【昔のくらし(小3・社会)】子どもの「どうして?」で授業をデザイン~子どもがワクワクする授業の条件とは~(第2回EDUPEDIA SCHOOL 千葉教生先生)

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作成者:Tomoaki Omori (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、EDUPEDIA社会人スタッフの千葉教生先生に取材し記事化したものです。小学校3年生社会科「昔の暮らし」の授業実践案を紹介してくださいました。この授業実践案は、は、9/16(日)11:45~12:45に未来の先生展2018にて開催する、『子どもの「どうして?」で授業をデザイン~子どもがワクワクする授業の条件とは~(第2回EDUPEDIA SCHOOL)』で取り上げたものです。

2 第2回EDUPEDIA SCHOOLのご報告

未来の先生展は、世界・日本全国から集まる、体験型”未来のショーケース”で、国内最大級の教育イベントです。EDUPEDIAはこの度、『子どもの「どうして?」で授業をデザイン~子どもがワクワクする授業の条件とは~(第2回EDUPEDIA SCHOOL)』と題してプログラムを実施致しました。

〇日時:2018年9月16日(日)11:45~12:45

〇場所:聖心女子大学4号館4-2教室(東京都渋谷区広尾4丁目3-1)

〇プログラム
千葉教生先生講演(60分)
内容:小学校3年生社会科「昔の暮らし」の授業実践案のご紹介
主体的・対話的で深い学び、カリキュラムマネジメント、授業を通じた子どもの変容の観点からお話頂きました。

3 千葉先生の授業実践案

対象学年・単元

小学校3年生社会科「昔の道具と暮らし」

単元名

昔のくらしをさぐっていこう~自然と共に暮らしたHさんの子どもの頃~

単元目標

古くから伝わる暮らしに関わる道具や、それらの使われ方、その道具を使っていた頃の暮らしの様子を調べたり体験したり絵年表にまとめたりする活動を通して、過去の生活における人々の知恵や工夫に気づいたり、地域の人々の生活の変化や人々の願いを考えることができる。

また、暮らしの変化とまちの移り変わりを結びつけて考えることを通して、まちに対する愛着や、自分たちもまちの一員なのだという気持ちを深められるようにする。

4 授業内容

〇概要

まちの昔の様子と人々の暮らしを具体的に調べ、まちに昔から住む地域のHさんを中心に取り上げながら学習を展開していく。自分たちの生活と、父母・祖父母の生活と比べたり、Hさんの暮らしや思いに迫ったりすることにより、自分事として社会的事象をとらえたり、人との関わり合いの中で学んだりすることの大切さを学ぶ。

〇実際の学習の流れ

①街探検で見つけた、街に昔からあるものって、どんなものがあっただろう?

この単元では、祖父母が子どもだった頃までの道具や生活の様子、その頃から伝わることについて学ぶことを伝えた後、自分たちのまちに昔からある、伝わると思うものにはどんなものがあったかを子どもに聞いた。居酒屋、防空壕、桜並木、神社、橋などが出されたが、「昔」というより、昭和の後半からあったものを「昔からあるもの」と捉えている子が多いことが分かった。それらを「今ある」「父母が子どもの頃からある」「祖父母が子どもの頃からある」「さらに昔」の4つに分類した。その後、昔の暮らしについてもっと知りたいことを出し合うことで、いつ頃はどんな暮らしをしていたのか調べることになった。

②昔の街の様子はどのようだっただろう?

自分たちのまちが造成された頃と、それ以前の写真を見て、今と違うところを考えた。子どもたちから昔は家や道路もあまりなく、ほとんど森林だったという意見が出された。その後、森と畑しかなかったところに道路を作って家を建てたことを伝えると、「緑が減ってもったいない」という意見も出た。「まちの様子がこれだけ変化したということは、生活の様子も変化したと思う」という予想から、昔の暮らしについて気になることや疑問点をノートに書き出し、冬休みに父母が子どもの頃の生活について調べることになった。

③父母が子どもの頃の様子について調べたことを発表しよう

冬休みに調べたことを発表した。「風呂にはシャワーがなかった」「自動で止まらないから、自分で止めにいかないと熱くなってしまう」「音楽はレコード」「カラーテレビだけど、チャンネルはダイヤル」「遊びは野球、コマ、メンコ、ゴム跳びなどが人気」「テレビゲームはない家もあった」という意見が出された。「今あるものはだいたいあった」「でも自動のものがなくて不便」ととらえる子が多かった。祖父母が子どもの頃の暮らしについて調べると共に、まちに昔から住むHさんに協力してもらえることを伝えた。

④祖父母が子どもの頃の暮らしについて調べよう

Hさんを訪問する前に、祖父母が子どもの頃の暮らしについて聞き取ったり電話をしたりしながら調べた。「風呂は井戸を汲んで薪を焚いていた」「ご飯は窯で炊いて食べていた」「遊び道具はベーゴマ、竹で作った水鉄砲など」などということが出され、「ものすごく違う」「知らないことばかり」という驚きの声があがった。

