学校の先生方へ「知ってほしい…病気の子どもたちのこと」⑤

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

本記事は、赫多久美子(かくたくみこ)さんによる全10回連載の第5回目となります。
 第1回『A君の入院』  http://edupedia.jp/entries/show/1415
 第2回『保健室で』  http://edupedia.jp/entries/show/1480
 第3回『校長室で』  http://edupedia.jp/entries/show/1518
 第4回『靴箱の前で』 http://edupedia.jp/entries/show/1548

この連載で扱われるケースは全て赫多さんのご経験などを基にした架空のお話です。

1 第5回 教室で

「おはようございます!」

「おはようございます。」

いつものように、子どもたちの顔を見回す。A君以外に欠席者はいない。

「着席!」日直の声に、子どもたちが座った。

何人かの視線がA君の席に向いている。机の中やロッカーが空っぽになっていることに気づいたのだろう。青い上履き入れだけは、机の横のフックに下がっている。昨日、玄関でお母さんから預かって私がもとに戻したものだ。

もう一度、子どもたちの顔を見回しながら、一呼吸おいた。

「もう知っている人もいるようですが、A君は先週大学病院に入院しました。足の病気を治すためには、しばらくの間入院しなくてはならないそうです。…A君はその間、病院の中にある学校で勉強することになりました。」

エーッ?

教室中がざわめいた。

「先生、しばらくって、どれぐらいですか?」

「それはまだお医者さんもはっきり言えないそうです。ただ、何ヵ月かは入院が必要だそうです。」

話し声がピタリとやんだ。

「…でもね、病気が治ったら必ずこのクラスに戻ってくるから!…そのために治療を頑張るってA君は言ってるそうです。…お母さんがおっしゃってました。…すごいよね。」

込み上げてくるものをグッと抑えた。

33人が真っ直ぐこちらを見ている。

「ほら、この算数のプリント、A君は病院のベッドの上でやったそうです。なんと満点!」

オーッ小さなどよめきが起こる。

「それに、2班さん、A君の記事が届いたよ。これで歴史新聞が完成だね!」

同じ班のツバサ君に渡す。

「すげえ~。やっぱ、Aは偉いよな!」

「ホント。普通、病気の時に宿題なんかやらねーよなぁ?」

「私にも見せて!わぁ~、さすがA君!」

班のメンバーが嬉しそうにツバサ君が手に持つ記事を覗き込んでいる。

「先生、A君のお見舞いに行きたい!」

「私も!」「ボクも会いたい。」

「う~ん、それがね、A君は子どもだけの病棟に入院しているんだけど、小児科病棟には規則があって、小学生以下の子どもは面会には行けないそうです。」

「えーっ?なんでー?」

「ハイッ、私、知ってます。いとこが肺炎で入院した時、お母さんとお見舞いに行ったんだけど、私は入っちゃいけないって言われて、ドアの外で待たされたんです。風邪とか、インフルエンザとか風疹みたいな病気を、入院してる子にうつしちゃいけないからだって。私、風邪なんか引いてなかったのに。」

しっかり者のアスカさんが発言する。

「ヘェ~、大人だってうつすだろーに。」

「差別だよなぁ。」

「…でも、入院している子どもがさらに病気になってしまったら大変なことになるから、いろいろ規則ができたのだと思うわ。まあ、とにかく、みんながお見舞いに行くのは難しいわね。」

「先生はお見舞いに行けるよね、大人なんだから。」

「そうねぇ…もちろん行きたいわ。でも、もう少ししたらね。今は治療が始まったばかりで、A君もご家族も落ち着かないと思うの。」

「治療って、注射とか?」

「まさか手術?ひゃ~」

「A君、かわいそう。」

再びざわざわし始める。

そう、昨日のお母さんの話を伺った後には、お見舞いの話は切り出せなかった。
もう少し落ち着いたら聞いてみよう、その方がいいと深見先生もアドバイスしてくれた。

「行くのが無理なら、手紙を送ろうよ。」

寄せ書きはどうかなぁ?」

「やっぱり、お見舞いといえば千羽鶴!」

「なに、それ。」「え~?知らないの?」

応援メッセージを録音するとか?」

「それなら、ビデオ録画の方がいいよ。顔も映せるし。」

いつの間にか、子どもたちは次々にお見舞いのアイディアを出しあっている。A君のために何かしたいと、クラスのみんなが思っているのだ。ありがとう、本当にいいクラス、素敵な子どもたちだと改めて思う。

今日のところは、まずは色紙に寄せ書きをして届けようということに落ち着いた。

「じゃあ、明日色紙を用意しておきます。みんな、明日までにA君への一言メッセージを考えておいて下さい。

さあ、ちょっと時間が過ぎてしまったけど、出席を取ります。」

一人ひとりの名前を呼んで、目と目を合わせる。

「ハイ!」

という元気な声が嬉しい。

出席簿上、A君は転出したことになっている。でも、いつもの順番で名前を呼んだ。そして、こう付け加えた。

「A君は、大学病院のあおば学級に出席です。」

「へぇ~、あおば学級ってとこなんだ。」

「先生、じゃあ、A君はあおば学級に出張中だね!」

「そうねぇ、今日も出張先で勉強を頑張ってるんだね。」

これからも毎日、こうやってA君の名前を呼ぼう。

誰かの声がした。

「A君、早く出張から帰ってこないかなぁ~。」

クラスメイトへの伝え方

まず、入院した子どもの親御さんの意向をきちんと確認してください。入院しても仲間であること、退院したらクラスに戻って来ることを伝えることが大切です。自分の帰りを待っていてくれるクラスメイトの存在は、闘病生活の大きな支えとなります。クラス全員を入院している子どもの「応援団」にしてください。

第6回 メール

http://edupedia.jp/entries/show/1682

2 投稿者プロフィール

赫多 久美子 (かくた くみこ)
元都立特別支援学校病院内分教室・訪問学級担任。
現在は大学非常勤講師として教員養成に従事。

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