部分的な教科担任制として、手軽にできる
小学校でも教科担任制を導入しようとする動きはあるのですが、中学校と違って職員数が少ないために(私の知る限り、7人の担任に+3人の加配教員が最大です)空き時間は少なく、十分な余裕はありません。空き時間が少なければ時間割を組む段階で躓いてしまいます。小学校で年間を通して教科担任制を実施するのは、そう簡単ではありません。
小学校での教科担任制に関しては、
小学校での教科担任制
学級担任制VS教科担任制(間嶋哲先生)
に詳しく書かれていますので、ご参考に。
そんな中、意外とうまく授業交換ができるのが道徳です。教科担任と言うより、単元担任制です。道徳の授業は元々、週に1時間ペースで配当されており、一つの単元で10時間などというケースが非常に少ないため、実はかなり交換をしやすいのです。
ちなみに総合的な学習も、意外と授業交換がしやすい教科です。単元担任制は、他の教科でもできないこともないです。例えば国語の「ごんぎつね」と算数の「わり算の筆算」だけを交換するというやり方も出来ます。ただ、どちらも週に5回ペースの教科なので、加配教員の充実がないと、時間割の調整上、無理が生じてきます。
総合的な学習での教科担任制についても、下記にてご参照ください。
といっても、道徳も総合も、全面的な教科担任制にするというのではなく、部分的な教科担任制をしくという考え方です。
例えば、同学年の担任同士であれば、明日からでも気軽に交換をすることができます。規模の小さい学校であれば、他学年の教員も含めて交換を進めてみるのもいいと思います。もちろん道徳も年間の指導計画を立てて授業を進めていますが、少々指導時期がずれたとしても、他の教科に比べれば融通がききます。
まずは、学年・隣接学年で道徳の時間を同じにしておきます。これは、上手にローテーション道徳を運用していくには欠かせない条件です。道徳の時間はみんなで「木曜の4時間目」等と固定時間割上に固定しておけば、調整も楽です。
実践例②:1人の担任が2時間を担当すればいい
例えば、3年・4年で6クラス(A教諭・B教諭・C教諭・D教諭・E教諭・F教諭)が組んで道徳の授業交換を行うとします。1人の教員が年間2時間ずつを担当すれば、全部で10時間分が専科(担任以外がする)授業となります(3時間なら、15時間です)。よそのクラスに行って授業するのが負担だと思う教師もいるでしょうが、2時間であればそれほど負担感もなく、充実した授業づくりが可能です。
複雑な時間割になると思うかもしれないですが、そんな事はありません。
A教諭が、B教諭とは9月に2時間を交換、C教諭とは10月に2時間を交換、D教諭とは11月に2時間を交換、E教諭とは12月に2時間を交換、F教諭とは1月に2時間を交換と順番に交換していけば、ゆっくりしたペースであまり負担もなく交換が行えます。その間、自分のクラスでは5人の教師が2時間ずつ、合計10時間の充実した道徳授業をやってくれているわけです。
そしてこの方法は、道徳は担任が担当する時間となっている中学校でも簡単に取り入れることができます。意外と、道徳の教科担任制は教科担任制が確立している中学校では実施されていないようです。
実践例②:担任3人いれば・・・
教員が3人揃えば、1学期に2コマずつ、計6コマ(6時間)の授業を分担すれば、6コマ×3人=18コマとなり、一年の半分の道徳の時間をまかなうことができます。
道徳の授業は難しい?
そもそも、道徳の時間の進め方については、「難しい」と考えている教員が多い様に思います。下手をすれば教師も子どもも「説教の時間」と捉えており、教師にとっても子どもにとってもあまり面白くもない時間となってしまっています。定められた年間の35時間がきちんと実施されていないケースも(いけないことですが)見受けられます。
もし、こうして道徳を単元担任制にして各教師が数時間分の授業づくりを頑張れば、年間35時間の配当のうち、多くの時間の授業が充実するわけです。その上、うまくいった授業について教師同士が情報交換することによって、相互の研修となり来年度からのより充実した道徳の取り組みとして、メンバーの中に財産として残っていきます。実際にやってみると、道徳の授業をすることが楽しくなってきます。
道徳の授業に限らず、授業交換にはたくさんのメリットがあります。よそのクラスで授業をすることによって自分のクラスを振り返ることもできますし、よそのクラスの良い所、悪い所が見えて、貴重な情報収集の場となります。
ぜひ、1人1時間×3クラスからでもいいので、道徳“部分”専科を始めてみる事をお薦めします。
EDUPEDIAには、道徳に関する記事がたくさん載っていますので、下記リンクをご参照ください。
「道徳」というキーワード の学習指導案・授業案・教材 一覧
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは。
前任校で教科担任制を経験した小学校教諭です。
3クラスで分担したのですが、
週指導時数の同じものと音楽専科の空き時間を使って
行事等をふまえ、ローテーションを組んでいました。
教科担任制では、学年の他のクラス子どもがよく見え、
「担任・専科全員で学年全体を育てる」という心構えで
子どもたちを見守ることができました。
クラス同士の風通しもよくなり、とてもよかったと思っています。
また、経験のある職員と浅い職員が連携できるのも良い点だと思います。
さて、表題の「ローテーション道徳」についてですが、
個人的にはおかしいと考えます。
道徳は読み物資料を通して、今までの自分とこれからの自分を考える
「心」が大きく関わる学習です。
多くの時間をともに過ごす担任だからこそできる学習です。
一単位時間内の内容だけでなく、その後の生活も学習の一部となります。
評価するということは、
それまでの子ども・授業中の子ども・この後の変化
をみなければなりません。担任以外にできることでしょうか?
また、どの主題でも授業ができないのでは、困ります。
掲示資料づくりの分担をするのはいいと思いますが、
読み物が同じでも発問が自分のクラスの実態にそぐわないことも多く、
挿絵だけ利用して、発問は作り直すことも多いです。
学年・主題が一緒でも、読み物資料の選択が違えば、
0から作らなければなりません。
経験の浅い先生方こそ、
多くの主題と読み物に出合っていく必要があると考えます。
教科書が選定され、読み物資料の選択の幅が狭くなるのが
残念でなりません。
Anna Hirawataさん、こんにちは。ご指摘されている事、よくわかります。何をやってもメリットとデメリットがあります。Annaさんはデメリットの方が大きいとお考えのようですね。
私はメリットの方が大きいと思っています。
どの教科もそうなのですが、教材研究どころか準備を十分にする余裕がない中で授業をやってしまっているのが現状です。年間35時間×6学年=210時間分の読み物教材(しかも、数年で教科書が変わる)の研究が十分にできる資質と時間的な余裕がある教員は少ないと思います。ローテションを組むことによって少しでも教材研究・準備に時間を注ぎ込むことができる余裕を生み出すことは大きなメリットがあると思います。「教科書が選定され、読み物資料の選択の幅が狭くなるのが 残念」と書いておられるように、道徳の教科化によってさらに授業運営は難しくなっており、今こそローテションによってより充実した授業を提供できる体制を作る方が子供たちのためだと私は考えています。