【パネルディスカッション(第2部)】五月祭教育フォーラム2018『ブラック化する学校~多忙の影に潜むものとは~』

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作成者:高木 敏行 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、2018年5月20日に東京大学で開催された五月祭教育フォーラム2018『ブラック化する学校~多忙化の影に潜むものとは~』内で行われた、パネルディスカッションの内容を記事化したものです。

登壇者である内田良氏(名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授)、隂山英男氏(一般財団法人 基礎力財団理事長)、鈴木寛氏(東京大学、慶応義塾大学教授/文部科学大臣補佐官)、妹尾昌俊氏(教育研究家/中教審 学校における働き方改革特別部会委員)と、本フォーラムを主催するNPO法人ROJEの学生登壇者、横田和也の5名が、議論を交わしております。

第2部では、主に部活動以外の肥大化した学校、教員の役割や、その解決の必要性、解決に向けた方策について取り上げています。

関連記事も合わせてご覧ください。

妹尾昌俊先生基調講演

内田良先生基調講演

パネルディスカッション第1部

内田良先生インタビュー

隂山英男先生インタビュー

鈴木寛先生インタビュー

妹尾昌俊先生インタビュー

【五月祭教育フォーラム2018】「教員の多忙化」記事特集ページ

2 パネルディスカッション(第2部)

部活動以外でも肥大化する学校の役割

横田:続きまして、部活動以外の様々な学校の役割をどう変えていったらいいのか、といった話をしていきたいと思います。 妹尾先生、 部活動以外で、学校が担っている様々な役割にはどのようなものがあるのでしょうか。

妹尾:先ほど講演の時に「多忙の内訳を見よ」という話をしましたね。部活動の割合が大きいのは確かなのですが、それ以外にも小中ともに、成績処理やテストの採点等にもかなりの時間を割いています。授業準備にかける時間も一概に悪いとは言えず、むしろもっとかけた方が良いのかもしれませんが、皆さん結構オリジナルの教材を使っていて、他人が作ったものは使いにくいなどと言ってなかなかシェアしないし、使っていないという問題もありますよね。あるいは、採点などもコンピュータやAIで大分できるような時代になってきていますが、予算の問題もあって、まだそのようなシステムを導入できていない学校が大多数であるという問題もあります。行事の準備時間も大きいところです。

あとは、1日に占める比重が高いのは、給食・掃除・昼休みですね。僕はアレルギー対応や食育などは教師がかなり担わないといけない部分があると思いますが、もっと日常的には、地域のおじいちゃん・おばあちゃんが入って、見守りは一緒にやっていこう、教師はゼロにはならないけれども、3クラスに1人ぐらいは配置しよう、ぐらいにならないかな、などと思っているんです。小学校の低学年では難しいかもしれませんが、高学年から導入していきましょうというのもありなのではないでしょうか。

掃除だって毎日やりなさいということは学習指導要領には書いていないですし、掃除用具って凶器にもなるわけですけど、おじいちゃん・おばあちゃんに攻撃する子どもはおそらくいないですよね。なので担任がいるより実は良いんじゃないかと思ったりもするんです。日本の教育は全人格を育てるという面もあるのだけれども、何もかも担任が責任を負わなければならない、私が1番この子達のことを分かっている、という責任感と、ある側面では自己陶酔とプライドのもとで運営されてる部分があるので(それはありがたいことでもあるけれども)、もう少し緩やかにしていくことも大事だと思います。

もう1つ考えないといけないのは、例えば経済的な支援を受けている困窮家庭が、1995年は16の家庭に対して1つぐらいの児童・生徒でしたが、2013年には6家庭に1つになったと言われています。つまり、非常に家庭がしんどくなってるんですね。そういった中で、東京大学の牧野篤先生は、学校は既に教育機関じゃなくて福祉機関になってるんじゃないか、というお話をされています。例えば親の相談にさんざん乗らないといけないとか、あるいは親が中々対応できないので教師が朝に家庭訪問までしっかりやってやらないといけないとか。非常に難しい時代になっているのは確かなんです。でも教師の専門性はそういう所にあるのかというと、福祉の部分にはあまりない。やはり授業や学級運営を中心とする教育の部分にシフトしていかないといけないので、(教育ですらもっと色んな人と分担した方が良いなと思ってますけれども)、特に福祉的なケアや、家庭支援の部分はもっと他のスタッフや行政にも分担できるような世の中にしていかないといけないなと思います。

