坂本良晶氏講演録 〜学校をティール化していこう〜 【関西教育フォーラム2018】

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作成者: ushio (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、2018年11月25日に開催された関西教育フォーラム2018「学校×塾×家庭で対話する"その子らしさ"を引き出す新時代の教育」の登壇者であり、京都府小学校教諭を勤めておられる坂本良晶氏の講演録となっています。

坂本氏には、ご自身のSNSで発信しておられる教育の生産性改革の実践と今後の学校のあるべき姿についてお話しいただきました。

関西教育フォーラムに関する記事一覧はこちらのページからジャンプできます。

2 講演録

◎マインドセットを変える

教育の生産性を上げるために必要なことは、マインドセットを変えることです。

マインドセットを変えるとは、仕事ができる人の思考(マインド)を自分の脳みそにインストールしてあげる作業のことです。多くの場合、目先の時短術とかハウツーといったものに注目しがちです。しかし、まずはマインドセットを変えていかなければなりません。

◎エッセンシャル思考を持とう

エッセンシャル思考とは、グレッグ・マキューン氏の提唱するマインドです。教師が読むべき1冊はコレです。なぜならば、今日の教育界はマキューン氏の言うところの非エッセンシャル思考にあるからです。

非エッセンシャル思考では、以下の考えのもとで仕事を進めます。

  • 「全ての仕事の質を上げていこう」
  • 「どうすれば全ての仕事をこなすことができるんだろう」
  • 「たっぷりと時間をかけて問題に取り組んでいこう」

しかし、こういった考えの働き方は、教員の時間や体力といったリソースの有限性を無視したもので、持続可能性に欠けます。そのため、働く時間に対して成果が上がらず、時間や体力だけが減ってしまう状態が起こっています。

そこで、エッセンシャル思考へ大きく転換していきましょう。エッセンシャル思考では、以下のことがキーワードになります。

  • より少なく
  • しかもより良く
  • 選ぶことを選ぶ
  • 最小時間で最大成果を

これらの考えを一言でまとめると、『全部やろうはバカやろう』です。

時間・エネルギーをあちこちへ分散投下するのではなく、真に価値のある仕事へと集中投下していくという思考を持つことから全てはスタートします。


(スライドより)

次に、エッセンシャル思考をもって目の前の仕事に価値付けをしていきます。

そのために役に立つのがこの全バカマトリクスです。これは縦軸を仕事のデキ横軸を仕事の本質的重要度とした4象限のマトリクスです。私たち教員の世界では、仕事の本質的重要度を問わず、全ての仕事の質を上げていこうとする考えが美徳とされています。

しかし、全ての仕事のデキを高めていこうとすると、疲労困憊や睡眠不足のまま働くことになるため、生産性は低くなります。つまり、仕事のデキが高まることはありません。そのような働き方はナンセンスではないでしょうか。エッセンシャル思考を持って、真に成果の出る仕事を「選ぶことを選び」、「選択・集中」して成果を上げていくというアプローチが大切になってくるのです。

◎正しいアプローチで子どもを伸ばそう

正しいアプローチとは、読む力・書く力・計算力を上げることです。これから、具体的な取り組みについてお伝えしたいと思います。今回、紹介するのは算数や国語です。授業の始めにほんの5分を投資するだけで、(大きな)リターンを得ることができます。

①百ます計算

はじめに、ド定番の百ます計算です。算数の授業の初めに毎回取り入れています。これは計算力を高めることはもとより、脳のエンジンをかけること、集中する訓練になる……と、陰山先生の本に書いてありました(笑)

②暗唱

また、国語の授業の初めには、いくつかの詩の暗唱を毎回取り入れています。
詩の暗唱に何の意味があるんだろうと感じた方も多いと思います。これの狙いも、脳のエンジンをかけることにあります。大きな声でかつ早いスピードで暗唱することは脳の活性化につながります。その集中した勢いのまま、授業へと入ることができます。

③読書教育

次に、私の学級経営の核とも言える読書教育です。読む子は育つのです。読書を教育の根底に這わせることで、子どもたちの言葉の引き出しが増えていきます。本を読むことにより、さまざまな言葉や知識にフックがかかり、その後の学びに繋がります。