そして、道具の名前だけでなく、「どう使ったのかな」「どのくらい時間がかかったのかな」「大変だったと思う」「分担していたのかな」など、道具と暮らしの様子を結びつけて考える発言が出るようになった。

⑤Hさんの家を訪問し、昔の暮らしの話を聞きに行こう

Hさんの家を訪問して、子どもたちが調べた道具を具体的に見ることができた(子どもたち見学に行く前に、指導者は3日間計5時間取材に行っている)。

Hさんが子どもの頃に使っていた道具(火鉢、黒電話、かまどなど)を見せてもらったり、その頃の遊び(竹馬・けん玉・竹とんぼなど)を教えてもらったりした。Hさんはかまどでご飯を炊き子どもたちにふるまってくれた。子どもたちは炊飯器よりずっと早く、たった15分でご飯が炊けることにとても驚いていた。「昔のものは不便」という価値観が転換された瞬間だった。

 子どもたちはHさんに様々な質問をした。そこから

  • 昔は外でたくさん遊んでいて、「日が暮れるまで帰ってくるな」と言われていたこと
  • 遊びながら薪を集めるなど、家の仕事もしていたこと
  • 夜はやることがないので20時には寝ていたこと
  • 料理には1時間以上、風呂には2時間以上・洗濯には1時間以上かかっていたこと

が分かった。

※ここで着目したいのは、日が暮れるまで遊んだ後、料理・風呂・洗濯だけで4時間以上かかっているのにも関わらず、20時には就寝していたという矛盾である。このことに子どもたち自身が気づくかどうか今後の授業展開において大切だと考えた。

次の時間は、Hさんの家に行って思ったことや分かったことを出し合った。「すごかった」「驚いた」という発言が多く、具体的に聞いてみると「拾ったものを暮らしの中で利用していてすごかった。」「炊飯器と違って5分で火が点いて、ましてや火が強いので驚いた。」「お風呂を沸かすのに井戸から水を汲むので大変そうだった。」「電気製品がなくて不便そうだった。」などであった。今の生活との違いや工夫に対しての驚きが大きく、矛盾に気付いていない様子だった。そこで、

「たくさん遊んで、たくさん仕事をしていたということでいいですか?」

と問いかけると、「何かがおかしい、どうなっているんだろう。」「時間の計算が合わない」「たくさん遊んでいたのに、いつ家のことをしたの?」という疑問をもつようになった。また、Hさんの昔の暮らしが大変だったということをもっと自分たちでも体験したいという意見が出たため、かまどを借りて実際に自分たちもご飯を炊くことにした。

⑥自分たちもかまどでご飯を炊いてみよう

かまどを借り、学校でご飯を炊いた。お米を研いだり薪を組んだりするのに苦労しながらも、Hさんほど早くはないが、炊飯器より早くご飯が炊けること、そのためにはずっとかまどについていなければいけないことを実感的に理解できた。火を落とすタイミングが難しく、やや水っぽくなってしまったが、お米が炊けたことに満足していた。

その後教室に戻って振り返りをした。「大変だった」「でもHさんは楽しそうにやっていた」「Hさんはどうしてあんなに効率よくできていたんだろう」という感想が出された。Hさんの仕事を体験したことから「Hさんはなぜたくさん遊んでたくさん働いて、20時に寝るのが不思議」という疑問を検証したいという気持ちが強まった。何を確かめたいか問い直したところ、「なぜそういうことができるのかが不思議」「いつ遊んで、いつ家の仕事をしたのかかが不思議」という発言が出たので、

「どちらの言葉で考えたいですか」

と聞いたところ、「いつ遊んで、いつ家の仕事をしたのか」で考えたいとなったので、次時はこの学習問題で追究することになった。

⑦いつ遊んでいつ仕事をしていたのか考えよう

Hさんが家事を分担しながらたくさん遊び、なおかつ20時には就寝することができた理由を予想し、話し合った。

  • 風呂や洗濯をしている時に遊ぶ
  • お湯を沸かす間に遊ぶ
  • 庭で遊ぶ(砂時計で時間を計る)
  • 違うと思う。水くみに1時間、沸かすのに1時間かかる
  • 土日に遊んだ
  • 洗濯は朝、お風呂は夕方
  • 薪拾いしながら遊んだ
  • お米を炊くのは、遊びながらはできない
  • 洗濯は朝は無理
  • 昼は学校があるから無理
  • 風呂から離れることはできない

などの意見が出た。最初「遊びながら働いた」という予想を考えた子どもが多かったのだが、かまどでご飯を炊いた経験を思い出し、「同時にやることはできない」ということに気付いていった。

