スモールステップという「原則」

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作成者: matsui (Edupedia編集部)さん

スモールステップは「原則」です

一つの目標に向かうために、いきなり大きな課題を与えないで、目標達成までのプロセスを細かく分解し、各プロセスでの小さな目標をクリアさせながら指導する方法をスモールステップと言います。例えば、クロール25mを泳ぐという目標を立て、5m程度しか泳げない子どもに突然「さあ、自分で考えて泳ぎなさい」と言ってもまず泳げることはありません。

細かいスモールステップに分けて25mを泳がせた様子を→

水泳指導~25mをとにかく泳がせる

に、記録していますのでご覧ください。

さて、ではスモールステップが良いのかどうかというと、大半の児童・生徒にとっては「良い」と私は思っています。どの子どもにとっても無理なく成長を促すという点においては、スモールステップは教育の原則だと思っています。

ただ、ではいつもいつも丁寧にやることが大事なのかと問われると、「必ずしもそうでもない」という気もしています。昔の映画監督や鬼コーチの指導の仕方なんかでよく聞かされるのが、

「あの人は、俳優をノイローゼ寸前まで追い込んでずっと罵倒し続けました。俳優が悩みに悩んで演じても、またダメ出し。何が悪いのか、どうなったら良いのかさえ示してくれない。しかし、ボロボロになりながら演じたある日の演技に『それだ、お前は日本一だ』と褒めてくれました。」

というパターンです。確かに、天才を育てるためには、スモールステップよりラージステップ(?)の方が良いのかもしれないです。もがき、悩み、主体的に解をさがすことが驚くべき成長を促す場合があるかもしれません。大きな壁、大きな負荷を打ち破るからこそ身に着く力があるのかも知れません。

たいていユニークな子どもはあまり丁寧に教えられるのを嫌がります。教師の見えない所で試行錯誤しながら自分で練習してきてできるようになり、こちらを驚かせるような子どもは大好きです。

だから、何でもかんでも優しく丁寧にやってしまうのはどうかという気もしています。時々は大きな目標を突然与え、雑な指導でろくに教えないような方法をとることも必要なのかもしれません。
ただし、ほとんどの子どもにとって、そして日常の授業を構成する場合に於いては、スモールステップがいいと思います。

指導のプロセスを分解する

例えばコンパスで円を描かせるときには、どんなステップを思いつきますか。

(1)第一段階は、きちんとコンパスを整備するというところでしょう。「明日コンパスを持ってきなさい」では、なかなかうまくいきません。ネジがゆるんだもの、芯がうまく装着できないものなどを必ず何人かが持ってきますので、そういった子どもが混乱する要素をまずクリアする必要があります。できれば学校で一括購入させて良い品を持たせるか、数点を学校で持っておいて、使い勝手が悪いコンパスを持ってきている子どもには学校のコンパスを使わせるか。

(2)次に、針と芯の長さをそろえる。

(3)空中で何も持たずにクルクル回す練習。

(4)実際にコンパスを持って空中に浮かせて片手で持ち手を持ってクルクル回す練習。

(5)下敷きを敷かずにノートにきちんと穴が開くまで深く刺すようにする。

(6)ノートを押さえてコンパスを時計の針の進む方向に回す。

(7)時計の逆方向に戻す練習もやってみる。

(8)慣れてきた児童には進行方向に対して鉛筆の部分が鋭角になるように、少し倒しながら力を入れて描けるようにする。

円を一つ描くにもたくさんのステップあるいは要因が考えられます。ここまでさせるのは、正直言って面倒くさいので、「学び合い」でできた子どもに教えさせるのも一つの方法だし、前述したように雑に教えて自分で試行錯誤させるのも手かもしれません。

しかし、できない子どもにとってはスモールステップが一番身につきやすいですし、多くの子どもを抱える日本式一斉授業の場合は、効率的に漏れなく大人数を指導していかなくてはならないという使命がありますので、そこそこのスモールステップは必要だと思います。

少なくとも自分がラージステップで雑な指導をしていることに自覚がなく、態度だけは偉そうで子どもを怒鳴り、なじるだけの教師に比べれば、丁寧なスモールステップを心がける教師の方がずっとましだと思うべきでしょう。

教師が対峙しなければならないのは各単元目標だけではありません。各教科全体のレベルを高める必要もありますし、学級の学力全体・学校の学力全体を高めていかなくてはなりませんし、学級経営目標・学校経営目標も達成していかなくてはいけません。

一般的に目標が大きい場合には、プロセスが増えます。また、プロセス同士が複雑に絡み合っている場合もあります。例えば、AというプロセスがないとBというプロセスに進めない。Bというプロセスが進まない限りは全体の目標がかなう事がないといった具合に。水泳で言えば、ボビングができなければ、息継ぎができません。息継ぎができない限り、10mなら泳げても25mを泳ぎきることはそうとう難しいことになります。

水泳ならボビングと25mとボビングの関係はまだ見えやすいけれど、これが音楽で「音楽会の合唱で観客に感動を与える」となると、とたんに分からなくなる人は多いと思います(私は全然見当もつきません)。