2020年の教育改革に向けた懸念

隂山:私は学校関係はもう次のテーマを意識しておかなければいけないと思います。教職員の残業が増えたとか、夜遅くまで学校が開いているっていうのは、ここ十数年だろうと思うんです。ではいつから始まったかというのは、学力低下問題の頃からなんですよ。だから2000年・2002年の例のゆとり教育の所で大きく教育の流れが変わったんですね。そして今2020年から更に変わろうとしているわけですよ。また、今ものすごく教科書が分厚くなっているということで、今や中学生は通学する時に、今まで私たちが使ったような学生鞄って使ってないですよね。全部リュックですよね。場合によってはもう登山リュックみたいに重くなってます。小学生の算数の教科書は上巻・下巻がなくなり、B5からA4になって、昔の2倍以上の重さになってるんです。しかも内容も相当高度になってきています

2020年に向けて考えて欲しいのはここからです。平成24・25年頃から、落ち着いていた子ども達の不登校がまた増え始めているんです

先ほど妹尾先生から言っていただいた「子ども達の生活の問題」。早寝・早起き・朝ご飯はずっと改善傾向を示していたんですけど、見事に平成24・25年から逆転し始めました。ここに今スマホが加わっています。スマホにのめり込んだ子ども達はもはやゲームをすることもできません。ゲームをするほどの集中力がないんですね。10分・15分ごとにLINE・YouTubeなどを切り替えてやっているというのが現実です。また仙台市教育委員会のホームページを見ていただきたいんですけれども、スマホがいかに子ども達の学力に深刻な影響を与えるかということを、この4月に報告をされています。すさまじい事が今また起きています。

今回のフォーラムで私が最も皆さんにお伝えしたいことは、2020年に日本の学校教育はまた破綻するんじゃないか、ということです。というのは、校内暴力の発生率が見事に平成24・25年から小学校では上がり始めているんですけれども、更に恐るべきは、平成27・28年の2年間で急増してるんです。

その結果として、少し下がってきた高等学校と逆転して、小学生の暴力発生率は高校生の2倍を超えてるんです。そしてその内容を文科省も提起していますけど、小学校の1年生から子どもが荒れて、担任の先生を殴る、蹴るということが起きているということなんですね。その子達は3年・4年になっても改善しないからこの急増があるのではないでしょうか。もしそうならば、あと2年経ってこの子達が中学へ行けば、ずっと下がってきている、でも高い水準の中学校の暴力発生件数をまた急増させるのではないかと心配しています。これが教育改革の行われる2020年に起きてきます。

余談ですが、私は最近退職して塾みたいなものを始めたので、塾の関係者と色々交流があるんです。どの塾の人にも話を聞いてびっくりすることに、この10年間、例の学力低下問題の時からどの塾もものすごく業績を伸ばしているんです。そして3月・4月のコマーシャルでは塾のコマーシャルがどれだけ多いか。東京界隈でも地方に行っても、駅のすぐ前は大体塾が1軒だけじゃなく何軒もできているようになっています。

この働き方改革は、やはり学力の問題、学校の本分である学習の問題を真ん中に据えておかないと、単純に先生方が何時になったから帰っちゃいましたということをやってしまったら、先ほど内田先生が今の熱が冷めたら恐ろしいことになると仰っていましたが、その通りなんです。恐ろしいでは済まない。今度こそ学校制度そのものが破綻するのではないかということを今怯えつつ、日々過ごしています。個人的にはそうならないように指導は少しやっていますけれど、それはさておき、この2020年に起きてくるであろう出来事というのを、僕はきちんと理解した上で働き方改革をやらなければいけないのではないかと思っています。