④漢字集中速習

そして、隂山先生から直接レクチャーを受けた漢字集中速習です。これは、短期間に集中してスピーディに漢字を覚えさえせる新しい隂山メソッドです。それを自分なりにアレンジして取り組んでいます。

このように、リソースを読むこと・書くこと・計算することに集中することは、以下のようなメリットが得られると考えています。

  1. 子どもの成長

漢字テストで満点を取ったり、百マス計算のタイムが速くなったりすると、子どもたちは自身の成長を実感することができます。そして、こうした実感は、子どもの学びへのモチベーションを高めます。

2. 指導負荷の軽減

漢字や計算が苦手な子どもはいつまで経っても学習のスピードが上がらず、指導に時間がかかります。そうならないために、早い段階でそれらをクリアさせることで、指導負荷が軽くなります。これは教員の働き方にも好影響を及ぼします。

3. 生徒指導効果の最大化

学力向上は最大の生徒指導とよく言われます。学びにおいては、その子がより良い方向に進んでいるという感覚を持たせることが重要だと感じます。その感覚を持った子どもは、学校で希望を持って頑張ることができるのです。子どもたちが落ち着いて学びに向かうことで、イレギュラー対応により勤務時間が伸びるといった問題の根本を断ち切ることができます。

正しいアプローチによる学力向上がトリガーとなり、全ては好転していくのです。非エッセンシャル思考で、無数に溢れる〇〇教育にエネルギーを奪われ、悪循環に陥っているのが今日の教育界です。まずは、エッセンシャル思考を持って、読む力・書く力・計算力を向上させるという正しいアプローチを取ることが大切ではないでしょうか。

◎公教育をティール化していこう

◎公教育のティール化

教員採用試験の倍率低下、教員の病気休業、学級崩壊、子どもの不登校・いじめ問題、小手先ばかりの働き方改革といったネガティブな声で世間は溢れかえっています。この散らかった問題点を拾い集めて、一つの文脈に乗せて解決することはできないだろうかと考えました。

また、教員の勤務時間という1つの指標だけで働き方改革を進めていってもいいのでしょうか。もっと本質的な、教員と子どもが生き生きと学校で過ごせるようになることが真の働き方改革ではないかと考えるようになりました。

そして、私なりに行き着いた答えが公教育のティール化です。

ティール組織とは、働き手が幸福に満たされる組織のあり方として、現在大注目されているものです。ティール組織の一つの特色として、組織の進化レベルに応じて、それらを色で表現している点にあります。

ティール組織化された企業の代表例として、オランダのビュート・ゾルフ社が挙げられます。この会社は勤務時間を減らしつつ、利益の拡大に成功しました。それとともに、雇用者と顧客の双方の満足度を大きく向上させるイノベーションを実現しました。これをロールモデルとし、学校にも実装できないかと考えました。

①働き手の主体性を最大限尊重した自主経営

やることをトップダウンで押し付けるのではなく、自律的に機能する組織としていくことで、個が伸び伸びと躍動できるようになります。

②全体性の回復

所属する組織の中で、自分の強みを生かして役立っているという自己有用感を持つようになります。また、本音や建前から脱却し、安心して自分らしくいられるようになります。このように個と組織が互いに信頼し合えるあり方です。

③組織の存在目的

それはトップの存在によって目的がコロコロ変わるようなものではなく、不変的に存在するものです。そもそも、学校が存在する目的とは一体なんでしょうか。それは、子どものハッピーにあるはずです。

では、ティール組織の進化段階にあてはめて、学級と教員について説明したいと思います。

  • 衝動型(レッド)学級
  • 順応型(アンバー)学級
  • 達成型(オレンジ)学級
  • 多元型(グリーン)学級
  • 進化型(ティール)学級

はじめに、原始的なパラダイムが衝動型(レッド)学級です。先生が怖いから言うことを聞こうという昭和的なスタイルです。しかし、社会が成熟するにつれ、これは通用しなくなってきています。

