1 はじめに
この記事は、NPO法人ROJE関東中高まなびプロジェクトが、平成30年10月に聖学院高2文系クラスで実施した全8回現代文の授業実践についてまとめたものです。
今回は、井伏鱒二の『山椒魚』の授業実践をお届けします。
- 教材:「山椒魚」(井伏鱒二)・「待つ」(太宰治)
- 対象:聖学院高校2年 文系 特進クラス(37名)
- コマ数:8回(各回40~45分)
- 授業形態:グループワーク中心
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2 授業内容
本授業の流れは、大きく3つに分けられます。
①通読(ワークシートを使用)(第1・2回)
②山椒魚の気持ちを想像して意見交換をしよう(第3回)
③作者の目線から作品を読んでみよう(第4・5回)
①通読
第1回、第2回の通読では、生徒によって異なる読み取りを表現するために、場面ごとに山椒魚の表情を書き入れるワークシートを使用しました。ワークシートを埋めながら、物語の読解を行いました。
生徒の反応
それぞれが思い思いに山椒魚の表情をシートに書き込んでいました。
同じ場面でも、怒っている表情を描く生徒もいれば、悲しげな表情を描く生徒もいました。
先生からのフィードバックと次回への反省
「通読は、人によって速度が異なるため、個人でやるのは難しい」とのご指摘をいただきました。
全員が通読を終えることができなかったため、第1回で内容理解の授業を終える予定でしたが、引き続き第2回も内容理解を行うことにしました。
【授業案・ワークシート】
5c6c29093d6c4fb8c55bc517_第二回ワークシート
②主人公である山椒魚の視点で考える
第3回では、文中にある以下の2カ所
①「お前は今、どういうことを考えているようなのだろうか」
②「今でもべつにお前のことを怒ってはいないんだ」
山椒魚と蛙の立場から、こうした言動に隠された心情を自由に考え、グループでお互いの読みを語り合いました。
生徒の解釈の例としては、「山椒魚の様子を伺い、話すきっかけを探している。」「このまま岩場で死を迎えることに対する諦めが見える。」などがありました。
1つの場面を切り取ってみても、全く異なる読み取りがあることに生徒も大学生も驚きました。
生徒の反応
例えば、①に対してある生徒は「怒ってもらうことで、自分からは口にできなかった謝罪をしたかった」と解釈していました。またある生徒は「2人の仲を確かめたかった」という解釈をしていました。
自分の考えを語りつつも、自分とは異なるクラスメイトの読みに触れ、驚きの反応などが見られました。
先生からのフィードバックと次回への反省
「個人ワークを行う際と、グループでの共有を行う際のメリハリをつけられると良い」というご指摘をいただきました。
また、大学生がワークをしている生徒にどのように話しかけるのが適切か、生徒にヒントや任せるときの見極めはどのタイミングか、ワーク中の生徒と大学生の距離感が課題としてあげられました。
【授業案・ワークシート】
③井伏鱒二視点で考える
第4回・第5回では視点を変え、作者である井伏鱒二の立場からの解釈を行いました。今までとは異なり、第4回では生徒自身で問いを立て、グループで互いに見つけた疑問を共有するワークを行いました。
第5回では、生徒たちが考えた問いの中から、大学生が選んだ
「山椒魚の弁護をするような書かれ方がされているのはなぜか」
「なぜ山椒魚が主人公であるか」
について、自分なりの解釈を持ち、グループで語り合いを行いました。
生徒の反応
生徒からは、「異なる意見を知り、面白かった」という感想が出ました。
解釈の共有を通して、最終的に意見が変わったり、変わらなかったり、納得のいく解釈を発見することができたようです。
先生からのフィードバックと次回への反省
今回の授業では、生徒に問いを考えて自分なりの意見を出してもらうのみで、授業する側の大学生はほとんど自分の意見を生徒に伝えていませんでしたが、先生からは「大学生の解釈をもっと生徒に伝えて欲しい」とのコメントをいただきました。
生徒自身からたくさんの問いが出てきて、大学生も新たな視点を得ることができました。
【授業案・ワークシート】
5c6c2afb3d6c4fb8c55bc523_第4回ワークシート個人用 5c6c2b2d3d6c4fb8c55bc525_第4回 班用ワークシート班用
5c6c2b7f3d6c4fb8c55bc529_【最新】第五回ワークシート
3 関東中高まなびプロジェクトとは
中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。
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4 記事作成者の一言
それぞれに異なる生徒の考えを聞き、大学生も毎回新たな発見を得ました。
読み取りの中で自分だけの考えを持ちつつ、クラスメートの考えにも触れていくことの楽しさを感じられていればと思います。
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