学力向上の秘訣~「ぐるみ」がつくる教育~②(陰山英男先生)

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作成者:Hayashi Miyajima (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2017年1月9日に開催された徹底反復研究会冬季セミナーin名進研小学校にて隂山英男先生の講演を編集したものです。
 アクティブラーニングの導入、英語の必修化、教科書のページ数の増加など、様々な問題を抱える現代、子どもたちの学力を伸ばすために教員が心掛けるべきことを紹介します。

前半はこちらからご覧ください。

2 講演内容

■昨今の教育の変化にどう対応していけばよいのか。

それは、読み書き計算の徹底反復です。徹底反復の指導により、子どもたちの脳の働きを短期間で成長させることができます。「本当の学力をつける本」でも書いたことですが、私の教えた小学校の卒業生の中で、国公立大学の医学部をはじめ、難関大学への合格者が続出しました。徹底反復は「単純暗記」と批判されることもありますが、実際に学力テストの詳細を分析してみると、伸びているのは「思考力」です。福岡県飯塚市で陰山メソッドを実践していく中で、思考力が伸びていくことは証明されてきています。

■低学年は短時間集中がポイント

山口県の山陽小野田市で実践を行った時に、低学年と高学年で宿題をしていた時間と成績の相関関係を取りました。低学年では、30分程度学習をしていた子も、2時間程度学習をしていた子と同じ程度の学力になっています。要は、短時間集中型学習が有効なのです。

■そもそも勉強とは

勉強とは、脳を上手に使うトレーニングです。「答えのない課題に挑戦する」「自分の人生をどう生きるか考える」「あの子の気持ちを考える」といったことを全て考えるのは脳ですから、「勉強する」ということは、成績を上げることだけではなく、子どもたちの全ての可能性・能力をトレーニングすることです。

脳を鍛えていくと、その成果は「集中」という形で現れてきますので、「勉強とは集中する練習である」というように私は定義するようになりました。集中力が高まることは、一定時間により多くのことをこなすことですから、やるべき学習が決まったら勉強時間は短くなるようにしなくてはなりません。

■欠落していた「時間感覚」

今までの学力観で欠落していたのは「時間感覚」です。日本の学校教育における時間感覚は、正確には「時刻感覚」でした。「3時まで頑張りましょう」「4時半までにやりましょう」というように、時刻を重視していました。「いったい何分間でやるのか」「何時間でやるのか」ということが重要であるのに、そういう意識がありません。

「時間感覚」を意識するための必需品はストップウォッチです。近年では各教室にストップウォッチが置いてあったり、キッチンタイマーがおいてありますが、非常に重要だと思います。また、時計の位置には気を付けなくてはいけません。黒板の上にあることが多いのですが、先生は時計が見えなくなってしまうので、横に置くことが良いのです。先生と児童で時間の共有ができます。

■成績が上がらない子にはどうしたらいいのか

国語・算数・理科・社会などが苦手な子どもに、その科目を伸ばすために、その科目の勉強をやらせてはいけません。なぜなら成績が上がらない子は頭の働きがまだ十分ではなく、その状態のまま学習をさせると結果が出にくく、やらせるほど挫折感を味わってしまうからです。

頭の働きを高める具体的な方法は読み書き計算の徹底反復です。特に小学校1年生の学習が重要です。小5・小6の子どもが分数が出来ないのは、分数が分からないのではなく、繰り上がり・繰り下がりの計算が出来ないからということが多いのです。 

小5になると百ます計算の足し算・引き算が1分30秒くらいで出来ている必要があります。このレベルで百ます計算ができると、異分母分数の足し算や引き算は簡単にできるようになります。異分母分数の計算が出来ない子に、異分母分数の計算を際限なくやらせるとどういうことになるでしょうか?子どもは「自分には出来ない、やっぱりだめだ」と感じてしまいます。

■「さっと出来る」ようにする

「ようやく」異分母分数の計算が出来るようになったら、次にするべきことは、同じ問題を用いて、集中度を上げ「これ以上速くすることはできない」という段階にしていきましょう。