そして、過去の方法が正しいと絶対視する順応型(アンバー)学級です。昔ながらのやり方をやめられないとまらないカッパえびせん型と呼んでいます。価値観に多様性がなく、先生のやり方が絶対だという押し付けが発生します。そうなると、子どもたちのの視野は狭まっていく可能性があります。

次は、達成型(オレンジ)学級です。これは先生が先頭に立って、ぐんぐん引っ張ってクラスを作り上げるという織田信長型と言えます。知識伝達型の授業が主流だった時代にはこれもよかったでしょう。しかし、子どもたちの自律性を育むならば、このスタイルが常というのは今日の最適解ではないのかもしれません。

さらに、多元型(グリーン)学級です。オレンジ学級での成果主義による疲弊の揺り戻しから、子どもたちの多様性を認め、個々を尊重し、ボトムアップでクラスを作っていこうというみんな違ってみんな良い型です。しかし、多様性を尊重することが目的となり、今度は成果が置き去りになるという問題が出てきました。

最後に、ティール型学級です。

このパラダイムでは、教員から子どもたちへというピラミッド構造は消失します。自分たちのハッピーという存在目的を元に、それぞれの子どもが個の強みを発揮し自主経営する学級です。子どもたちの全体性は高まり、真の自律性も育まれます。教員は組織のトップに立つのではなく、コーチング主体の学級コーチ的な立ち位置へと移行します。

ティール化された例として、千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長先生の例やけテぶれ学習法で知られる葛原祥太先生が挙げられます。

2人の共通項として、狙ってこうなった訳ではないことが挙げられます。よりよい組織のあり方を追い求めていたら、結果としてティール化していきました。

◎終わりに

今日の学校では、レッドからティールまでゴレンジャーのようにさまざまなパラダイムの教員でごった返しているのが現状です。この価値観や哲学のズレは、現場のエネルギーを台無しにさせてしまいます。

いつからか、学校はエゴにまみれる場所となりました。教員同士のエゴとエゴがぶつかり合うと、子どもの成長という本来の目的を見失いがちです。自分の主張を押し通すこと、自分が気持ちよくなる授業をすること、自分が目立つことや自分が評価されること。そういったことが目的になることはエゴです。それを満たすことにエネルギーが浪費されることは無駄でしかありません。

だからこそ、「子どものハッピー」という学校の存在目的に、常に耳を傾け続ける、エゴの無いティール的な価値観へと公教育全体が寄せていく必要があるのではないでしょうか。

そして、子どものハッピーという存在目的に共鳴した家庭・地域・学校が協同して教育というミッションを達成していく日を願っています。もちろん、公教育全体のシステムを変えることは一朝一夕に実現できるものではありません。けれども、そういった価値観をそれぞれの教員が胸に秘めることは、今この瞬間からでもできます。さらに、日本の教育の未来を担う若手や学生といった仲間達には、ぜひこの考えをシェアして欲しいと思っています。

3 登壇者プロフィール

坂本良晶氏(Yoshiaki Sakamoto)

京都府公立小学校教諭

採用8年目、京都府立公立小学校教諭。
ビジネス界のマインドや手法を取り入れ、子どもと教師のwin-winを目指した『教育の生産性改革』に関する発信を、約1年前からスタート。
Twitterでのフォロワー数は一万人を超え、「さる先生の『全部やろうはバカやろう』」が重版を繰り返し、教育書ベストセラーに。
全国から多くの教員が集まった教育フェスwatcha!では、春の京都、夏の東京共に登壇。
また、前職ではくら寿司の店長として全国1位の売上を誇るなど異例の経歴の持ち主。

坂本氏のブログはこちら
  Twitterはこちら

書籍情報

長時間労働に苦しむ先生、育児に追われるママ先生、そして板挟み状態の管理職の先生等に読んでいただければと考えています。小手先だけではない、働き方改革の本質を抉る一冊となると自負しています。手にとっていただければ幸いです

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また、この記事は関西教育フォーラム2018の連携企画となっております。以下の記事も併せてぜひご覧ください。

(文責・編集:EDUPEDIA編集部 潮龍太)

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