新指導要領と現場の変容

横田:ありがとうございました。今陰山先生が仰っていた2020年に向けて、学校の働き方を変えていくだけでなくて、学校の先生の教える授業の内容・中身を変えていこうとする動きが、新指導要領の改革として現れてきていると思います。文部科学省の鈴木先生の立場から、新指導要領にはどういった意義があって、学校現場はそれに対してどう変わっていくのかという話を伺えますでしょうか。

鈴木:私は実はOECDの教育スキル局のアドバイザーもやっているので、各国の教育関係者と話をすることが多いのですけれども、先ほどの「学校が福祉施設化している」という話と、陰山先生の仰った「暴力問題に対応しなければならない」という話。よくエピソディカルに言うのは、中学生が補導されて、親が引き取りに行かなければならないという時に、教員も引き取りに行くというのは日本では教員、保護者、国民も当たり前だと思っています。でもこの話を外国人にすると、クレイジーだと言われるんです。

そもそもTALISで、教員の労働時間の調査をしているんですけれど、教員とは何かという、教員のファンクションの定義が違うんです。そして日本の教員の労働時間には当然補導の対応、暴力の問題、それから福祉の問題、これらを含めてあの数字になっているわけです。要するに日本の教員は、あまりにも教員以外の仕事をしすぎている、あるいは国民の側がさせすぎているという基本理解を、まずこの一億三千万人の全国民が持たなければならないのです。

じゃあその上でどうしますか、という話なんです。明らかに人が足りないんです。東日本大震災を見ていると、やはり学校というのはものすごい機能を持っているんです。子そもたちの安否に関する情報を、震災当初市町村の総務部局は全然分かっていなかったんです。ところが学校を再開した瞬間に、その捕捉率が急に上がるんですよ。福祉どころか安全や防災機能も学校が担っているんです。

私は、日本が100年かけて作ってきたこのスクールのファンクションは残した方が良いと思います。逆に言うと残すためにもこのスクールに対して、学力指導・学習指導の専門家である教員を支えるために、福祉の専門家、あるいは非行問題などの専門家をどれだけ投入するか、という議論を、文部科学省だけでなくて、警察庁も厚生労働省も、総務省も含めて行わなければならないと思っていますし、学校、市町村、県議会でもやって欲しいです。

これは言い訳するようで恐縮なんですけれども、国政ではこの議論は相当しんどいです。もちろん文部科学省は頑張ってやっていますけれども、国会の状況をご説明しますと1986年、私が社会に出たとき、全世帯の中で子どものいる世帯の比率が46%でした。今は23%です。さらに地方はもっと少ないわけです。そうすると子どもに関する予算を増やすという政策を支持してくれる人は15%ぐらいしかいないということです。残りの85%は金を取られるばかりじゃないかと思うわけです。去年の12月に死ぬ思いで高等教育の無償化8000億円を取ってきました。しかしこれは異例中の異例で、教員の皆さんには申し訳ないけれども、教員定数問題で、教員の待遇は現状維持が精々です。文科省としてそこの攻防戦はもちろん頑張りますが、国政では教育は票にならないのが現実です。更に言うと、例えば私が国会に行った2001年の時、政治家・国会議員の必修科目は教育と安全保障問題でした。これは絶対政治家としてはやらなければならない。加えてあと一つ農林とか経済産業とか貿易政策とかそういうのがある。しかし今、与野党どっちに行ってもいわゆる文教族がとても減っているんです。説明する役人の方が多い。国会の最重要法案は大体3つか4つありますが、教育はいつも補欠の1番か2番なんです。それでずっと試合に出られずに現状維持になってる。つまり、教育の重要度はとても落ちている。

ただこれが、市町村や県の話になってくると話が違ってきて、地方自治体選挙の時に教育政策は首長にとって非常に重要な政治案件の3つのうちの1つに入るんです。地方自治体選挙というのは投票率が低いですね。これ自体は良いことじゃないんだけれども、さっき陰山先生が「校長会が傍聴に行け」という話をされましたけれども、こういうの効くんですよ。あるいは選挙の時に、特に首長選挙っていうのは1人しか当選しないから、キャスティングボードを握ることができるんですよ。

