学校評価(2) ~ まずは、漢字を評価するところから

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目次

1 あやふやな「基礎基本の定着」という項目

学校評価では「評価内容を重点的に絞り込んで、より具体的な評価にすることが大事である」という記事を下記リンクにアップしました。

学校評価(1) ~ PDCA→CAPDサイクルへ ~ 成果と多忙化の解消
また、下のリンクの姉妹記事も是非お読みください。
「学校の多忙化」の改善(業務改善) ~「残業の見える化」から始める

では何から絞り込んで始めればいいのか、ということをこの稿では書いていきたいと思います。

私は、まずは漢字を評価するべきだと思います。どの教員も漢字を指導するし、どの教員も漢字テストぐらいはしているはずです。漢字学習は落ちこぼしを作らず、学力補償をしていくためにも、たいへん重要な要因です。

学力保障 ~学校の荒れを防ぐための最優先事項

それなのに、どうしてほとんどの学校で漢字に関する評価情報が集約されて共有できていないのか。なぜここおから手を付けないのかが不思議なくらいです。学校評価の中に、

「基礎基本の定着はできているか」

といった類の項目が見られますが、これでは何のことやらわかりません。これを4段階ないし5段階でどう評価せよというのでしょう??できている児童もいれば、できていない児童もいるわけです。基礎基本が何をさしているのかも、わかりません。基礎基本とは、人によっては計算なのだろうし、漢字・文章を書くこと、文字、話をする態度・・・・

どれも大事なのだろうけど、とりあえずは、漢字に絞るところから始めればいいのではないでしょうか。

2 とりあえず漢字に絞って


ここでは、評価をとりあえず漢字に絞って集中的かつ簡便に行うことを例示しますが、比較的簡単に評価ができるのは漢字以外にも計算・体育などがあると思います。どれも数値化しやすいのと改善方法が比較的解明されているというのも利点です。

そんなことを提案すると必ず、「数値化できるものだけを評価するのか!」とお決まりの否定的意見が出てきます。以下のように丁寧に答弁しましょう。

「そうではありません。数年来、基礎基本の項目は学校評価でのポイントが変化していません(実例を示すといいですね)。何が基礎基本か、あいまいになってしまってもいます。せめて数値化できるものを漢字(計算・体育)に絞って評価し、改善策を精査していくことによって明確なポイントの向上が図れれば、おそらくその他の項目の改善の糸口を探していく糸口になると思います。一点突破することで、意識を変えていくということです。データに残せるものから順次、きちんと検証・継承してはどうかという提案です。」

実際、何かから手を付けていかなければ始まらないと思います。

3 漢字の評価は簡単にできる


ここで肝心なのは、「こんな漢字指導をしてはどうか」と、「P(計画)」から始めてはいけません。必ず、「C(評価)」から始めます。

また、あれやこれやと漢字以外の基礎基本の学力を図ろうとするのもいけません。私の勤める学校でも、せっかく漢字の評価を始めたのに他にも「音読」「計算」「算数文章問題」などを一度に測ろうとして負担感が増し、1年で取り止めになってしまいました。

漢字は評価が簡単です。漢字だけを評価するのであれば、時間はかかりません。面倒であれば、そんなに多くの漢字をテストしなくても、各学年で200ほどあるうちの4分の1つまり50問ほどを抽出してテストをすればいいのです。それで十分です。全漢字をなどと意気込んで問題作成をし始めるから息が切れてしまうのです。
当該学年までの漢字、例えば4年生なら1~4年生までテストしようとしたこともあります。ところが、あまり詳しく調査しようとすると負担感が強くなってしまいます。個人でするのならまだしも、学校を挙げてやろうとすると負担が大きいという声に押されて取り止めになり、結局継続的調査ができなくなってしまいます。そうであるなら、当該学年の漢字だけをテストをし、継続的に記録をとっていける状況を作った方がいいでしょう。
簡易な10問程度のテストを実施するぐらいで、経年変化をみてゆけば十分だと思います。下記リンク先↓に簡単な漢字テストを掲載していますので、ご活用ください。
漢字基礎テストと漢字検定 ~6年間を通じた漢字学習の成功

ネット上にはすぐれた漢字の教材がたくさん出回っています。

http://www.geocities.jp/mutasanjp/

に置かれている漢字プリントなど、秀逸です。こういうフリー教材で十分なので、こういうなかから50問分程度をチョイスして、ささっと評価してしまえばいいのです。たいした手間ではありません。

