学校の先生方へ「知ってほしい…病気の子どもたちのこと」⑨

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

本記事は、赫多久美子(かくたくみこ)さんによる全10回連載の第9回目となります。
 第1回『A君の入院』  http://edupedia.jp/entries/show/1415
 第2回『保健室で』  http://edupedia.jp/entries/show/1480
 第3回『校長室で』  http://edupedia.jp/entries/show/1518
 第4回『靴箱の前で』 http://edupedia.jp/entries/show/1548
 第5回『教室で』   http://edupedia.jp/entries/show/1568
 第6回『メール』   http://edupedia.jp/entries/show/1682
 第7回『お見舞い』  http://edupedia.jp/entries/show/1734
 第8回『学級だより』 http://edupedia.jp/entries/show/1799

この連載で扱われるケースは全て赫多さんのご経験などを基にした架空のお話です。

1 第9回 復学支援会議

「風吹先生、お母様、わざわざお越しいただきありがとうございます。」

「いえ、校長先生、春野先生、深見先生、お忙しいところお時間いただき、こちらこそありがとうございます。A君ご自慢のひなた第三小学校を訪問できて光栄です。今日はよろしくお願いします。
早速ですが、まずお母様から今後の外泊や退院予定についてお話しいただけますか?」

「はい。今週は土、日の2泊、来週は金、土、日と3泊の外泊が決まっています。月曜日に病院に戻り、検査をして特に問題が無ければ、再来週の土曜日には退院できると主治医から言われました。」

「良かったですね。A君、本当によく頑張りましたね。」

「ありがとうございます。先生方をはじめ皆さんのおかげです。ひな三の皆さんにいろいろお気遣い頂いて、本当に感謝しております。」

「失礼します。お茶をお持ちしました。」

「ありがとうございます。」「すみません。」

「冷めないうちに、どうぞ。桜木さんの淹れてくださるお茶は美味しいですよ。…あら、今日のはまた格別のお味だわ。」

「ふふっ、校長先生、何も出ませんよ!」(笑)

「いただきます。…本当に美味しいですね。いやぁ、私もあおば学級の担当になって、いろいろな学校からお子さんをお預かりしますが、こちらの学校のサポート体制は抜群です。A君が『ひな三は最高の学校だよ』って自慢する気持ちがよく分かります。」

「あらあら、お褒めに預かって光栄です。こちらこそ、A君があおば学級でお世話になって、子どもたちも私たち教員もいろいろ勉強させていただきました。ねえ、春野先生?」

「はい、本当にありがとうございました。A君がそちらで学習を継続できて本当に良かったです。テレビ会議システムで合同授業もできて、クラスの子どもたちもA君が入院していても、いつも近くに感じることができました。私も風吹先生のアドバイスでどれほど助けられたことか。本当にお世話になりました。あっ、これからもよろしくお願いします。」

「あ、はい。…改まって言われると緊張しちゃいますね(笑)
えー、では、次に、ひな三への登校についてですが、まず来週の金曜日の午後、病院から直接お父様の車で学校に寄るというのはどうですか?学籍を戻すのは、正式な退院の翌日になると思いますが、その前に試験登校というかたちで。」

「もちろん。こちらの方は大丈夫です。今日も後でご一緒に見ていただきますが、車椅子での移動に関して、特別教室に移動する動線の段差の解消、トイレの手すり等対策はほぼできています。車椅子用の机も市内の特別支援学校から今年度一杯お借りすることができました。一昨日こちらに届いて、6の2の教室に置いてあります。A君に実際に試してもらいましょう。」

「それは素晴らしい!ありがたいです。えー、時期的に問題は無いと思いますが、校内でインフルエンザや風疹などは…」

「深見先生、どうですか?」

「今のところ、そのような欠席者は出ていません。感染症の児童が出た場合は、すぐにお母様にお知らせするつもりです。」

「深見先生、よろしくお願いします。しばらく学校ではマスクをして生活となります。A君は体力的には問題はありませんが、はじめは、2、3時間の登校からスタートするのがいいと主治医も言っていました。様子を見て、フルに近づけていくことになります。

車椅子から松葉杖に移行していくこともあって、何かと気遣っていただくことが多いと思います。とにかく手術をした右足の骨折だけは避けなければなりませんので、その点はご配慮をお願いします。本人もよく分かっているはずですが。