さて、学校の先生に何をしてもらうのか、してもらうならそれは無料ではできません。やっぱり学校にもっと助っ人を送り込むしかないでしょう。そして助っ人の送り込み方は市町村によって、あるいは都会と地方によって、あるいは各県によって必要な人材が違うんですよね。紋切り型の人材を分厚くするという話ではなくて、各地域の文脈に応じて「ボランティアがちゃんとやれるところ」「お金を払ってプロフェッショナルに頼るところ」とに分けるいうことを、まさに1500市町村ごとに議論をしてもらうってことがこれから大事になると思います。

教員の給与保障と引き換えの教員免許更新制

隂山:なぜ地方議会が大事か、これがほとんど知られていないんですよ。教育予算で例えばIT予算がどれだけになりましたとか、ありますよね。実はあれは補助金という形で地方に送られて、それを教育予算に使っていいかどうかは、その地方議会と首長が決めるんです。だから、今度これが教育予算でいくらになりました、というような話を聞いたとしても、その通りに使われることはまずないんです。だから、コンピュータの設置率などというのは、大きな格差が起きているわけなんですよ。

ところが教育関係の予算でかならず教育に使わなければいけない予算はたった一つだけあります。教職員の給与です。だから教職員の給与は基本的に下がることはありません。文科省はここのところだけは必死になって頑張って残したんですよね。ただ色々なバッシングもあったので、十年前その代わりと言っては何だけれども、教員免許の更新制が出てきました。あれは僕は相当、第一次安倍内閣の教育再生会議の時の議論になって、慎重であるべきと言いました。でも、それは通りませんでした。なぜならあの時に福岡と北海道で起きたいじめ自殺事件の時の教育委員会と学校の対応は如何せんどうしようもなかった。でもこれは全国の学校や教育委員会からすればきわめて特異な、粗悪な事例だったんだけれども、通じないんですよ。「それが全部でしょう」みたいな言い方をされるわけです。

これが今は重いものとなって影響し始めました。妹尾さんがツイートされてましたけれども、志願者が減って、ついに教職員が足りなくなってきた。しかも今臨時講師の確保は非常に難しいのです。なぜなら一度退職して戻ろうかというときには免許が失効していて、その復活にはひどく手間がかかるからです。

今日の新聞にも出ていました。うっかり免許の更新を忘れていて、慌てて取ったから三日前にセーフでした、でも後三日遅かったら、失職していたという先生の話。それが主任クラスでもそうなんですよ。つまり、自分の免許のことを第一に考えなければ、学校のことなんか考えてられない。そんな状況で2020年を迎えることに、政治家の方々も危機感を持ってもらえたらいいのですが。その点では、安倍総理が、「学校の先生方も大変だし何とかしたい」ということを国会で仰ったというのは、正直言ってびっくりしました。ぜひ改善してほしいと思うのです。

ついでにもう一つ、子どもの非行への対応は教員の業務になっています。
限定四項目という、校長が教員に勤務を命じることのできる項目の中に入っているのです。よって現在の制度では、子どもが非行を起こした時には学校の先生は対応しなければいけないと法制度上なっていますので、これも注意しておいてください。

現場の教員に何ができるか

横田:ありがとうございました。ここでお時間が迫ってまいりましたので、最後に皆さんに「教員自身に何ができるのか」という点で話をしてもらいたいとおもいます。先ほど先生方の話の中で「学校の先生は、子どもの為なら何でもやってしまう」といった話がございましたが、その状況、あるいはそれをつくりだしてしまっている、私たち学校を取り巻く人々を変えていくためにはどのようにしたらいいとお思いでしょうか。妹尾先生、お話を伺えますでしょうか。

妹尾:僕は本のタイトルでも、「半径3mからの学校改革」と書いたんですけど、本当に身近な部分からできることは多いんじゃないかな、と思ってます。部活動の、休養日増やしましょう、数を見直しましょうというのは嫌われるかもしれないけども、ぜひ校長先生も言ってほしいし、そういう校長を支えるためにはどんどんアイデアを職員室でも出してほしいなと思っています。

