社会科授業づくりについて その1 ~(高岡昌司)

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この記事は下記のようにシリーズとして投稿されています。是非、ご参照ください。
社会科授業づくりについて その1 ~(高岡昌司)
社会科授業づくりについて その2 ~問題解決(的な)学習(高岡昌司)
社会科授業づくりについて その3 ~自己評価(メタ認知)活動(高岡昌司)

社会科の授業研究

これまで相当数の学校で相当数の授業実践を拝見する機会がありましたが、圧倒的に算数、国語の割合が高く、社会科は10分の1もありません。とても、寂しいと日々感じているところです。
 学校訪問などで、時々、社会科の授業を拝見しますが、おそらく、若手や中堅の先生方もあまり、社会科授業を実際に見る機会があまりないのだろうと想像します。社会科という授業イメージをもって実践している先生方は意外と少ないように思われます。特に、昨今は、全国いずれの地域でも全国学力調査などで国算の結果を求められる傾向が強くなった分、社会科授業を研究するという状況からは益々遠ざかっているような気がしています。
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 私は、これまで教え子たちに、【社会科は、社会のしくみと知恵を学ぶ教科である】と伝えてきました。決して、厳然と固定した社会事象というものを学んでいく暗記教科としてではなく、その時代その時代の人々によって形作られたものであるという社会形成の立場から、学習指導要領にも明記されています「平和で民主的な国家・社会の形成者を育てる」教科であると考えています。このようなことを言うと、決まって「社会科の先生は小難しいことばかり言う」と、あまりいい顔はされませんが・・・。
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「考える社会科」になっていない

実際、教室で行われている社会科の様子について言えば、だいたい以下のような3通りの授業が多いのではないかと思われます。
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① 教科書だけで進む授業!知識に偏った、文章を読み進める読解型の授業!
子どもの疑問や問題意識、反応はどうなっているのかな?自分とは関わりないよその世界のことかな?
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② 調べたことを発表したり、まとめたりすることだけで終わる授業!
 子どもは自分で何を考えたのかな?資料の丸写しで、文字や写真は多くて見栄えはいいけど、その子なりのこだわりや思いはどこに表れているかな?
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③ 先生と一部の児童の対話だけですすみ、先生だけが納得してすすむ授業!
 正解をさがす授業で、一問一答の講義?他の子たちはどう思っているのかな?
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 いかがでしょうか?一言で言えば、「考える」社会科になっていないということです。「どこで、どのように、どこまで、何を考えさせるのか」という具体的なところまで、授業設計がなされていない社会科授業が多いように感じています。しかしながら、このことはある意味、無理もないことで、若手や中堅の先生方が、これまでに、このような社会科授業を見たり、聞いたりするような経験を積んでいなければ、イメージすら持てません。
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「考える社会科」

 「考える社会科」と言うと、難しいというイメージを持たれがちですが、例えば、
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(1)発表する際に、「事実」と「考え」を区別すること。理由や根拠を問うこと。
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その発表は、事実や資料の中に書いてあることか、それとも、それらをもとにした自分の考えなのかということを問うことや、そう考えた理由を尋ねることだけでも違います。例:「インターチェンジの近くに工場がある。だから(なぜなら)・・・」というように「だから」や、「なぜなら」等の言葉を入れることで、「考え」を引き出します。
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(2)自分と友だちの「発表」を比較したり、分類したり、関連づけたりすること。
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個々の発表だけで終わらせずに、自分と友達の発表を比較させて、賛成か反対か?A案とB案のどちらに納得か?同じ発表はどれか?など「発表」を受けて、自分の立場をさらに明らかにさせたり、発言が難しければ、「発表」を整理して、○×や挙手で意思表示させたりするなど必ず、複数の発表(意見)について比べる場を設定します。
 例:「AくんとDさんの意見のように賛成派の意見の人?」など
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 (1)(2)は教師が意識するだけでも、随分、社会科授業の質そのものが変わってくると思います。本時の授業で子どもは「何を、考えたら」社会科の授業としてOKなのかということを、毎回、教師は具体的に持っておく必要があります。それが、子ども達に社会のしくみと人間の知恵を考えさせることにつながると私は思います。
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※ 「授業づくりネットワーク(2009年9月号、12月号、2010年1月号、5月号)」(学事出版)や、学びの場.com実践事例集、「学び合い、分かり合う授業づくり」(明治図書)等もご参照ください。

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