どうしても、当該学年の全部の漢字をテストしたいなら、日本標準が毎年春休み前に出す復習ワークの付録で付いている各学年の全漢字をテストにした「●年生で習った全漢字●●●字」は、とても優れていると思います。ぜひ、使ってみてください。

4 テスト結果を分析する


当該学年のテスト結果が出たら、下のような手順で簡単な分析をしてみるといいです。
1. 学年全員の名前が入ったエクセルのシートにデータを入力する。
2. 正答率が例えば75%以下(パーセンテージは各自・各校の判断にお任せしますが)の者は、前学年のテストもやらせてみる。(以下、75%を切る者は順次下の学年を・・・あまりに酷い場合は、2つ、3つ下の学年のテストをやらせる)
3. 正答率が本当に悪い場合は、「読み」ができるかどうかを調べてみる。
小学2年生新出漢字の読みが全部入った文章
このシリーズを使ってみてください。(順次アップ予定)
4. 各クラス、各学年の平均点を算出する。
5. 10点区切りぐらいで色分けする。(エクセルの条件付き書式という機能を使ってみてください)
6. 前学年のクラス・点数データを残して、次学年に引き継ぐ。
7. 数年間、学年が上がっていくごと児童個人・学年・学校、そして担任の「成績」推移を見守る。
8. 担任の成績を追跡調査することで、どの手法が
テストを4月当初にすれば、担任の手心が加わることがないので、公正なテストになると思います(6年生は3月末に)。あまり精緻なテストをしようと思わずに、この程度の評価をすれば、校内の漢字学習に対する意識はガラッと変わるでしょう。実際に5年生の4月に4年生の漢字テストをやってみたことがあります。全クラスで実施してエクセルに入力し、4年の担任のクラスに戻るように並べ替えたところ、あるクラスの正答率が61%と、他のクラスに比べて15%以上も劣っていたことがあります。こういった状況はもっと管理職が把握しておくべきだと思います。

5 テスト結果を共有する


さて、全校で漢字テストができたとして、この結果を共有するべきかどうかというのはおそらく議論になるでしょう。成績下位の担任は精神的なダメージを受けるでしょうし、成績を挙げたいばかりに過当な競争になってしまって漢字ばかりをやってしまうのではないかという意見もきっと出てくると思います。新出漢字1文字につき、100字帳1ページを使って宿題を出すなどという、子供にしたら大迷惑な教師も出てくるかもしれません(本当にこういう教師がいます)。

確かに、私もあまり競争原理を教育現場に持ち込むようなことになるのは望みません。どこかで歪が出てしまう結果になるように思います。しかし、共有原理と相互研鑽は必要です。担任の成績については管理職のみが握るということにしてもいいでしょう。しかし、管理職は「成績上位の担任たちがどんな指導をしているか」をきちんと調査して、それを「A(改善)」として、みんなで共有するように仕向ければいいと思います。

何人かの、何パターンかの成果を上げている指導法が明らかになれば、成績下位の担任はそれらを参考にして腕を磨けばいいのです。教育現場に欠けているのはこうした共有原理と相互研鑽の姿勢です。そして、まず漢字を評価していくことによって、他の学習、他の学級経営に関しても自己研鑽・相互研鑽の形が見えてくると思うのです。良質な情報を流すことに成功すれば、もっと学校は楽で楽しい場所になると思います。

6 「A(改善)」はあります


漢字指導には、「A(改善)」があります。私も教師になって10年ぐらいまでは、がんばって指導しても伸びない子供たちを見て、「この子はこんなもんなんだ」「自分の力はこんなもんなんだ」「他の教師もこんなもんなんだ」と自分を納得させようとしていました。

しかし、まず、自分で自分のクラスの子供達のデータをきちんととる習慣がついてきたところで、「もっと何とかなるかも、なるだろう」と再び詰めていく執念が沸き起こってきました。下の記事中にある漢字テストファイルは秀逸です。印刷さえがんばれば、後はたんたんと実行するだけでかなりの成果が出ます。(EDUPEDIAの漢字シリーズを是非お読みください。)

繰り返し漢字テスト

それほど負担を感じずにかなりの成果を上げる方法はまだまだあるはずなのです。そうしたの情報を発掘し、共有し、評価 → 精査していくことが真に「学校評価の成果」を発揮していく道のりではないかと思っています。

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