もっと具体的に言うと、高校はまだまだ少ないけれども、小中学校ではそれなりの数の校内研修というものをやっているんです。ベネッセさんの調査によりますと小学校で一年で平均20回くらいやってると言うんですよ。授業研が多いと思うんですけど、一度や二度は授業研をつぶしていただいて、(いや授業は大事ですけども)やっぱりこのままの長時間労働ではまずいよねというような話をしたり、部活でも部活以外でも見直すべきところや、助っ人に頼むべきところなどを校内研修でも話していただきたいな、と思います。で、そういう時にはやっぱり、子どものためとか効果があるとか、あるいは、場合によっては根拠なき根性論みたいなものを基にするのではなく、効果は本当にあるのかどうか、副作用の大きさはどうなのか、あるいは効果があるとしてもコストや時間、優先順位の面でどうなのか、そういう思考や議論の仕方というのを大事にして頂きたいと思います。

今日の話を聞いて、来場者の皆さんに希望が出たのでしょうか。教員志望者をさらに減らしてしまったんじゃないか、と心配をしているんですけど、冒頭申しましたように、教師はとてもやりがいのある仕事です。でもやりがいだけに甘えてどんどん先生にお願いはできないので、いろんな人が入りながら、教師も今の使命感は大事にしていただきながらも、分担をして自分の本業を大事にしていただくということと、もう一つは自分自身の時間を大事にしてほしいと思います。子どものためとか、伝統で続けてきたことだからとか、教員がよく使うのは、三人称ばかりでしょう。本にも書きましたけど、アンパンマンみたいに人のため人のためって、あげるばかりじゃなくて、ドキンちゃんの発想が大事だと思いますね。「私はこれしたいのよ」っていうね。自分はこういう意味で早く帰りたいとか、こういう意味で時間を大事にしたいとか。24時間、どう設計するか、あなた自身の人生なので。と最後に申し上げておきたいなと思います。

横田:ありがとうございます。これから鈴木先生、陰山先生、内田先生にもそれぞれ、教員自身ができることについて、お一人ずつお話を伺っていきたいと思います。鈴木先生まずよろしいでしょうか。

鈴木:はい。教員の皆さんにはもうちょっと、社会の仕組みとか社会のツボとか、そういうことをもっとちゃんと勉強してほしいですね。逆に言うと日本人の勉強で最も抜けていることは、自分の様々な基本的人権が損なわれたときに、まずは自分で侵害された権利を取り返すことを自分で主導することです。どこにどう助けを求めたらいいのか、それも、オープンで行くのか裏から行くのか。要するに世の中には表の仕組みである制度の部分と、実態論としてどこのボタンをどういう順番で押していけば世の中は変わるのかというのがある。

やっぱり根回しとかは大事なんですよ。例えば学校運営評議会の会長に、PTAの副会長に根回しをして、学校運営評議会で諮ってもらうんですよ。あるいは県議会の知り合いに根回しするんですよ。こういうことは良くも悪くも昔組合がちゃんとしていた時は先輩から教わったんですけども、権利の主張という伝家の宝刀をちらちら見せながら、まずは熟議でいろんな合意を形成する、自分の権利を多くの人たちの支持を得ながら実現していく、こういうことを教育界、まずは教員自身が学びなおしてほしいと思います。そういう教員に習わないとこの国の人はずっとブラック企業、ブラックが治らないんですよ。欧米諸国ではありえないことが常態化しているわけでしょう?こういうことが長年放置されているというのは極めておかしなことです。

特に、社会科の先生いるでしょう。なぜ公民、政治経済を教えているんですか。あるいは世界史の先生いるでしょう。個人が制度や大きなものに対して歯向かうことができない場合にはどうするのか。連帯するんですよ。だからこそ人間は世界史を学んでいる。社会科の先生がただ社会科を教えているだけではなくてちゃんと我が事として使う。これは2020年対応の教師力の向上にも直接繋がるんですよ。もちろん授業改善も大切ですけれども、まずは生徒の、そして生徒の一番身近にいる教員と保護者がハッピーになるために、どうやったら今の悪循環から好循環に変えていけるのか、そのための様々な手練手管、プロセスのケースを、研修会で取り上げてほしいです。

