被災した生徒のメンタル面・滅失品への対応(佐藤謙二先生)

1 はじめに

本記事は、東日本大震災発生時に、岩手県内の中学校に勤務していた佐藤謙二先生により執筆されました。

また、本記事の内容は、朝日新聞社「朝日Teachers’ メール 資料室」( https://www.asahi.com/shimbun/TM/ )にも掲載されています。
http://nie.asahi.com/bousai/satou-bousai3.pdf

2 対応時期

平成23年3月中旬から4月下旬

3 対応方針

被災した生徒は自宅が損壊し、制服・教科書等の物品が滅失したことにより大きなショックを受けた。また、保護者が失業(または一時解雇され)し、経済的な基盤を失い不安感も高まった。

このような中、次のような方針でこの問題に対応した。
① 教職員で分担しながら被災した生徒(新入生・在校生)の家庭訪問を行い、生徒・家族の心身の状況や流失した学用品等の実態を調べる。
② できるだけ早急に制服・教科書等の支給を行う(担当:副校長、事務主査、生徒指導主事)。

4 対応内容

(1)家庭訪問

電話(固定・携帯)は全く使用できず、また瓦礫のために車も使えず、徒歩で避難先等を回った。避難先は市が指定した避難所だけとは限らず、親戚の家が多く、見つけるのが大変だった。

家庭訪問では、生徒や家族の心身の様子を聴いた。その際

  1. 十分に話を聴く
  2. 相手の話を妨げない
  3. 相手の立場に立ち同調的に対応する
  4. 問題の原因をきめつけないこと

(『災害を受けた子どもたちの理解とケア』兵庫県教育委員会)
に留意した。

被災した生徒らは損壊した自宅の後片付けや近所の手伝いで、悲しみをまぎらわしているようだった。

被災した生徒は制服、教科書や部活動用具などを流され、

  1. 今後の活動に大きな制約が生じる不都合感
  2. 被災しない生徒から不備な状態をどう見られているかの評価懸念
  3. いつ以前の状態に戻るのか見通しが立たない焦燥感
  4. 思い出の品物を失ったことなどからくる対象喪失感に満ちること

が予想された(学校再開後は特に2.に留意し、被災した生徒が集団の中で目立つことがないよう配慮した。)

保護者との面談では、調査票をもとにして被災状況の聞き取り調査を行うとともに、要望等も聴いた。

学校側からは

  1. 学校再開後生徒の心のケアへの対応をとること
  2. 滅失した学用品等は後に支給されること
  3. 登下校の安全を確保すること(教師がついての集団登下校、通学路の安全点検)
  4. 何か相談事があれば対応すること

を伝えた。

(2)滅失した物資の支給

一番喫緊の課題は新入生の流失した制服のことであった。晴れの入学式で制服を着た生徒と着ない生徒のいる状況は絶対に避けたかった。「全員制服を着ての入学式を」を合い言葉にPTAが卒業生に呼びかけ、多くの制服・運動着が集まり、被災した生徒に支給することができた(なお、その後新しい制服・運動着等も市から無償で支給された)。この呼びかけは全国にも広がり、東京の中学校からも支援物資の制服や運動着が届いた。

5 【成果】

  • 直接、生徒や保護者に会って、話を傾聴することで、深刻な悲しみの一端を理解できたように思われる。
  • 訪問地域を分け、全職員が役割分担して訪問し、時間短縮が図られた。
  • 被災した新入生にも家庭訪問を行い、学校再開までの見通しを伝えるとともに、保護者のニーズを把握できた。

6 【課題】

  • ツイッターなどを活用して支援先をより多く開拓すれば、より早く生徒に物資を支給できた。

7 編集後記

被災直後の状況において、生徒に対しきめ細やかなケアを行う事は重要ですが、非常に労力がいることです。そんな中でも、教職員全員が連携しながら、家庭とも連絡をとることが、少しでも生徒の負担を和らげることにつながるのではないかと思います。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 薗田誠也)

8 協力団体紹介

朝日新聞東京本社 CSR推進部

朝日新聞社は先生方向けに朝日Teachers’ メールを毎週発行し、授業に使える記事などの情報を配信しています。そのホームページ「朝日Teachers’ メール 資料室」( https://www.asahi.com/shimbun/TM/ )には、新聞を活用した授業をサポートするためのいろいろなサービスが掲載されています。

23

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA