正論
教師の力量の問題です。まずは授業の腕を上げることです。学級経営がきちんとできるようになって、子供一人一人とのコミュニケーションを大事にして、4月からの学級づくりを積み上げていけば、大丈夫です。
・・・などと正論を言われてしまうと学級崩壊の現実に直面している教師にとっては救いがありません。正論はしばしば人を追い詰めます。本当に学級崩壊に陥ってしまった場合、何をすればいいか、ここでは簡潔に、学級崩壊への対処の概要を書いてみたいと思います。
状況を把握する
・まず、自分の考えを整理するために、あるいは人に説明するために、担任としてどういう状況に困っているのかをノートに書き出しましょう。箇条書きでいいので、具体的に困っていることを10項目挙げてみましょう。
・何が原因になっているのかを探ります。様々な要因が絡み合っていることは間違いがないでしょうが、特定の児童や保護者との関係がうまく取れていないケースもあります。
・発達障害を持っている子供が学級崩壊の原因になっているケースも少なくないです。発達障害の子供への対応の仕方はずいぶん解明されてきていますので、専門家に相談するのもいいかもしれません。
・担任だけでどうにか取り返すことができる事態なのか、どうにもならないような事態なのか。後者であれば職員にSOSを求める必要があります。
支援体制を作る
自分の力だけではどうにもならないくらいクラスの状況が悪ければ、学年の教師あるいは全職員に「私のクラスは今・・・・・・・・・・のような状態で非常に悪いです。」と報告をしましょう。報告される側は、日頃からSOSを出しやすい雰囲気を作っておくことが大事です。報告をした時に、担任の力量不足を責めるようではいけません。支援体制を作る話し合いや前向きなアドバイスができる職員関係であってほしいです。
クラスが荒れるのは担任の力がないのが原因であるように言われますし、それはそうなのでしょうが、力の弱い担任の学級が崩壊しやすいだけで、今やどの教師でも学級崩壊に陥る可能性はあります。学級崩壊に遭遇したことのない教師や学級崩壊を脱出した経験のある教師が「私は大丈夫。」「担任の問題だ」などと言ってのけてしまったばかりに、担任が支援を受けることができず、窮地に追いやられるケースがあります。誰かを責めてみても仕方がありません。担任も気の毒ですが、子供たちへのダメージについて真剣に考えるべきです。
できるだけ早い時期に職員間で共通認識ができ、対策が取られた方が、ダメージが少なくて済みます。小学校は学級王国と揶揄されるように担任が一人で仕事をしているような錯覚に陥りがちですので、「職員集団として子供を育てているのだ」という意識を持って担任をサポートしてほしいです。
・複数の保護者の強い担任への不信任が子供に伝わり、荒れを引きおこしている場合もあります。第三者がクラスに関わり、担任との間に入って保護者とのコミュニケーションをとることによって、保護者の不信感が和らぐ場合もあります。
物理的に間をとる
学級崩壊に陥ると、児童と教師間の関係が悪化しすぎてコミュニケーションを取ろうとすればするほど互いにストレスが生じるという悪循環に陥る場合があります。
こういう場合は次のような対処を考えてみてください。
・プリントなどの「作業」の比率を上げる・・・・・深刻な学級崩壊の状態では担任が話し合いをさせようとも、何か企画をしてみようとも、トラブルが起き、ストレスがたまる一方となってしまう場合があります。無理なストレスが生じないように工夫する。
・専科制度を導入する・・・・・周りの教師の協力と管理職の理解が必要ですが、なるべく担任と児童が接触する機会を減らすためには有効です。また、別の教師がかかわることによって子供たちの気分も変わり、状況が上向くこともあります。
・崩壊した学級に人員を加配する・・・・・人員配置は管理職の仕事で、担任としては自分のクラスに人的援助が欲しいことは言い出しにくいでしょう。管理職や周りの教師が知恵を絞って、担任以外の人員を配置して子供たちと担任だけで煮詰まってしまっている世界を少しでもシェアする形を考える必要があります。
精神的に間をとる
学級崩壊の状態では、今までのやり方が通用しなくなっています。
自分の信念やポリシーを押し通すことが必要な場合と同時に、ある意味でのあきらめが必要な場合もあるでしょう。あきらめることによって担任の心に余裕ができ、ストレスの軽減につながるかもしれません。
