拝啓、私の読書感想です(大造じいさんとガン)

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作成者:Satoshi Arai (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2015年1月30日の朝日新聞の連載記事「花まる先生」で紹介されたものです。
町田市立鶴川第二小学校 鈴木綾花先生の実践です。
http://www.asahi.com/articles/ASGDT4G0DGDTUZVL004.html
(無料会員登録をしていただければ全文及び授業の様子を映した動画をご覧になれます) 
実践内容だけでなく、実践に至った経緯や工夫など、鈴木先生にお聞きしたことも掲載しました。

2 実践内容

単元名

「読書郵便を送って、お気に入りの椋鳩十作品の魅力をあのひとに伝えよう」

単元目標

読書郵便はがきで椋鳩十作品の魅力をまとめ推薦するために、複数の文章や本を比べたり結び付けたりしながら読む。そこで、登場人物の相互関係をもとに人物像や場面の描写、優れた叙述について自分の考えをまとめ、それを発表し合うことでより自分の考えを広げたり深めたりできる。

単元の評価規準

[読む能力]
①人物同士の相互関係に基づきお気に入りの人物の心情や場面の描写をとらえたり、象徴性や暗示性の高い優れた叙述に気付いたりしながら読んでいる。
②魅力を感じる人物や場面、一文に対する考えを友達と相互に伝え合い、その共通点や相違点を明らかにしながら自分の考えを広げたり深めたりしている。
③自分のお気に入りの作品の魅力をまとめるために、複数の文章や本を選んだり、比べたり結び付けたりして読んでいる。

[言語についての知識・理解・技能]
文には推定、伝聞を表す文や、感動、感嘆を表す文などいろいろな性質を持つ文があることを理解して推薦文を書いている。

単元の指導計画

本時の指導

板書計画

3 この授業を行うに至った経緯

国語で先生が行っている授業は、単元を貫く言語活動です。(単元を貫く言語活動については、詳しくはこちらをご覧下さい。 物語の指導(単元を貫く言語活動)(はなまるサポート)
このような授業を始めたきっかけは、一律の読み方のみを提示する授業よりも、児童によって違う多様な読み方を互いに交流して共有し、児童自身の読みを深める機会を提供する授業を作りたいと思ったことでした。
教師から一々やることを指示するのではなく、児童が興味を持ったもの、お気に入りの部分などについて交流させると、だんだんそれについて児童が自分でしっかり説明できるようになっていきます。そういうきっかけを与えることが国語の授業では重要です。
単元を貫く言語活動では、一つの題材のみを読むのではなくて、メインの題材に関連のある他の文章も同時に読んでいきます。しかし、児童が好き勝手に関係する文章を選んできて読むのでは、読みの交流を授業で行うのが難しい。そこで今回の授業では、教科書に載っている大造じいさんとガンを共通教材として扱い、自分がどのように読んだか、どこがおもしろいと思ったかを交流する練習をする。その上で、自分で椋鳩十さんのお気に入りの本を選んで、それの読みを読書郵便の形で交流することにしました。
読書郵便は、あて名を書き住所も設定して、”特定のあの子に自分の読みを伝えよう”という形で行いました。ここには、相手意識、目的意識を持って活動することを学んでほしいという意図があります。

また、この授業実践は、まずは交流がしやすい同学年の児童同士で交流を行い、いずれは上級生や下級生、そして大人とも交流を出来たらと考えています。

4 授業の際の子どもたちの反応

児童は、今までリーフレットを作成したり読書会を行ったりと、様々な単元を貫く言語活動を行ってきていたので、これに関しては慣れています。今回はこういう形でやるのねっていう反応でした。
先生が進める授業じゃない、自分でやることを決めていいし、自分が話したいことを話していい、というところを児童は理解してくれて、だんだん楽しんで取り組んでくれるようになりました。
最初は、意見が同じ人と話し合っていいよ、次に意見が違う人とも話し合ってみよう、最後に自分の考えをまとめてみよう、という風に児童に促したりしていたんです。でも、しばらく経つと児童のほうから、「先生、まず意見の同じ人と話し合って自分の考えを整理して自信を持ちたい」「そろそろ違う意見の人とも話し合いたいです」という風に言ってくれるようになりました。そういう目的意識がはっきり持てているので、一々こちらから指示を出なさくても、勝手に話し始め、考えを深めていってくれます。こういう風にやっていくと、児童は割と主体的に生徒のほうから動いてくれるんだな思います。

5 授業を進める上での工夫

まず、児童と同じことをやってみるということです。
先生は、授業の想定を細かく立てても、児童から想定と違う反応が返ってきて、あたふたしてしまうということになりがちです。しかし、もっと気を楽にもって、子どもに合わせて授業をしてしまおうと思っています。
先生がやりたいことをやるのが授業ではなくて、児童に考える機会、道筋を与えるプランニングをするのが先生の役目だと思っています。
児童が、自分の意見を言っていいんだと思ってくると、「先生、もっとこれについて話し合いたいです」って言ってきてくれます。また、児童の様子や表情を観察していると、これはまだ話し合いの時間が必要だな、これは話し合いがこじれてきているな、などということを感じ取れます。それを感じた時に、すぐに手だてを打つことが大事だと思います。
子ども主体で考える、子どもの立場に立ってやってみる。例えば、先生が黒板にこんな風に書いたときに、子どもはどんな風にノートをとってどんなふうに考えるかな、などを考えることで、指導案だけでは見えないものが見えてきます。

6 課題点、改善点

読書郵便が全体に広まるには時間がかかるところだと思います。理想としては、学校全体に広げていきたいのですが、なかなか難しいのが現状です。
また、授業にクラスの児童全員が主体的に参加できるようにするのは難しいです。発言したがりの子とかが目立ってしまったりして。おとなしい子でも実はとても面白いことを考えていたりもするので、そういう児童の考えもちゃんと拾って交流出来たらと思います。児童全員を主役にする授業というのは難しいですね。

7 実践者プロフィール

鈴木綾花 1984年生まれ。日本女子大学人間社会学部教育学科卒業後、町田市立鶴川第二小学校教諭 2012・2013年度 国立教育政策研究所教育課程指定校 研究推進部推進委員長、 2015年度 文部科学省研究開発学校指定校 理論研究部長

8 関連記事

「大造じいさんとガン」の戦いは以後どうなるのか?
同単元の内容の発展のさせ方の参考になるかと思います。

9 編集後記

鈴木先生の実践は、児童に頭を使って考えさせ、児童同士で考えを共有することで考えを深めさせる、という私が国語の授業で必要だと思っていたことを見事に成功させている授業で、実際に取材させていただけて感激しました。
課題文章だけではなく、関連する文章まで児童自身で読まなければいけない、さらに、議論の中でしっかり自分の考えをまとめなければいけない。こういったかなり高度な内容の授業の内容の授業がどうして小学校で成功し得たのかとても興味がありましたが、簡潔にまとめると"生徒のやる気を引き出せたから"、でした。
この実践は、グループワークの弱点だと思われる、個々の生徒にかかる責任の分散、取り組みの不平等性を見事に克服しつつ、グループワークの長所を最大限引き出した授業だと思います。
グループワークを授業に取り入れたいけれど、どういう工夫をしていいか分からない、という先生方にはとても参考になるのではないでしょうか。

(編集・文責 EDUPEDIA編集部 新井 理志)

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