複数のステップが絡み合って相乗効果的に伸びていく場合もあります。このステップは踏んだはずなのに、伸びないなあと思っていると、突然、他のいくつかのステップを踏んだ時にぐんとレベルが上がるというようなことはしばしばあります。

おすすめ!スモールステップの記事

EDUPEDIAの記事の中で、スモールステップについての具体的な指導が書かれた記事をリストアップしておきますので、是非参考にして下さい。

繰り返し漢字テスト

漢字テストを5問ずつにしたら、定着率がぐっと上がりました。

繰り返し 県名・県庁所在地名テスト

県名テストも5問ずつにしてしまいました。

逆立ち(補助倒立)を成功させるために

計算検定~筆算の力を積み上げていくために(2)

短時間で当該学年以前のステップをきちんと踏ませる。その他、筆算関連の記事がたくさんありますので、「筆算」のタグをクリックしてください。

サッカー全員シュート(全員得点)達成への道

足でボールをけることが難しいだけに、サッカーは指導が難しいです。

乱暴な言葉について

こちらは、年間で学級経営をステップアップするために、ぜひ押さえておきたいステップです。少しずつ、乱暴な言葉を止め、優しい言葉を増やしていきましょう。

アサーティブにお願いします!

こちらも、年間で学級経営をステップアップするために、ぜひ押さえておきたいステップです。少しずつ対人コミュニケーションを身につけさせましょう。

この他にも、EDUPEDIAの記事・教材の中にはスモールステップを考えていく上できっと役に立つ内容がたくさん含まれています。是非、ご活用いただき、ご意見を下さると有難いです。

ステップごとに評価する

スモールステップを有効に生かすためには、ステップごとに評価を行う事が大事です。とは言うものの、細かいステップに分ければ分けるほど、評価は大変になります。算数で言えば、ひとつひとつの単元、1ページ毎がすでにスモールステップに分かれています。単元全体のテストは大抵の学校でやっていると思います。ただ、1ページ毎あるいは1ページの中でさらに分かれているステップのそれぞれを確実に評価するのはたいへんです。

例えば4年生「小数÷整数」の計算の「2桁でわる計算」のページでは、1ページの中に

① 98.7÷21=4.7(商が1の位からたち、答えが2けた)

② 31.5÷45=0.7(商が1/10の位にたつ)

③ 31.5÷45=0.7(商が1/100の位にたつ)

④ 文章題を読みとり、文章中の数値を用いて2桁でわる計算を行う

の4要素が含まれています。1時間の中でこれらを子どに説明し、1つ1つを丁寧に教師側が評価できるかというと、それは無理があります。そうであれば、ざっと説明をした後で、①②③は類題を1問ずつ自分の机で行わせ、教師はざっと机間を見回るぐらいにしておき、後にミニプリント→教科書問題と進む中で、反復練習をさせていくといいと思います。

この時、ミニプリントはやらせてすぐ、教師側がチェックするのがいいと思います。ここは、時間との闘いです。

答え合わせをスピーディーに

1ページごと程度に活用できるミニプリントを作っていますので、是非ご活用ください。

小学校で習う筆算(2年生~5年生)を網羅、手軽に使えるミニプリント【教材】

算数を取り上げましたが、どの教科であっても「美しいスモールステップ」を構築し、ステップ毎の形成評価をできるだけきっちりしていくことが落ちこぼすことなく一斉授業を進めていく上で大切だと思います。

落ちこぼしという問題

ここまで述べてきたように、日本の教育課程は、かなり精緻にスモールステップが組まれています。学年が上がるごとに、単元ごとに、ページごとにけっこうしっかりしたスモールステップでカリキュラムが組まれています。

ところが、精緻なだけに、今の落第のない制度では、過去のステップをきちんと踏んでいることが原則になっており、そうでないと次のステップに進むことができないという現象も起こってきます。

学年が上がるごとに要因が増えてきますし、目標を大きく設定した場合にも、要因は多岐にわたってきます。

例えば5年生になって、わり算の筆算がなかなか身につかない子どもがいた場合はどうでしょう。場合によっては、過去の学年で学級崩壊や学力崩壊が起こっており、今までにやるべきことが身についていない子どもがたくさんいるような事もあり得ます。当該学年だけではなく、過去にまで遡りながら指導を行うのは大変です。

どれか一つができると大きく前進する場合があります。言いかえると、その一つが出来ないことが律速段階(化学用語で反応全体の速さを規定するのは、最も遅い反応の段階になると言う意味)となるかもしれないです。
筆算のわり算のプロセスはたくさんのステップに分けることができます。

「小数のわり算」躓きの分析と対応

この中でも、引き算ができるかどうかは多くの子どもにとっての律速段階になりうるし、かけ算のスピードが律速段階になっている子どももいることでしょう。躓きも人それぞれなのです。余りにも多いステップに対し、学年が上がるほど、落ちこぼしてきた子どもに対する教師の対応が難しくなってきます。

では、個々の躓きにどう対応するかについては、

「補習」落ちこぼしをどうするか
少ない時間で適格な補習を~「補習」落ちこぼしをどうするか(2)

をご覧ください。

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