それから…A君はあまり気にしていない様子ですが、髪の毛がまだ十分に生えてきていません。頭部の保護のために授業中も帽子を着用することになります。同じクラスの子どもたちは、テレビ会議でA君の姿を見慣れていると思いますが、他のクラスの子どもたちに対しても何らかの…」

「その件は、私が責任を持って全校児童に伝えます。ひな三の子どもたちは、A君が当面の間、車椅子とマスクと帽子を必要とすることをちゃんと理解して対応できるはずです。ご安心下さい。」

「校長先生、よろしくお願いします。うーん、やはり、担任の先生はもちろん、さらに校長先生、教頭先生、養護の先生もお見舞いに来られる学校は違いますね。…さすがだなぁ。」

「あっ、熱井教頭は本日午後から出張で… 。風吹先生にくれぐれもよろしくお伝え下さいとのことでした。先生にお会いできないのをとても残念がっておられました。」

「そうですか。あの時は、A君と教頭先生と実習の学生さんも加わって、サッカー談義で盛り上がりましたね。」

「まあ、そうだったのね。お母様、何か他にご心配なことはありますか?」

「主治医から、退院後も、1週間弱の入院治療や検査入院があると言われています。
その間の学習も青葉学級で対応してくださるそうなんですが…」

「その件に関しては、私がお見舞いに伺った時に風吹先生から伺いました。
学籍がひな三に戻った後に、短期入院して青葉学級で学習した日に関しては
こちらで出席扱いにできると教育委員会に確認しました。

緑ヶ丘小学校の校長先生が各方面に働きかけて実績を積まれた結果だと伺いました。風吹先生には、その都度、面倒な書類を作っていただくことになりますが。
そもそも、転校手続きなどしなくても入院中の教育は保障されるべきだと私は思っているんですけど。」

「私もそう思います。…実は、Aには転校とは特に言ってないんです。」

「確かに、転校という言葉はショックを与えますよね。…ただでさえ入院でショックなのに。」

「そうですね。地元の学校から転校しなければ、病院の学校で教育が受けられないというのは、本人やご家族にとって気持ちの上で納得できませんよね。」

「青葉学級のように、短期入院の子どもたちを学籍の移動無しで受け入れているところは、少しずつ増えているようですが…長期入院であっても、地元の学校に所属していて、更に病院の学校でも学べれば、双方からのサポートを正式に受けられることになりますよね。早くそういう制度になればいいなと私も思います。」

「子どもを中心に考えれば、それが一番…ですよね。」

校庭に面した水道で

「春野先生、それ、A君の上履きですね。」

「あっ、桜木さん、先ほどは美味しいお茶をありがとうございました。」

「ふふっ、どういたしまして。今日のA君のお母さん、嬉しそうでしたね。校長先生も最高にゴキゲンで。」

「ええ、A君、やっと退院ですから。」

「私も嬉しいです。あれから半年ですね。…あの日、私がお茶を持って校長室に入ったら、お母さんが泣かれていて…先生方も深刻な表情で…
私、どうしようかと思いました。」

「そう、半年前になるんですね。…突然の入院だったから、みんなショックで。
あれからつらい治療に耐えて、手術もして、やっと帰ってくるんですよ、A君。
桜木さん、その節は千羽鶴にご協力をありがとうございました。ひな三のみんなの願いが届いたんですよね!
この上履きも、お留守番ご苦労様。やっと履く人が帰ってきます!きれいになってお迎えしようね!!」

「ふふっ、春野先生も嬉しさ全開ですね。それ洗い終わったら、主事室に持って来てください。日当たり抜群の上履き干しの特等席を空けておきますから。」

「ハーイ!よろしくお願いします!」

退院の予定が決まったら

復学に際して、どんな注意や配慮が必要なのか、関係者が集まって確認し合う必要があります。是非、復学支援会議を設定してください。

このように復学する学校に、病院の学校の担任が訪問するケースの他、病院側がコーディネートして、病院で行われる場合もあります。いずれにしろ、担任だけでなく、管理職や養護教諭が同席することが必要です。

本人と保護者の不安をできるだけ解消して、その日を迎えられるようにしてください。

第10回(最終話) エピローグ

https://edupedia.jp/a/U97bnb0A6uTRdFSB

2 投稿者プロフィール

赫多 久美子 (かくた くみこ)
元都立特別支援学校病院内分教室・訪問学級担任。
現在は大学非常勤講師として教員養成に従事。

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