本の紹介を通して育てる主体的な読書

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目次

1 はじめに

本記事は京都市教育センター研究科の「研究紀要平成15年度NO.488主体的に読書しようとする子どもの育成をめざして」(著者 西川三矢子様)を引用し作成した小学校4年生の読書活動の実践記事です。
引用元の論文は下記のリンクから閲覧することができます。

http://www.edu.city.kyoto.jp/sogokyoiku/kenkyu/outlines/h15/pdf/488.pdf

2 概要

近年、子どもたちの「読書離れ」が指摘される中、本に親しむ子どもを育てるために、様々な取り組みが進められている。しかし、子どもたちの読書の活動は、まだ十分だとはいえない状況である。そこで読書活動をすすめていくために、子どもたちと本とが出合える読書環境を充実させることが大切であると考え、読書環境を重視した指導案を作成した。本記事では、第4学年の実践例を提示する。

本記事でいう読書活動とは、本を読むという行為だけでなく、読み聞かせなどを聞き本の世界を楽しむことや、本を選ぶ手がかりや方法、その活用方法を学ぶことなど、図書を扱ったすべての活動のことを指している。また、自分で本を選んで読んだり、本の内容についての意見交流をしたりなど、読書指導・学び方指導といわれている内容も含む。

読書活動の経験の少ない子どもたちにとって、読みたい本を選んで読むことは簡単なようで難しい活動である。そのため、本を読むきっかけをもらい、本の楽しさを味わったり、自分で読んだりするなど、数多くの読書活動を経験することは、必要不可欠な活動である。これらの活動は、今後、自ら読書をしていく上で価値のあることである。

第4学年では、バリアフリーにかかわるテーマの本を取り上げた。この分野の本は、子どもたちが手にする機会が少ないと思われるが、今回の読書活動を通して、この分野にも読書の広がりがみられるようになった。

3 年間指導計画抜粋

(注)現在購入できない書籍もございます。

4 授業実践

第4学年では、国語科の2月単元『手と心で読む』に関連し本を紹介する読書活動を設定した。

調べ学習と発表

国語科の単元『手と心で読む』は、全24時間扱いの学習である。この学習の第11時から第24時までの9時間が、「自分のテーマ(伝え合い)に沿ってまとめたことを発表する」という調べ学習に当てられる。この学習で調べたり、学んだりしたことを、パンフレットや新聞、本にするなど、様々な方法で工夫してまとめ、それを互いに提示し、感想を交流するという内容の学習活動である。

この活動の発表時に、出来上がった作品の紹介だけではなく、活用した図書や資料の紹介もするという読書活動を行った。その活動内容を示すのが資料3-11-①である。

図書館学び方の指導

また、第3学年で既に学習している内容であるが、もう一度「学校図書館のしくみとその利用」や「図書や資料の利活用」についての指導もこの読書活動に取り入れた。その活動内容を3-11-②で示す。

読書の興味を広げる

第4学年では、子どもたちが普段手にすることが少ない分野の本を調べ学習に活用することから、子どもたちにより深く興味をもってほしいと考え、『手と心で読む』の学習を始めると同時に、教室の中にバリアフリーに関する本をいろいろと集め、展示した。またこの中から、その日の学習に関連する本を、授業の中で1,2冊紹介した。写真3-12はその様子である。

このような活動をすることで、子どもたちの多くはバリアフリーに関する本に興味をもち、調べ学習のテーマを決めたり、本を探したりするときなどに、スムーズに活動することができた。

発表の感想

資料3-12は3-11-①の活動の子どもたちの感想である。調べ学習の発表時には、それぞれが同じ「伝え合い」というテーマで調べ学習を行ってきたので、互いの発表に興味をもち、自分が調べた内容と他の子どもたちが調べた内容との違いなどに気づきながら発表を聞くことができた。

自分が調べた内容と他の子どもたちが調べた内容との比較をする感想が聞かれたことで、調べ学習をしたことが生かされたのではないかと考えられる。

また、その後の読みたい本を選ぶ活動では、指導者からの本の紹介と他の子どもたちからの発表時の紹介とから、ある程度本の内容を把握していたため、積極的に本を選ぶ姿がみられた。写真3-5、6は、選書をしたり、子どもたち同士で本を読み合ったりしているところである。

図書館の学び方指導の感想

また、資料3-11-②の読書活動を行った後、子どもたちからは、上記の資料3-13のような感想が聞かれた。

上記の子どもたちの感想から考えると、上記の子どもたちの感想から考えると、前に学習した内容であっても、定着を図るためには、繰り返し学習することが必要であるといえる。

また、学習に関連する図書を教室にそろえたり、学習の中で紹介したりすることは、学習内容を習得していく上で、有効であると考えられる。

5 「主体的に読書しようとする子どもの育成を目指して」シリーズについて

本記事は「主体的に読書しようとする子どもの育成を目指して」というシリーズ記事のひとつです。以下の実践も合わせてご覧ください。

本との出会いで育てる主体的な読書 | EDUPEDIA

題名当てクイズ・本の紹介・読書記録カードを利用した読書活動が掲載されています。授業に取り入れやすい工夫だと思います。

グループ活動で育てる主体的な読書 | EDUPEDIA

1学年での工夫に加えて、グループ活動という視点を取り入れています。1学年の記事をご覧になった後読んでいただければと思います。

調べ学習を利用した読書活動 | EDUPEDIA

基本的な工夫は低学年の記事と同じですが、中学年向けの調べ学習も取り入れてより主体性を育てる工夫が掲載されています。

本の紹介を通して育てる主体的な読書 | EDUPEDIA

児童同士による本の紹介や本の展示など、読書をより自主的にしてもらうための工夫が掲載されています。

6 編集後記

子どもの主体性を育てる第1歩は、子どものなかの興味を引き出し、それを共有することです。シリーズ記事を通して様々な工夫を紹介しました。著者は論文の中で

本の内容を伝える活動を読書活動の中に取り入れることが大切である。ただ本をみせて、「こんな本がありますよ」というだけでは、子どもたちに本の印象が残らず、以後の読書活動に生かしにくい。本の内容を具体的に紹介することで、表紙などの装丁と一致し、それが子どもたちの印象に残り、本を選ぶのとき目安となるのである。

と述べています。単に本を読むだけでなく、内容を児童同士で伝え合うことが、主体的な読書を促すためには重要なことでしょう。ここに掲載された読書のための工夫が一つでも活かされればと思います。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 阿部由和)

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