学校の先生方へ「知ってほしい…病気の子どもたちのこと」②

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

本記事は、赫多久美子(かくたくみこ)さんによる全10回連載の第2回目となります。

 第1回 『A君の入院』 http://edupedia.jp/entries/show/1415

この連載で扱われるケースは全て赫多さんのご経験などを基にした架空のお話です。

1 第2回 保健室で

受話器を置くと目の前の席から、熱井教頭先生が心配そうに声をかけてくださった。

「春野先生、どうかしましたか?」

「教頭先生、うちのクラスのA君がしばらく大学病院に入院するそうです。右足の痛みで検査に行ったのですが…お母様もかなり慌てておられるご様子でした。精密検査の結果はまだ出ていないそうです。」

「A君といえば、陸上大会の100m走で入賞したあの子ですよね?」

教頭先生はクラスごとの集合写真で名前と顔を確かめている。

「う~ん、入院ですかぁ。とにかく校長先生が出張から戻られたら、私から伝えておきましょう。保護者からまた連絡があったらすぐ教えてください。…まあ、そう心配していても仕方ないですから、詳しいことが分かったらこちらで何ができるかを一緒に考えましょう。」

(そう、まず自分が落ち着かなきゃ。えっと、学年会の前に、養護教諭の深見先生に伝えに行かなくては。)

教頭先生に礼をすると保健室に向かう。
一昨日A君に受診を勧めてくれた深見先生は、この道30年の大ベテラン。書類整理の手を止めて一通り私の話を聞くと、窓の外に目をやりながら言った。

「変なカンが当たっちゃったのかなぁ。」

そして向き直ると、真っ直ぐに私の目を見ながら

「春野先生、医院から大学病院に回されて、即入院っていうことは、A君はかなり重い病気かもしれない。…もちろん、そうじゃないことを願うけど。」

「重いって、足の病気で? えっと、あの…何か悪い腫瘍とか…ですか?」

「そうね、その可能性もあるわよ。まあ、今は保護者からの次の連絡を待ちましょう。親御さんはキツイでしょうね…。それに、あの活発なA君が病院のベッドの上で安静にしてなきゃならないっていうのも、相当キツイだろうなぁ。」

(そうだ、A君は今どんな気持ちで病院にいるんだろう。

大学病院はここから30分以上もかかる隣の市にある。何年か前に親戚のお見舞いで行ったことがあるけど、迷いそうになるぐらい大きな建物だった。

あの病院の、白い病室の中の、白いベッドの上にポツンといるA君。注射を打たれたり、痛い検査を受けたりしなければならないのだろうか。それに悪性の腫瘍だったらどうしよう…)

涙が溢れそうになる。

「春野先生、しっかりして!」

肩をポンと叩かれて我に返る。深見先生が私の顔を覗き込んであきれたように言う。

「もし何か病気だったとしても、大学病院で最先端の治療を受けて、A君は元気になって戻ってくるから!今から先生がめそめそしてて、どうすんの?」

「す、すみません。あっ、学年会が始まるので…深見先生、ご心配かけてすみません。また相談に来ます。」

今はとにかく冷静にならなくては!そう自分に言い聞かせて、保健室のドアを閉める。さあ、次はA君のことを学年の先生方に話して、いろいろアドバイスをもらおう。学年会のファイルや記録ノートを抱えなおして、ゆっくり階段をのぼる。

一人で抱え込まないために

子どもの入院直後から、保護者からの情報は管理職に報告しましょう。養護教諭は、病気に関する知識や対応を心得ている強力な味方です。学年の教員とも情報共有をしてください。担任が一人で悩まないために、また子どもに対して適切な対応をするために、校内のチームワークが必要です。ただし、病名・病状は子どもの個人情報です。守秘義務があることを忘れずに。

第3回 校長室で

http://edupedia.jp/entries/show/1518

2 投稿者プロフィール

赫多 久美子 (かくた くみこ)
元都立特別支援学校病院内分教室・訪問学級担任。
現在は大学非常勤講師として教員養成に従事。

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