陰山先生というのはそういう手練手管の名手なんですよね。よく土堂小学校の校長の時に僕に直接電話がかかって来たんです。「国会でこういう質問をしろ」と。私は命令通り質問して、当然予期した回答を得て、それをすぐコピーで送るわけです。それをもって陰山先生は尾道や広島の教育委員会に行く。そういう戦略性と言うか、したたかさがある。

この日本の教育コミュニティは文科官僚を含めてしたたかさが足りなさすぎる。生徒を守るためにはもっとしたたかになっていただければと思いますし、私はそのための研修であればいくらでも労は惜しみません。そういうことを最後に申し上げておきたいと思います。

横田:ありがとうございます。続きまして陰山先生からも一言お願い致します。

隂山:一つはネットワークですよね。熟議も大切なんですけれども、結局教員だけで話し合ってしまうといけない。教員組織は周囲の人達にものすごく影響を与える組織なので、もっと外にネットワークを作って行っていただきたいです。教員になる人間もいれば文科省に行く人間、それからメディアに入っていく人間、学生時代のうちに仲良くなっておけば、組織に毒されることなくネットワークというのは形成される。そもそもこの組織(ROJE)やイベントというのはそうして作られていますしね。

そして一方、僕が例えばいろんな政府の審議会に行ってみたりしても、現場の人間だけにしか認めてもらえない。ところが内田さんや妹尾さんというのはそういうことではなくて、様々な問題点を注視してこられましたが、それが影響力を持った背景は、やはりTwitterですよ。Twitterを通じて、既存の組織にとらわれない形で 、若い人たちが素直に発言した。 これがものすごく大きいと思うんです。そしてこの若い人たちが、学校現場を良くするために、新しい生産性のある指導方法というのを求め始めている。僕はこのネットを介した新しい若い教師集団、教師ネットワークというものが今後伸びて行ってくれるんじゃないかなと思います。

本当に教師というのはすごくいい仕事だし、これからどんどん可能性が開けていくと思います。色々な厳しいことを言いましたけれども、それは道を開いている人間が最も注目されるということです。新しい時代の教師のヒーローというのが生まれてくると思いますので、頑張って欲しいと思います。

横田:ありがとうございました。最後に内田先生から一言お願いします。

内田:これから学校が抱えている色々な仕事を外に割り振っていくということになると思うんですけれども、中途半端にやると先生方に色々な雑務が生じてしまいます。なので外部化する場合には、完全な外部化、つまりぜひ丸投げした方がいいなと思っています。それは大きな行政としてやっていくべきことかなと思っています。

さて、教師に何ができるか。まず妹尾先生のご高著である『先生が忙しすぎるをあきらめない』を読んで頂きたい。これはつまり日常の業務改善ですよね。本当に明日からでもできることです。そして今陰山先生がおっしゃったように、 本当にこの空気を持ってきたのはTwitterで「素直に若い人たちが発言した」ということだと思ってるんです。僕はもっと先生はワガママになっていいと思うし、 嫌なものは嫌だとTwitter上で言った方がいいと思います。子どもに向かってじゃないですよ。当然叩く教員バッシングが好きな人はいます。でも今なら言える。今のこの空気なら嫌なことをたくさん言えます。今言っていけば「まだこんなに問題があったんだ」となり、この改革はサステイナブルになっていくと思います。

そして今のTwitterの話というのは学校のリアルの職員室に持っていけば、それは隣の人に話しかけるということだと思うんですよね。よく聞く若い先生の話というのは、職員室で部活動なり、そういったことを問題提起をしたと。でも誰も追随者がいなかった。自分だけ手を震わせて発言してそれで終わったと。でも調査をすると半分くらいの人が部活をやりたくないと言っているんですよ。なのに職員室でやると一人だけ、皆から冷たい目で見られて終わっていくって、それこそ先ほど鈴木先生がおっしゃったように、根回しできていないんだろうと思うんですよね。半分はきっと同じ気持ちを持っているんですよ。 だから職員室で変えていくことはできるのではないかなと思っています。

