【インタビュー(隂山英男先生)】五月祭教育フォーラム2018『ブラック化する学校~多忙の影に潜むものとは~』

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目次

1 はじめに

本記事は、2018年5月20日に東京大学で開催された五月祭教育フォーラム2018『ブラック化する学校~多忙化の影に潜むものとは~』終了後に行われた、隂山英男先生へのインタビューを記事化したものです。

本記事では、多忙化改善のために教師ができること、そして学校と地域・民間の連携について、隂山先生のお考えを伺いました。

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2 インタビュー

〇多忙化改善のために教師ができること

学校の多忙化改善のために校長・中堅・若手の教師はそれぞれの立場でどのように改善していけばいいのですか?

まず、校長は国から示されたガイドラインを着実に実行していくことが大事です。次に、部活動の縮小に伴い学校の信頼が低下すると考えるなら、信頼される学校を部活動とは違う形で創り出すために何をすればいいのか考えるべきでしょう。僕の立場から言うと基本的な学習指導をきちんとして、生徒に確かな学力を身に付けさせることが最も大切だと思います。学力向上のために、教師としての基本的な指導力を培ってもらうことが大事だと思います。

教師同士が連携するために、心がけることとは?

子どもたちの今をきちんと数値で捉えることです。数値目標を立て、現状を分析できれば、その結果、戦略を立てることができます。

教師の役割が肥大化する中で、教師が最も優先させるべき仕事はなんでしょうか?

教師が最も優先させるべき仕事は基礎学力の向上です。子どもたちの実態の数値的なデーターを取り、学力向上のための具体的な数値目標を設定することが大切です。PDCAサイクルを回しながら、児童や教師からフィードバックをもらい、そして、しかるべき学力向上を果たしていくことが大事です。

講演で、日本の学校は全人格教育を目指しているため、多忙になりやすいという話がありましたが、基礎学力向上が最優先ということですか?

学校の基本的な使命が何か、本質を見る必要があります。僕は、教師は基礎学力の向上が重要だと考えます。人間性の向上は、教育そのものの使命です。しかしそれは学校のみならず家庭や地域でも行うことです。しかし、学力向上は、私的な塾を除き、学校の基本的な機能です。以前、国会議員の答弁で、塾に通えない子どものために、お金を出さないといけないと真面目に議論していました。つまり、学力の向上は塾の仕事であると多くの人が思っているわけです。基礎学力の向上が揺らぐと学校の存在意義が揺らいでしまいます。

〇学校と地域・民間との連携

学校と保護者はどのように協同していけばいいでしょうか?

部活を肥大化させることは決して、地域住民や保護者も望んていることではありません。保護者の本当の願いを学校経営の中に活かしていくことがとても大切です。

本当に地域住民や保護者が望んでいることとは一体何でしょうか?

保護者が望んていることは、学力向上と安全・安心が保証された生活学習の環境づくりです。きちんとした学習指導をしているところでは、教師も信頼されやすく、批判も起きにくいものです。

教師は地方議会など様々な場所に顔を出すことが大事だとおっしゃっていましたが、もう少し詳しく説明していただいてもいいですか?

教師は、議会だけでなく、学校を取り巻いている色々なところを見る必要があります。特に、議会は学校にとって未知の世界です。しかし、現実は密接につながっています。校長先生が地域運営学校を支援しようと一から考えると、2~4年と長期間かかります。しかし、地域や議会の想いや願い、厳しさはその議会に行くとすぐに把握できるのです。まずやるべき対策といえるのではないでしょうか。教育委員会と議会は非常に厳しい関係にあります。議会から批判されると教育委員会はその意向を受け、学校現場の施策となって反映されます。

それらが現実的に、どのように関わり合っているのかを知ること大切ということですね。

学校の働き方改革で学校関係者と民間の協同の在り方は?

学校関係者は情報を公開することを好まず、民間企業が学校現場に入ってくることを嫌がります。そうではなく、民間企業などが学校現場に入ることによって、客観的分析も可能になってきます。そうしたものうまく取り入れながら、主体的に教育課程を組んでいくことが今後求められていくでしょう。

3 陰山先生のプロフィール

隂山英男先生
兵庫県出身。岡山大学法学部卒。
兵庫県朝来町立(現朝来市立)山口小学校教師時代から、反復学習や規則正しい生活習慣の定着で基礎学力の向上を目指す「隂山メソッド」を確立し、脚光を浴びる。
2003年4月尾道市立土堂小学校校長に全国公募により就任。
以後、文部科学省中央教育審議会教育課程部会委員、内閣官房教育再生会議委員、大阪府教育委員会委員長などを歴任。2006年4月から2016年まで、立命館大学教授に就任。
現在、陰山メソッド普及のため教育クリエイターとして活動、講演会等を実施するほか、全国各地で教育アドバイザーとして教育現場に関わっている。著書として「 子どもの頭が45分でよくなるお父さんの行動」(PHP研究所)「だから、子ども時代に一番学習しなければいけないのは、幸福です」(小学館)「学力は1年で伸びる!」(朝日新聞出版)ほか。(2018年5月20日現在のものです)

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