1 はじめに
本記事は、オンラインZoom研修を成功させるための17の視点〜2日間の研修をZoomでやり切って見えてきたこと〜の内容を引用・加筆させていただいたものです。
新型コロナウイルスの感染拡大は教育現場にも大きな影響を与えており、対応に追われている先生も多いのではないでしょうか。EDUPEDIAでは、必要な情報が教育関係者に届くように、【コロナと向き合う】特集をはじめました。
今回は、志村智彦さんが社会人を対象にしたオンライン研修を設計するにあたって考えた、集中力を保つ15のアイディアを紹介しています。教育現場でオンライン授業を行う際のヒントとしてぜひお役立てください。
2 オンライン授業で集中力を持続させるには
アンケートの結果から、「集中力が低い人は、満足度も低い」という相関関係が見えてきました。つまり、いかに集中力を維持できるかが、オンライン研修の肝になってきます。私の経験から下記のようにまとめました。
それぞれ詳しく説明していきます。
1.「時間配分」
アメリカの研修講師育成の大家ボブ・パイク氏によると、通常の研修であれば「90/20/8の法則」に則った時間配分がよいそうです。
この法則は、リアル研修で集中力を維持する時間配分として確立したもので、
90分に1回以上、休憩を入れる。
20分に1回以上、異なった形式にする。20分を意味のある最少単位として研修をデザインし、次の20分に進む前に振り返る時間を設ける。
8分に1回以上、受講者を「参画」させる。手を挙げてもらったり、テキストに記入してもらったりする。
というものです。
しかし、ボブ・パイク氏を日本で紹介しているダイナミックヒューマンキャピタル(株)の中村文子社長からは、ボブ・パイク氏は「オンライン研修では「8の「参画」させる部分は、4くらい」が適切で「90/20/4」がよい」とおっしゃっていると伺いました。文子先生ご自身は、「「90/20/4」だとやはり90分というのは少し長いようにも感じるので、「60/20/4」くらいがよいのではないか」とおっしゃっていました。この20分も一方的な講義ではなく、参画をいれながら、双方向でやるのがよいというお話でした。
これに基づきいろいろ試してみた結果、「45/10/4」の配分がよいと私は思いました。意識しても少し講義の時間がオーバーしてしまって、結果的に「60/20/4」になると実感しました。
具体的には、オンライン研修ではリアル研修とは異なって
45〜60分に1度休憩を入れる。
10〜20分に1度シェアや討議の時間を入れる。
4分に1度は、確認のため、手を上げてもらったり、OKサインをしてもらって相互確認をしながら進める。
となります。
2.「1日の時間」
研修の場合10時〜16時が最長だと感じました。お昼休みを抜くと5時間です。できる限り工夫して運営しましたが、アンケートを見る限り、5時間というのは集中力の限界だと感じました。
受講者が全体的にZoom研修というものに慣れてくるとリアル研修と変わらない設計になっていく気がしますが、初回ということもあり今回は短い時間で設計しました。その代わり、宿題を出したりYouTubeを見てもらったりと、自主教材を豊富にすることが大切です。
3.「講義の時間」
1の「時間配分」で「45/10/4の法則 」を紹介しましたが、表の通り講義を10分で終わらせるのは至難の技だと思います。学習設計の項でお伝えしたように、事前学習などを使ってうまく調整をしていただくとよいでしょう。
4.「シェアについて」
リアル研修だと、講義のあとそのままシェアに移ってしまいますが、オンラインの場合は、シェアに移る前に1分間書き出しの時間をとるとよいと思います。その方が議論をスムーズに進められると思いました。
5.「シェアの時間について」
表に10分と書いていますが、内容にもよるので様子をみて時間を設定してください。
6.「資料について」
テキストを郵送するのがよいと思います。また、A4用紙やペンを使う場合は、これも郵送できたらよいと思います。
7.「休憩のタイミング」
休憩については、45分に一度、10分〜15分程度がよいと思います。
8.「休憩の時間」
受講者の階層にもよりますが、20分だと長すぎると感じる人もいるそうなので、研修への意識を維持する絶妙な時間配分が必要になりそうです。
10.「休憩から帰ってきたら」
「チェックイン」を行います。チェックインには受講者の意識を研修に向ける役割があります。チェックインには「みんなで挨拶をする」「OKサインをする」「声を掛け合う」などの共通体験を入れ込んでみてください。受講者の意識は休憩中に自分の環境に戻ってしまうので、チェックインを行う必要があると思います。
例えるならば、神社の参拝です。「鳥居の前で敬礼して、境内に入り、手や口を洗い、身を清めて参拝に行く」のと同じで、所作によって、人は意識を切り替えることができます。
ですから、チェックインは受講者の意識をきちんと研修に向けるために学習設計に取り入れてみてください。
▶︎授業はじめのアイスブレイク集—絶対盛り上がる20選—もご覧ください。
11.受講者の巻き込み
こちらの記事に詳細が書いてあります。
12.始まる前の意識づくりと説明
研修の冒頭でオンライン研修がリアル研修とどう違うのかをきちんと説明することが大切だと思います。受講者にとってオンライン研修は未知の領域のものです。どうすればよいのか困っているわけですから、きちんとガイドする必要があります。
13.「喋るスピード」
YouTuberの喋るスピードは、視聴者を飽きさせないよう、テンポ感があります。受講者もそのスピード感に慣れていますので、オンライン上では、やや速く喋る必要があるでしょう。
14.「テンション」
オンライン研修の場合、リアル研修と同じ喋り方では元気なく見えるようです。そのため、映像を通すときには、テンションを上げることが必要です。
こう言うと「講師のキャラによるので、無理やりテンションを上げると変な感じになるよ」という人もいます。ただ、電話の際、聞き取りやすいようにテンションを上げて話すのと同じようなことです。
15.「動き」
リアル研修で講師がジェスチャーを使って表現するように、顔を動かしたり、動きがあったりすると緊張感を保つことができます。
最後に
以上、15のアイデアは、私の経験則や先述の先生方の叡智から作り上げられたものです。時間配分については、研修内容によって変わってくると思いますので、ご自身がしっくりくる時間配分を見つけてください。オンライン研修を実施したことがない方にも参考にして頂き、ご自身なりの適切なラーニングデザインをつくっていただればと思います。
3 志村智彦さんのプロフィール
立教大学卒業後、新卒で人材育成教育のコンサルタント会社に入社。大手から中小企業の教育研修、採用コンサルティングを行い、15年間でのべ3万人以上の育成に携わる。2019年6月「人と組織の志と強みを見つけ、磨き、発信する」をテーマに志コンサルティング株式会社を創立。起業家としては研修ビジネスの立ち上げに5社参画し、現在は2社の経営を行なっている。
現在は、「幸せな会社づくり」「体的を引き出す自走型組織づくり」「理念浸透する組織の作り方」「動機付けの採用手法」をテーマに活動している。2019年9月には支援先の採用戦略が日経新聞などに取り上げられる。
オンライン会議は5年前から実施していたが、コロナ危機が発端となり、オンライン研修の可能性を模索し、2020年4月の「オンラインにおける研修設計の必要性と原理原則」をまとめた記事が拡散。現在はオンライン研修プロデューサーとして、各企業や研修会社の支援を行なっている。
4 編集後記
オンラインで授業をするにあたって、受講者が集中力を維持するには様々な工夫が必要なことを実感しました。この記事がオンラインで授業をする先生のお役に立てれば幸いです。
(編集:EDUPEDIA編集部 杷野真弓)
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