たとえば、「教室にゴミを捨てる子供は絶対許さない」という考えで指導を推し進めるのは、一つのやり方として立派だと思います。しかし、そのポリシーに担任がこだわってしまうと、子供たちがポイ捨てを辞めなかった場合はずっと対立しなくてはならなくなります。担任が「まずは強硬な指導をすることはあきらめて、放課後、自分できれいに掃除しよう」というように考え方を変えれば、少なくとも子供側のストレスは軽減されます。その上で、荒れが引いてきた時に「この頃、ごみが減ってきたよ」という声かけができれば、子供たちも「ほめられた」ことになります。
どこまでも教師側が引き下がる必要はないと思いますが、やり方を変えることも場合によっては必要であるし、子供との距離を置く効果があるかもしれません。
病気休業する
最後の手段として、悲しい話ですが、一旦、病気休業を取った方が子供のためにも自分のためにも職場のためにもいい場合もあるかもしれません。とてつもなく無念に思えるだろうし、無責任なことをしたような気になって精神的に参ってしまう部分もあるかもしれません。
しかし、あまり悪い状態を長引かせてしまえば本当に子供も自分も立ち直れなくなる可能性があります。学級崩壊をきっかけに退職してしまったケース、うつ状態になって立ち直れなくなるようなケースも少なくありません。
病気休養しか学級崩壊を立て直す方法がないというのは教師にとってとても辛い状況で、本当はもっと支援体制を整えてほしいと思います。
対処情報を収集する
病気休養や退職に追い込まれるようなことがないように、まずは、学級崩壊に陥らないように予防することが大事だと思います。荒れてしまってから費やす労力より、予防に費やす労力の方が何倍も小さくてすみます。
一言で予防と言ってもその方法を示すのは簡単ではありません。「学級経営と授業は両輪」と言われることがあります。この両方をしっかりとできるようになる腕を磨くのが第一でしょう。
自分で考えているだけでは煮詰まるばかりなので、学級崩壊への対処の方法や予防のために何をすべきなのか、情報を収集することは重要です。ズバリ学級崩壊対処法と銘打っているものではなくても、EDUPEDIAに掲載しているような学級経営や授業に関する記事を参考にしてもらって、日々の指導を充実していくことで、学級はずいぶん良い方向へ進むのではないかと思います。ぜひ、掲載されている記事に目を通して実践を試みてください。
とはいうものの、EDUPEDIAだけで全てをまかなえるわけはないので、様々な学級経営や授業の書籍やズバリ学級崩壊対処法を記述している書籍を探す必要があります。アマゾンで「学級崩壊」と検索をかければたくさんの書籍がヒットします。とりあえず、それらを読んでみることをお勧めします。一口に学級崩壊と言っても様々なケースがあり、対処の仕方もまた様々なケースがあります。問題のある子供とのかかわりを修正する、清掃を徹底する、具体的な企画を持ち込んで目標を作ってクラスを活性化させる・・・などなど、人それぞれのやり方で荒れを乗り越えた記録があり、どれが自分や自分のクラスに適用できるかは熟考する必要があるでしょう。
複数の要因が複雑に絡み合った末の崩壊でも、情報を収集した結果、一点(数点)の改善で奏する場合もあるかもしれません。もちろん、効果的で具体的で地道な指導の積み重ねは絶対必要です。
いずれにしても学級崩壊に対する確かな処方箋がないというのは現在の小学校の苦しい実情です。担任が3人交替し、最後には仕方がないので教頭が担任についてなんとか卒業式まで持ちこたえたというような悲惨な事例も“複数件”耳に入ってきます。
最初に書いたように、予防が大事で、学校全体で丁寧な授業・丁寧な指導をする体制を整えていく必要があります。4月に受け持った時点で完全に崩壊状態であるケースもあるわけですから、「私は大丈夫」などと思っていないで学校全体として考えないと思わぬ泥沼状態に陥る可能性があるのです。
「乱暴な言葉について」なども参照にしてみてください。個々の担任に任せるのではなく、学校全体できちんとした言葉づかいを指導していけば、ずいぶん違ってきます。
教科担任制を取り入れ、多くの目で子供たちを見て、担任が情報を共有できる形を作っていくことは有効な気がします。
子供たちも保護者も大きく変化をしていることを自覚し、ここの担任の力量ではなく職員集団としてどう「子供の荒れ」に立ち向かうかを考えなくてはならない時代であると思います。
関連記事
学級崩壊という悪夢 ~いったい何なのか、どうやって立て直すのか | EDUPEDIA
学級崩壊の予兆?チェック項目とその対処1 | EDUPEDIA
学級崩壊の予兆?チェック項目とその対処2 | EDUPEDIA
等も、ご参照ください。
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