1日に児童全員と会話のできる「一人一役当番表」(長谷川隼土先生)

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目次

1 はじめに

 横浜市立霧が丘小中学校、長谷川隼土先生の実践です。
 この記事では長谷川先生が実践されている、「一人一役当番表」についてご紹介します。

          

 次の記事では長谷川先生の「朝の会」での実践を紹介しています。そちらもあわせてご覧ください。

「教室はまちがうところだ」で失敗をおそれない学級づくり(長谷川隼土先生)
→( http://goo.gl/LRqJWZ

2 この記事で紹介する実践

実施方法

 児童は自分の当番を終えたら担任に報告に来る。その際に担任が握手と共に「当番終了マグネット」を渡す

          

          

          

この実践を行うようになった背景

 今まで、様々な学級で当番表を見てきた。その中で、

・当番に一人一役が与えられている。
・当番が終わったら、終わったことが確認できるような仕組みになっている。
・当番表に「給食当番」が組み込まれている。
・当番表に「掃除場所」がリンクされている。

という当番表は見たことがあったが、「全員と握手をし、会話ができるシステムのある当番表」は見たことがなかった。

          

 作ったきっかけとなったのは、特別支援を要する児童を担任した際、その児童に「クラスに居場所」を与え、安心できる環境をつくるためであった。その児童(以下Aくん)は、集団行動をとることが大の苦手だが、電車が好きでとても詳しく、よく電車の絵を紙に描いていた。その年の「当番終了マグネット」は切符型の「ありがとう~明日行きのきっぷ~」であった。

          

 Aくんは、給食当番では白衣に着替えない、体操着にも着替えないという引き継ぎを受けていたが、よい行動をほめ、認めていく中で徐々に改善が見られた。切符の効果も大いにあったと思う。実際にAくんは、当番表をはじめて一番に私に当番終了の報告に来た。

 その中で、この当番表は役割も明確で「どの子にとっても優しい」ということがわかってきた。そして何より、「全員と握手をし、会話ができる」という大きなメリットを生むことができた。

 なお、今年度は学級にゲームソフトのスーパーマリオが好きな児童がいるため、「1UPキノコ型マグネット」を使用している。

          

実践の効果

①毎日全員と握手をし、「ありがとう」というプラスの言葉と「会話」をすることができる。

・そんなシステムなど敷かずとも、36人の子ども達とコミュニケーションをとれればいいのだが、なかなか「毎日」「全員と」とはいかない。
毎日「握手と一言」をかけることで、コミュニケーションがとれ、信頼を築く一助となる。(どんなにおとなしい女子でも、必ず会話できる。例「ありがとう。今日の国語でとってもいい感想を書いていたね。」)

②当番が「終わったか終わっていないか」の確認ができる。

・児童は、担任からもらった当番終了マグネットを自分の名前のマグネットの上に貼る。そうすることで、当番が終わったのか終わっていないかの確認をすることができる。

          

          

・児童は、初めは「マグネットをもらう」という動機でやっている部分もあるかもしれないが、だんだんと「クラスのために役立つことをする自分がいる」という動機に質が転化していく。(転化させていく。)
・当番をやらないで帰ってしまうと、次の日の朝の会にマグネットを貼っていない人が発表されるようになっている。

③生活に必要な「一人一役当番」がクラスの人数分あるので、担任が出張などで教室をあけても生活が回る。

・朝、一日が始まって、「さようなら」をするまでに必要な当番が決められている。
・実態に合った当番をつくるといいと思う。
本当に心から「ありがとう」と言いたくなるような当番をつくるといいと思う

④生活に必要な「一人一役当番」と「給食当番」が、ひとつの「当番」となっている。

係とは違うということがわかりやすい。
掃除をする場所ともセットになっていて、掃除場所もクラスの人数分になっているので分担が明確である

⑤一度このシステムつくると、給食当番表と掃除当番表の改訂の必要がない。

・当番マグネットを一週間に一つずつ下にずらしていけば済む。
・名前のマグネットは、動かさない。当番のマグネット(掃除場所のマグネットとセットでくっついている。)のみ、一週間に一回、月曜日の朝に下にずらす。

⑥一週間で交代なので、一年間で全ての当番が経験できる。

・究極は、当番などこちらが決めなくても、子どもがクラスのために動き出すというのが理想であると思う。しかし、そうなってくると年間を通して給食当番をしない子というのが出てきてしまう。小学校の発達段階においては、まだまだ教育されるべき存在で、当番活動など様々な役割を経験する中で成長していくのだと思う。

編集後記

 マグネットが1つ1つ手作りで、温かみを感じました。学級の児童に合わせて毎年マグネットが変わるのもおもしろいなぁと思います。
 実際に児童がマグネットをもらう様子も拝見しましたが、照れながらもうれしそうに握手をし、長谷川先生と会話する児童の様子が印象的でした。30人を超える児童がいれば、日によってどうしても会話のできない児童が出てきてしまう場合もあるかと思います。この実践のように毎日全ての児童と会話のできる機会を意図的につくれば、学級経営上大きな効果があるのではないかと思います。ぜひご活用ください。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 菊池信太朗)

講師プロフィール

          

長谷川 隼土(はせがわ はやと)
日本体育大学を卒業後、青葉台幼稚園にて体操教室を開設。
その後小学校教諭に転職し、現在横浜市立霧が丘小中学校勤務。
「人間はどのような発達を遂げていくのか」をテーマに、学級経営や体育を中心に研究を進めている。

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