子どもたちから「近くの人と話し合いたい」という意見が出たので、近くの子と話合い考えを深める時間をとった。その結果、

  • 仕事が遊び、仕事が遊び感覚
  • 仕事を楽しくやっていた
  • 兄弟がいれば、分担できる
  • 分担したら、速く終わると思う

といった、「時間」ではなく「方法」についての予想が出るようになった。これらの予想について、Hさんから聞き取りをした資料から確かめた。

Hさんのお話は、

  • 4人兄弟
  • 手伝いが遊びだった
  • そんなことは説明できない
  • 自分で考えて、状況に応じて行動

というものであった。

子どもたちからは、
「考えながら、自分たちで仕事をしているのがすごい」「私たちも、細野さんみたいに考えながら行動するのを見習わないといけない」と発言していた。

他の子からも「すごい」という感想が多かったので、「どこがすごいと思ったの?」と問い返したところ

  • 自分で考えて状況に応じて行動するところ
  • 自分はできないことが多いから
  • 兄弟で分担したってところ
  • 手伝いが遊びっていうのは何となく分かる
  • 慣れてくると楽しくなってくるから
  • できるようになると嬉しい

という発言が出された。今の自分たちと、Hさんの子どもの頃をつなげて考える発言が多かった。

⑧Hさんがたくさん遊んでたくさん働くことができた訳に納得した理由を考えよう

前時の話合いでは自分事ととらえる発言が多く出たが、発言できなかった子や、その場の雰囲気に流されてしまった子もいることが予想されたので、「 Hさんが話した理由に本当に納得したか」問い直した。子どもたちのノートの中には、「兄弟でやっていたのになぜけんかにならなかったのか。」「Hさんはなぜ手伝いは楽しいと思っていたのか。」などの疑問が挙がっていたからである。

「手伝いが遊びというのはなんとなく分かる」という発言が出されたので、「何となく分かるって言ってた人は訳を教えて」と問い返したところ

  • 上手になると楽しい
  • 褒められると嬉しい
  • 好きなものは楽しく感じる
  • でも苦手なものはやりたくない

という理由が出された。

また、「遊びと生活が一緒だった」については

  • 手伝いを遊び感覚でやっていた
  • 手伝いも遊びだったんじゃないか
  • 私のおじいちゃんも自分で作ったと言っていた

という納得の仕方をしていた。

そこで、「(自分より年下の兄弟の)子守も子どもの仕事」ということを伝えたら
「?!?!?!」というどよめきが起こった。

  • 知り合いの子どもの面倒を見るのは楽しいけど、そのほかに火の管理と水を絶やさないなんてできない。
  • それだけやるなんて、すごく要領よくやっている。

担任から「仕事は大変、手伝いは遊びってことだよね。(授業を見に来ていた)大学の先生は、多分「お母さんと一緒にいるのは手伝いの時だけだから、楽しかったんじゃないか」って言っていたよ」と伝えると、「ああ」という納得のため息が出た。

取材中、Hさんは「いつ遊んでいつ仕事をしていたなんか説明できない」「遊びと仕事の区別がなかった」「今の子どもには分からない」と言っていた。

しかし、子どもたちは、その頃は遊びと仕事の区別がなかったこと、子どもと大人で、生活は今のように分かれていなかったことを、Hさんのことをもっと知りたい、疑問を解きたいという気持ちと、今の自分たちの生活や気持ちと結びつけることで理解していった。

最後に、この学習で考えたこと、思ったことを話合い、まとめの活動をした。

子どもたちは、

  • 昔の暮らしは大変だが、その頃はこれが普通だった
  • 昔の遊びは頭を使っていた
  • 今の方が楽、でも今の子どもは楽をしすぎ
  • 楽しい けど 疲れる
  • 大変 だけど 楽しい

などの発言があった。今と昔のそれぞれのよさを理解していた。

5 プロフィール

千葉教生先生

元横浜市立小学校副校長。

公益財団法人学習ソフトウェア情報研究センター マルチメディア教材研究会本部長。

メディア教育研究会事務局。

EDUPEDIA社会人スタッフ

6 編集後記

当日第2回EDUPEDIA SCHOOLにお越しくださった方誠にありがとうございました。この場をお借りしてお礼申し上げます。参加者の方からは、「子供の言葉を丁寧にヒヤリングする点がとても参考になりました。」「グループワーク面白かったです。」などのお言葉を頂き、大変嬉しく思っております。

私も取材していて、要所要所で子どもに問いかけ、その反応を見たうえで授業をデザインしていくことは、子どもに見合った学習を進めるうえで非常に大切なことだと気付きました。実際の授業で子どもたちはHさんの家を訪ね、昔の暮らしを体験しますが、その体験は子供たちにとって、事前学習で生まれた問いを解決するものになっているのではないかと思いました。(取材・編集:EDUPEDIA編集部 大森友暁)

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