係調整力を育てるロールプレイングにある基本思想は、アサーティブネスです。アサーティブネスは、自分を大切にして、相手のことを想像し、自分の主張をするということですが、その時に「折り合いをつける」ということが必ず必要となってきます。つまり、相手も自分も大切にできるWin&Winの思想であり、お互いの人権を大切にできるものであり、折り合いをつけることによって相乗効果を期待できるばかりではなく、お互いの信頼関係を構築し、深めることができるものなのです。ですから、アサーティブネスというものは、単なる技法にとどまらずに、人間の思想と行動を規定するあり様ということに関わってくるのです。人間のあり様は、大きく分けて「攻撃的」「受身的」「アサーティブネス」という三つのあり様に分けることができますが、「攻撃的」&「受身的」は『依存的』、「アサーティブネス」は『主体的』であると言えます。

「出会い」と「気づき」の力で心を育て、人間関係調整力によって周りとの信頼関係を築いていくのです。さらに、このようにして培われた力は、キャリアにおける学びと併せて、総合的な人間力としてあらわれることになります。この人間力が新しい社会を築き、持続発展可能な世界をつくっていきます。

すごろくトーキング指導案

http://www.aiainet-hrs.jp/11shidoan/sugoroku.pdf

すごろくトーキングシート

http://www.aiainet-hrs.jp/11shidoan/sugoroku-sheet.pdf


スーパーすごろくトーキング指導案

http://www.aiainet-hrs.jp/11shidoan/super-sugoroku.pdf

スーパーすごろくトーキングシート

http://www.aiainet-hrs.jp/11shidoan/super-sugorku-sheet.pdf

スーパーすごろくトーキングカード

http://www.aiainet-hrs.jp/11shidoan/super-sugoroku-card.pdf

人間関係学科シリーズ

「もめごとだって解決できるさ」(深美隆司先生)

人間関係学科とは・・・

人間関係学科の三要素

人間関係学科の三側面

人間関係学科・・・教員に求められる力

人間関係学科を語る・・・ストレスマネジメント

自分の成長時間(深美隆司先生)

コラム
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」
https://edupedia.jp/entries/show/1175
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その②
https://edupedia.jp/entries/show/1178
「もし学校の教師が岩崎夏海の『もしドラ』を読んだら」その③
https://edupedia.jp/entries/show/1184

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