1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載
されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「くらしをささえる水3」広小の子は水を使いすぎか?
広小の子は水を使いすぎかどうかについて一斉授業をおこないました。
発問1「広小の子は水を使いすぎているでしょうか?」
〈使いすぎではない〉が少人数だったので、まず〈使いすぎではない〉から考えを発表させます。
〈使いすぎではない〉4人
- 水はトイレでも使うし、のどが乾いたときは飲むから
- そんなに無駄には使っていない。勉強で使ったり、他にも必要があって使うときがある
- 水を飲んだりうがいをする。それにトイレ掃除をしたりしないと臭くなる
- 人間は水がないと生きていけない
〈使いすぎではない〉が全員言い終わると、〈使いすぎ〉が「もう言ってもいい?」と待ちかねたように、ダダッと立ち上がりました。
〈使いすぎ〉31人
- プールやトイレで水を使うから
- トイレ掃除で使う
- プールで使う
- 時々、水で遊んでいる人がいる
- 絵の具でぐちゃぐちゃやっている
- 人間は水を使わずにはいられない
このような考えが18人近く続いたため〈使いすぎではない〉→〈使いすぎ〉と考えを変えた子もいました。
意見を発表したら、自分の考えを要約して黒板に書かせます。教師が板書するのではなく、子どもに黒板を開放したいと考えているからです。こうすることで子どもが一時間中、席に座っていることがなくなり、授業が活性化します。
「本当に言いたい一言だけを書くんだよ」と書いた板書をA.B.C.で評価し、書き方を教えました。書き方を教えて、もう一度板書させると、黒板がすっきりすると同時に、キーワードが浮かんできます。出てきたキーワードは、[掃除][プール][手洗い][うがい][実験]でした。端的に言えば、この五つがあるから〈水を使いすぎ〉ということになるのです。
そこでこう尋ねました。
発問2「掃除・プール・手洗い・うがい・実験では、できるだけ水を使わないようにするべきだろうか(使わない・使うべき)」
〈使わない〉21人
- 水は水筒を持ってきて飲めばいいし、なるべく使わなければいいのだから、プールだって少しだから使わない
- 水が一杯飲みたいなら水筒をもってくればいいし、掃除のときは使う分だけバケツに入れればいい。絵の具を洗うときは、ずっと出さないで入れたら止めて使う分だけ出せばいい
- 家から水筒を持ってきて休み時間に飲むべきかな?それともあまり遊ばずにするべきか、それとも自分のつばを飲むか
- 広小で450人いるから、少しでもみんなが無駄すれば、450人もの人が無駄をして、お金がなくなるからなるべく使わない
- 健康のため、生きるためには、絶対使った方がいい。だからといって使いすぎてもダメ
〈使うべき〉15人
- 使わないと水も飲めないし、掃除などもできないし、実験もできないから
- 使わない人と手も洗えないしトイレ掃除のときも使えないから、臭くなっちゃう。人間の半分が水でできていると言われている
- 掃除で使わなかったら臭くなるから
- 夏にプールができなくなる。別に一滴も使わないわけではなくて、手洗いやうがいや水も飲むから
- 私たちは、手洗いやうがいをしなくちゃ細菌が入ってしまって風邪をひくから
どちらか一方の意見になることはなかったので、「水を使って遊ぶようなことはしたくないですね」と授業をまとめました。
「くらしをささえる水4」水はただなのか
上記の「くらしをささえる水3」では「私たちはできるだけ水を使わないようにするべきか?」ということについて話し合いました。〈使うべき〉が15人→20人ほどに増えています。それぞれの意見をまとめてみると、
〈使うべき〉
- 手をあらわないと汚くなくなる
- 掃除をしなくては臭くなってしまう
- けがをしたとき、あらわないとバイキンが入る
- プールの水が汚いままでは困る
- 実験などで使わないと勉強にならない
〈使わないべき〉
- 水で遊んでいる人がいる
- 水がもったいない。無駄になっている
- お金がかかってしまう
議論がいつまでたっても平行線で、もうこれ以上考えを変える子もいそうにありません。そこで教師が出て話をまとめました。
〈使うべき〉の人たちは、自分たちが必要なものにはしっかり使った方がいいということですね。〈使わないべき〉の人たちは、必要なものには水を使ってもいいけれど、そうでないものには使うべきではないと考えているのですね。
こう話しかけると、どちらのチームも「うん」と返事をしました。両者は「必要なところでは水を使ってかまわないけれど、無駄に使わない」という点で一致していることを確認して、次に進みます。
発問1「今、話し合いの中で“水が無駄”“お金がかかる”という意見がありましたが、水はただではないのですか? お金を払った人ありますか。」
- 払ったことはないけれど学校のお金の中に入っている
- 家ではお母さんが払っていると思う
- 給食にの中に入っているんじゃないか
といった声があがりました。「もしかしたら、水はただで、学校の横の葉梨川から飲み放題かもしれないよ」とませ返すと、一斉に「えー」の声。そりゃ確かにそうです。とても飲んでみたいとは思えません。ノートに予想とその理由を書かせました。
〈水にはお金がかかる〉34人
- 水をたくさん使うから
- 「使いすぎはやめて」と前お母さんが言ったから
- お金がかかると思う。きっと校長先生が払っている
- 水がただって言うなら、人はもっといっぱい水を使うと思う。そんなにただだってことはない
このように全員が〈水にはお金がかかる〉と予想しました。そこで、
発問2「では学校で、お金を払っている証拠はあるだろうか。証拠を見つけよう。」
証拠探しに出かけました。まずは教室横の水道から。でもここには〈水にはお金がかかる〉ことの証拠らしきものがありません。やがて子どもたちは学校中へ散っていきます。職員室へ行く子、校長先生に聞く子などなど様々です。
- 「校長先生に聞いたら、水道代は市で払っている」と教えてくれたよ
- 聞いてきたことを、たくさんノートにメモしている
みんなに聞いているうちに、どこかにメーターがあるらしい、それがお金の証拠だ、という雰囲気になってきました。「メーターはどこだ?」「メーターをさがせ」と次第に宝探し大会の様相です。
「体育館だ」という声がかかると、そちらの方へとドドーッと人が動き、それがデマだとわかりがっかりしていると、また別の方から「駐車場だ」という声があがり、またまたドドーッと人が動いていきました。
ついに体育館横の駐車場にメーターがあることを突き止めます。Y也は、見つけたときはもう大興奮。声が弾んでいました。S平は、見つけたメーターが本当に動くかどうか、そこら中の蛇口をひねっています。少しではありますが、確かにメーターは動いていました。
さて、メーターの目盛りは43785立方mでした。一体1日ではどのくらい数字が増えることでしょう。次回の授業ではメーターの動きと料金について考えます。
3 プロフィール
静岡県教育サークル
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない
」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」
という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってよ
り価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
(2015年1月時点のものです)
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
実際に学校中を探して水道のメーターを探す。まさに宝探しのようで、とてもわくわくすることでしょう。全員が駆け回る姿、弾んだ声が浮かび上がります。
とにかく探し回る子、聞いて回る子と、一人一人の個性も浮かび上がりそうです。ずっと座ったままでない、活性化された授業実践が魅力的です。
ご家庭でも応用できそうな実践の一つです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 田中真奈
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