例えば、1分と目標を決めた際に、1回で1分を切ることができるのは数人だけですが、徐々に増えていきます。初めのうちは、「みんなはまだ練習していないからできないけど、練習したら必ずできるからやってごらん」と伝えると、徐々にやる気を出す子が増え、1分で計算できる子が増えていきます。最終的に約8割の子が1分以内で計算出来るようになります。

学校では、5問程度の問題を宿題にし、さらに次の日の算数の時間でその問題をテストして、問題の解き方を覚えさせます。「小数が入ってきた」など応用問題となっても基本的なやり方が頭に入っていれば応用できます。応用的な問題を解くために、基礎力を固めておくことが重要です。

■「さっと出来る」と子供たちの自信につながる

「ようやく出来た」は実は出来ていないのです。「さっと出来る」ようにすることが重要なのです。「初めは難しかったのに、今は30秒で解けるようになった」ということが子どもたちの自信になります。子どもたちは次に難しい問題をする時でも、「繰り返すことで出来るようになる」と思うことができ、最初から集中のスイッチが入りやすくなります。つまり、集中して自分が成長した経験が多ければ多いほど、子どもは集中しやすくなるのです。

■心地よさが集中を生む

集中に必要なものは、「心地よさ」です。百ます計算をやる際にも「○○秒以内に出来なくてはいけない」といったノルマ感ではなく、「やったらできる!」というリラックス感のある環境が必要です。

そのため、先生方が子どもたちにプレッシャーをかけるのではなく、ユーモアの心を持ち、にこやかな表情で指導することが大切です。先生自身の心身の健康が良い指導には不可欠なのです。

■具体的な方法について

1.音読

体全体を使ってリズムを取りながら、はきはきとスピード感を持って音読することが大切です。

速く読むためには、リズムが重要です。そのため、音読させるべき教材は、教科書だけでなく、リズムの良い古文や漢文なども有効です。脳のトレーニングなので、スピード感も必要です。中でも重要なのは、教師がお手本を示し、全体を揃えていくことです。音読は、黙読をしているときや字を書いているときよりも、脳に効果があることが分かっています。

2.百ます計算

毎日同じ百ます計算を使ってください。タイムが上がりやすくなります。百ます計算は脳の集中力を高めるトレーニングです。タイムが上がりやすいと集中がしやすくなります。

毎日同じことをしていると、答えを覚えているだけと思うかもしれませんが、計算が速くなり集中力が高まっていきます。タイムを毎日記録し、褒めることも大切です。当然、タイムが落ちる時もありますが、そんな時は「そういう時もあるよ。大丈夫だよ。」と励ましてください。

■とにかく同じ問題を反復させていくと「突き抜け」現象が起きる

徹底反復をしていると、一気に成績が上がる瞬間が来ます。これを私は「突き抜け」と呼んでいます。突き抜けが起きると、子どもたちの学習能力は全く変わります。50点、60点しか取れない子が突然80点を取れるようになります。

この現象をどうすれば意図的に引き起こせるようになるのかというと、同じ問題をとことん繰り返すことです。かつては毎日百ます計算の問題を変えていましたが、同じ問題を繰り返すという最も横着な方法が最も効果的だと分かってきました。横着な方法は準備が短時間で出来るので継続できます。いかに苦労をせずに効果を出すか、と考えたほうが子どもたちにも望ましいということになります。

■明日からでも始めよう

3学期の1月に百ます計算を始めることはとても効果的です。なぜなら、やり方が身に着いたころに4月を迎えるので、スタートダッシュに有効だからです。

3 編集後記

子どもの学力を伸ばす際、読み書き計算の基本が大事だとおっしゃっていたことが非常に印象的でした。何事も基本を徹底して身に着けることが、応用力につながるのかもしれません。
 また、基本を繰り返し集中力を身に着けることで、効率良く学習が出来るようになるとも感じました。是非参考にしてみてください。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 宮嶋隼司)

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