そして最後に、先生にお願いばかりするのは大変だろうと思うんです。まさにここに大勢いる市民の皆さんの力が必要です。僕が実は、組体操の時もあるいはいろんなスポーツ事故のような問題の時にずっと思ってきてることは、本丸にいる人はまさに子どものためと思って一生懸命やってるんですよね。そこを先生変わろうよ、って言っていくのはなかなか大変です。だからその時に私たち市民の側が、先生たちそんなに頑張らなくていいよ、などと声をかけていく、ネット上でまたはTwitterで発言していくことが大事なのかなと思っています。外側が変われば本丸も変わりやすくなるかなと。先生達が変わること、また私たちが変わるべきこと、そんなふうに考えています。

3 登壇者のプロフィール


内田良先生
福井県出身。名古屋大学経済学部を卒業後、同大学院に進み博士号を取得。2006年には愛知教育大学の講師となる。2011年より名古屋大学大学院教育発達科学研究科准教授に就任し、現在に至る。専門は教育社会学。自殺、体罰、教員の部活動負担・長時間労働などの学校リスクについて研究している。ウェブサイト「学校リスク研究所」を主宰。ヤフーオーサーアワード2015受賞。著書に『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』(東洋館出版社)、『教育という病』(光文社新書)ほか。(2018年5月20日現在のものです)

 


隂山英男先生
兵庫県出身。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。
以後、文部科学省中央教育審議会教育課程部会委員、内閣官房教育再生会議委員、大阪府教育委員会委員長などを歴任。2006年4月から2016年まで、立命館大学教授に就任。
現在、陰山メソッド普及のため教育クリエイターとして活動、講演会等を実施するほか、全国各地で教育アドバイザーとして教育現場に関わっている。著書として「 子どもの頭が45分でよくなるお父さんの行動」(PHP研究所)「だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です」(小学館)「学力は1年で伸びる!」(朝日新聞出版)ほか。(2018年5月20日現在のものです)


鈴木寛先生
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。慶応義塾大学助教授を経て、2001年参議院議員初当選。12年間の国会議員在任中、文部科学副大臣を2期務めるなど、教育、医療、スポーツ、文化、情報を中心に活動。
2014年2月、東京大学教授、慶応義塾大学教授に同時就任。私立・国立大学のクロスアポイントメント国内第1号となる。
2015年2月より文部科学大臣補佐官も務める。 著書に『「熟議」で日本の教育を変える』(講談社)、『テレビが政治をダメにした』(双葉新書)、『熟議の ススメ』(小学館)ほか。(2018年5月20日現在のものです)


妹尾昌俊先生
徳島県出身。京都大学大学院修了後、2004年から野村総合研究所にて学校や行政のマネジメント改革、戦略づくりなどに従事。
2016年に独立。文科省や全国各地の教育委員会、校長会等で学校マネジメント、働き方改革、地域協働などをテーマに研修やワークショップを行っている。
2017年からは学校業務改善アドバイザー(文科省委嘱、埼玉県、香川県、横浜市等多数)、中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」委員、スポーツ庁「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン作成検討会議」委員、NPO法人まちと学校のみらい理事としても多方面で活動している。
著書に、『変わる学校、変わらない学校ー学校マネジメントの成功と失敗の分かれ道』、『「先生が忙しすぎる」をあきらめない—半径3mからの本気の学校改善 』、『思いのない学校、思いだけの学校、思いを実現する学校』ほか。(2018年5月20日現在のものです)

横田和也

鹿児島県出身。ラ・サール高等学校・中学校卒。現在東京大学教養学部2年に在籍。本フォーラム主催団体であるNPO法人ROJEでは先生のための教育事典EDUPEDIAに所属。言語教育に興味があり、将来は中高英語科・国語科教員を志望している。(2018年5月20日現在のものです)

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