社会科授業づくりについて その3 ~自己評価(メタ認知)活動(高岡昌司)

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この記事は下記のようにシリーズとして投稿されています。是非、ご参照ください。

社会科授業づくりについて その1 ~(高岡昌司)

社会科授業づくりについて その2 ~問題解決(的な)学習(高岡昌司)

社会科授業づくりについて その3 ~自己評価(メタ認知)活動(高岡昌司).

自分自身を見つめる客観的な視点

授業づくりにおいて、私たち教師の意識は、「教える内容」にどうしても偏りがちです。つまり、「何を」「どのように」子どもたちに教えるのかということのみに向きがちということはないでしょうか。もちろん、「教える内容」は、とても大切なことは言うまでもありませんが、それが子どもに、実際、「どれだけ」、「どのように」意識され、理解され、身についているかということは、案外ないがしろになりがちだったり、単元テストで一定の点数を取っていることのみで安心したりしているということはないでしょうか。
教育の世界だけでなく、どの分野においても、力を発揮している方(例えば、野球のイチロー選手や野村監督)の記事やコメントを読むと、実に、明解で具体的な自己分析がなされていると感じます。平たく言えば、自分自身を見つめる客観的な視点(メタ認知能力)があるということです。
このことは,授業づくりにおいても,教師の意識として、重視される必要があると考えています。すなわち、学習内容をどのように理解させるのかという視点だけでなく,子ども自身が自らの学習をどのように振り返るのか、その場面や方法を想定しておくことが必要ではないかと考えています。これまでの先行研究でも、学習内容の理解度が高い子どもは自分の学びの様子を客観的に見る力が高く,そこには強い関連があると言われています。

イメージマップ

国立教育政策研究所の白水始総括研究官が,「人は,言葉をはじめとした様々な表現で考えを外に表し,それらを用いて対話することを通して考える力を深める」という学びの特徴をあげ、学び合うことの必要性を指摘されていました。
私は、授業づくりにおいても、「自分の考え」が,言葉や図によって具体的な形で目に見える化されるため,ここをより意識して指導や評価に生かしていくことが重要であると考えています。このように見える化した自分の言葉や図をいかに自覚的に客観的に振り返えらせるかということが自己評価として極めて重要な視点ではないかと思います。

子どもの自己評価としては,一般的には,振り返りカードや自己評価カードなどを活用することが多くみられます。私はこれら以外に,特に、社会科では、「イメージマップ」を授業や単元活動の中に位置づけて取り組んできました。(イメージマップ:下記参照)

イメージマップ~安全なくらし~火事から生活を守る

「イメージマップ」とは,キーとなる単語からイメージされること(既有知識や経験知,学んだ学習内容)を自分自身でつないでウエッブのように図式化するものです。文章で書くというよりも,図的に言葉をつなげてイメージを広げたり,再構成させたりする表現活動になるので,子どもたちも楽しみながら取り組みます。学習が進むに連れて,言葉と言葉を関係づけたり,カテゴリーや分類に分けたりする自己評価道具です。
「イメージマップ」を単元の中で,2~3回程度、子どもたちに書かせます。こうして複数回書いたイメージマップを学習者自身(子ども自身)が比べることで,自分の学びの様子や,自分の意見や思考の変化などを客観的に捉えます。
私の経験から,イメージマップの書き方を教えることは,

①「自分自身の思考を整理することにつながること」
②「子ども自身に学習の伸びを自覚させることで,自ら進んで学ぶ意欲につながること」

も実感しています。
社会科が始まる3年生頃から本格的に「イメージマップ」を書かせると、だんだんと慣れてきて、図的表現も上手になります。友だちのいろいろな「イメージマップ」を参考にすることで、やらされる意識ではなく,楽しみながらも成就感を味わうことができるような子どもの姿が見られました。
日常的にも,問題に対する自分の答えを求めるだけでなく,その自分の答えや考えがどうして出てきたのかというその思考の過程を振り返るというような教師の働きかけも大切です。例えば、授業中に「どうして,そう思ったの?」,「○○さんの考えはどうしてこのように変わったと思う?」,「今の活動はどういう意味があったの?」等,教師が個人やクラス全体へ投げかけるという日々の実践が「イメージマップ」のベースにもなっています。

図は、中学年社会科単元「安全なくらし~火事から生活を守る~」のOA児が書いたイメージマップ(一部分)です。
これを例に、OA児の認識やOA児自身の振り返りを紹介します。
まず、単元初めの第1回のイメージマップでは、OA児の問題意識は火事の原因に向き、「火事はこわいから、強い気持ちがないと消防士さんにはなれない」と消防士の仕事への関心が高まりました。
次に、第2次の第2回イメージマップでは、第1回と比べ、「消防署と消防団など消火する人をむすんで、安全のための対策をいっぱい書いたのでよくわかった」とOA児自身が違いを振り返りました。
さらに、第3回イメージマップでは、「学校は安全か」という討論後の価値判断で、「みんなで考えを言い合いしたから、これにはこんな意味があって安全とわかった」と自分の学びをメタ認知しました。

価値づけ・意味づけ

OA児はイメージマップを好み、キーワードやカテゴリーが増えていくごとに意欲を出して取り組みました。また、教師が子どもの発言や表現物に,価値づけ意味づけする言葉がけを積極的に行うことも重要です。私は、他者評価を入れる中で、自己評価が促進されていくと実感しています。子ども自身に学習の伸びを認識させることが、学ぶ意欲の増大に大きな影響を与えると考えています。具体的に誉められて、認められて、子どもは大きく伸びていきます。「生きる力」は自ら学び、自ら考え、といった学習者自身の主体性がその根底にあります。ですから、学習者自身が自分の学びについて意味づけ価値づけし、望ましい自分へと変えていく方略が必要です。そのためにも自己評価活動(メタ認知活動)は重要な活動だと考えます。

※ 過去の実践ですが、「授業づくりネットワーク(2009年9月号、12月号、2010年1月号、5月号)」(学事出版)や、学びの場.com実践事例集、「学び合い、分かり合う授業づくり」(明治図書)等ご覧いただけますと幸いです。

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